頭痛――正しく知って、正しく治療しましょう
札幌医科大学附属病院
脳神経内科
北海道札幌市中央区

慢性頭痛とは?
細かな定義はありますが、概ね月に15 日以上の頻度(ひんど)で頭痛が生じて3か月を超えて続くと慢性頭痛を疑う必要があります。頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に大別されますが、いわゆる「頭痛持ち」の方の頭痛は大部分が一次性頭痛と考えられ、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などのいくつかのタイプが知られています。
医療機関を受診していない方も非常に多く、生活の質を著しく低下させることがある慢性疾患の1つです。
一次性頭痛とはどんな病気?
原因がない(見つからない)頭痛を一次性頭痛、他の疾患に伴う(原因のある)頭痛を二次性頭痛に分類します。二次性頭痛は命にかかわる疾患に伴う場合がありますが、ここでは一次性頭痛について解説します。
一次性頭痛は慢性頭痛となることが多く、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が知られています。患者さんは非常に多く、国内では約3000 万人の慢性頭痛に悩む方がいると推定されています(図1)。しかし、「我慢していれば治る」と考えて医療機関を受診していない方も多いといわれています。

なお、一次性頭痛ではありませんが、頭痛に消炎鎮痛薬を使いすぎてしまうと、かえって頭痛を引き起こす薬剤乱用頭痛の方もいます。学校や職場を休むことなどで発生する頭痛による経済損失は、年間数千億円にも達するといわれており、慢性頭痛は正しく診断し、正しく治療することが重要だといえます。
それぞれの頭痛の特徴は?
片頭痛は女性に多く、ズキズキと脈をうつような頭痛が特徴です。病名のように頭の片側に生じるのが典型的ですが、両側に起こることも珍しくありません。頭痛の前に視界にギザギザ、ピカピカ光るような模様(閃輝暗点(せんきあんてん)が前兆として見えることがあります。我慢して体を動かしていると頭痛が悪化して吐き気が出て、嘔吐(おうと)してしまうことがあります。音や光にも敏感になり頭痛を悪化させる原因になります(図2)。

緊張型頭痛は一次性頭痛では最も多く、主に後頭部の鈍く重だるい痛みが生じます。首や肩のコリを伴うことがあります。慢性的に経過する方の中には、片頭痛と緊張型頭痛の両方を有する場合があります。
群発頭痛は男性により多く、片側の目の奥がえぐられるような頭痛が特徴です。決まった時間帯に集中的に生じることがあり、頭痛の際に目の充血や涙や鼻水が出ることがあります。
予防治療を教えてください
片頭痛には生じかけた頭痛を悪化させないための頓挫療法(とんざりょうほう)と頭痛を予防する療法があります。前者はトリプタン系製剤を用います。頭痛が生じた際に素早く体内に吸収できるように皮下注射製剤や点鼻製剤もあります。錠剤には仕事や学業の最中に水なしで服用できる口腔内崩壊錠(こうくうないほうかいじょう)があり、生活の状況に合わせて薬剤の選択が可能です。
最近、新しい片頭痛の予防療法としてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という「痛みの原因となる物質が脳血管の受容体に結合するのをブロックする」モノクローナル抗体製剤(図3①)が処方できるようになりました。今後、受容体をブロックする抗CGRP 受容体抗体製剤(図3②)や受容体拮抗薬も、新たに予防治療薬として加わる予定です。

頭痛の治療はタイプを正確に診断してから行います。お困りの方は脳神経内科、あるいは頭痛専門医を受診してください。
更新:2024.09.23