脳梗塞の急性期治療

脳神経内科

脳梗塞の急性期治療

脳梗塞に対する医療の進歩

脳卒中(のうそっちゅう)は寝たきりになってしまう原因として上位にある疾患です。脳梗塞(のうこうそく)は動脈硬化(どうみゃくこうか)や血栓(けっせん)(血の塊(かたまり))による塞栓で血管が詰まることで発症し、脳卒中の約75%を占めます。多くの患者さんがいるにもかかわらず、今までは改善する方が少ない、重篤な疾患として知られていました。この状況を打破すべく、この20年間で医療は大きく進歩しました。進歩の1つは点滴で行うアルテプラーゼ(tPA)静注療法であり、もう1つはカテーテル(医療用の細い管)を用いて行う機械的血栓回収術です。当院はこの2つの急性期(※1)治療を積極的に行っています。ここでは、この治療法にスポットを当て、紹介します。

※1 急性期:病気・けがを発症後、14日以内(目安)。不安定な状態

2つの急性期治療の適応と方法

tPA静注療法

tPA静注療法は、急性期脳梗塞の方に適応がある、点滴を用いる血栓溶解療法です。現在は発症4.5時間以内の方が適応ですが、発症時間が不明であっても、発見から4.5時間以内であれば、頭部MRI検査の結果により適応となる方もいます。

治療の現場では、一部を静注(静脈に直接薬液を投与)し、その後1時間かけて持続投与します。合併症として出血のリスクが上昇する可能性があるため、当院では集中治療室で急性期管理をしています。

機械的血栓回収術

tPA静注療法と異なり、主幹動脈と呼ばれる太い血管が詰まっている方に、発症後24時間以内まで有効性が示されている治療法です。血管の閉塞があるかどうかを診断するためには頭部MRI検査が有用であり、当院では疑わしい方に対して積極的に検査をしています。

この治療法は時間を優先するため、局所麻酔で行われます。熟練した医師が足の付け根からカテーテルを動脈に挿入し、脳血管から血栓を回収します。最近では90%近くの症例で、この治療法により詰まっていた血管を再開通させられています。当院では24時間365日、迅速に治療を提供できるよう、体制を整えています。

これらの治療で大切なこと

大切なことは、治療適応がある患者さんを的確に診断し、早期治療につなげることです。私たちは、早期発見・早期治療の体制づくりにも日々取り組んでいます。

図
図 発見から治療まで
発見から治療までの時間短縮が、社会復帰率の上昇につながります

早期発見のために、誰もができる脳梗塞の診断方法として、「FAST」とよばれる標語があります。次の4つの頭文字から構成されており、①Face(顔):笑った顔の片方が引きつっていないか(口角下垂)、②Arm(腕):両腕を前に出したとき、そのままの姿勢を保てるか、③Speech(言葉):ろれつは回っているか、言葉が出てくるか、ということに注目します。そして①~③の症状がある場合には、④Time(時間):なるべく早く救急要請し、専門性の高い医療機関への受診をご検討ください。

更新:2025.12.12