「まぶたの外来」で扱う疾患とその治療法とは?

札幌医科大学附属病院

形成外科

北海道札幌市中央区

まぶたの外来とは?

形成外科外来にある専門外来であり、手術による治療を中心に、まぶたとその周囲の病気を担当しています。主な病気は眼瞼下垂(がんけんかすい)、できもの、けがなどです。手術件数は国内の病院のなかでも多く、平均して年間200件ほど行っています。

まぶたの外来とは?どのような病気を診ていますか?

まぶたの役目は、目を保護するとともに、まばたきをして、涙で目の表面を潤(うるお)す働きもしています。けがをしたり、腫瘍(しゅよう)(良性・悪性のできもの)ができて、まぶたがうまく機能しなくなると、ものが見えづらくなったり、痛みや違和感などが出てくることが少なくありません。また、まぶたの形は見た目にもかかわり、ふだんの生活にもとても影響します。

しかし、まぶたは薄い組織の中に皮膚、筋肉、軟骨、毛(まつ毛)などさまざまな組織があり、繊細で治療が難しい部位です。まぶたの外来では、眼科と協力し、専門的な治療を行っています。

代表的な病気は眼瞼下垂です。まぶたが垂れ下がって視界がさえぎられ、見えづらくなる状態です。また、逆さまつ毛(眼瞼内反症(がんけんないはんしょう))ではまつ毛が目に当たって角膜炎(かくまくえん)を起こします。ほかに涙の通り道が詰まる鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)などもあります。

また、まぶたには「ものもらい」などの良性のできものや、基底細胞腫(きていさいぼうしゅ)などの悪性のがんもできます。ものが二重に見えたり、目が飛び出てくるような場合、目玉の裏側にできものができている(眼窩内腫瘍(がんかないしゅよう))こともあります。まぶたとその周囲は、範囲としてはとても小さいですが、いろいろな組織でできていて、さまざまな病気が起こります。

どうして眼瞼下垂になるのですか?

加齢によるものが最も多い原因です。また、最近では長期間のコンタクトレンズの使用、白内障の手術後、パソコンモニターやスマホの画面の長時間の視聴、まつ毛美容液などが原因で起こるものも増えています(図1)。

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図1 眼瞼下垂の原因

下垂がどんどん進むと、見える範囲(視野)が狭くなり、目玉(眼球)に傷ができたり、視力が悪くなったりします。また頭痛や肩こりがひどくなる場合もあり、快適な日常生活を送ることが難しくなります。

眼瞼下垂はどのように治療するの?

手術が必要になりますが、ほとんどは部分麻酔(局所麻酔)での短期間の入院治療になります。下垂の程度により、手術方法が変わります。皮膚がたるんで、まぶたが下がっている場合は、たるんだ皮膚を切り取る手術(余剰皮膚切除術(よじょうひふせつじょじゅつ)を行います(図2)。

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図2 眼瞼余剰皮膚切除術

まぶたを持ち上げている筋膜(挙筋腱膜(きょきんけんまく))がゆるんで、外れている場合には、筋膜を軟骨(瞼板(けんばん))に縫い直す手術(挙筋腱膜前転術(きょきんけんまくぜんてんじゅつ)を行います(図3、図4、写真)。

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図3 挙筋腱膜前転術
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図4 まぶたの断面図
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写真 眼瞼下垂の術前と術後

下垂がひどく、まぶたが全く上がらない場合は、太ももにある丈夫な筋膜を移植して、まぶたを持ち上げる手術(前頭筋吊(ぜんとうきんつ)り上(あ)げ術(じゅつ))を行います。

眼瞼下垂は健康保険で治療できますか?

紹介した病気は、基本的にすべて健康保険診療で治療できます。眼瞼下垂は美容外科でも治療していますので、自費診療と考える方も多いと思われますが、きちんと診察を行い、症状がはっきりあれば保険診療が可能です。しかし、一重まぶたは病気ではないので、眼瞼下垂の症状がなく、純粋に二重にされたい場合は自費診療となります。

まぶたはさまざまな症状が起こる部位であり、放置すると生活に支障をきたす恐れもあります。また、ほかの全身の病気の一症状としてまぶたの病気が起こっていることもあります。まぶたに異変を感じたら、早めに専門医を受診することをお勧めします。

更新:2024.09.23

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