花粉症を含むアレルギー性鼻炎の診断と治療

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

花粉症を含むアレルギー性鼻炎の診断と治療

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎は、鼻内に侵入した物質(アレルゲン)に対して、免疫が過剰に反応して生じるアレルギー疾患です。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状です。季節性(花粉症)と通年性に分けられます。

通年性の代表的な原因は、ハウスダスト(家ダニ)に対するアレルギー性鼻炎です。アレルギー性鼻炎の患者さんは年々増加していて、1998~2019年の全国調査では、アレルギー性鼻炎全体で29.8%→49.2%に。そのなかで、日本の代表的な花粉症のスギ花粉症は16.2%→38.8%に増加しており、国民病といえる状況です。

アレルギー性鼻炎の原因、症状

日本の原因物質(抗原・アレルゲン)は、季節性は春のスギ花粉、ヒノキ花粉が多く、通年性はハウスダスト(ダニ)が多いです。夏や秋の花粉症、イヌ、ネコ、カビ(真菌(しんきん))が原因の場合もあります。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが主な症状です。

花粉症であれば、アレルギー性結膜炎による目の症状も出てきます。また、皮膚や喉(のど)のかゆみも起こります。スギ・ヒノキ花粉症は2月頃から症状が出始め、3~4月がピークになります。花粉の飛散数が多くなると、症状が悪化することが報告されており、花粉飛散予測情報も備えるうえで重要です。

ハウスダストの鼻炎は夏に増えた家ダニ(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ)の影響で、秋から冬に症状が強くなりますが、一年中症状に悩まされる患者さんもいます。

アレルギー性鼻炎の診断

診断は、どのような症状が、いつ、どこで、どの程度の期間続いたかを聞き取ること(問診)が重要です。問診で該当するアレルゲンの種類を絞り込んだら、実際に確かめる検査を行います。

アレルゲンに特異的なIgE抗体を調べることによって、過敏性を持っているかどうかわかります。実際によく行われている検査には、2つの方法があります。1つは患者さんの皮膚にアレルゲンを注射し、皮膚の反応を見る皮内テストです。これを簡素にした、引っかいた皮膚に抗原を滴下するスクラッチテストと呼ばれる検査があり、アレルギーの皮膚反応と呼びます。

もう1つは、血清中の微量なIgE抗体を免疫学的方法で検査するものです(図1)。鼻水中の好酸球(白血球の一種)を調べることにも有用です。これは、鼻粘膜(ねんまく)でアレルギー反応が起こっていることの証明になります。

図
図1 アレルギー血液検査結果

花粉症の場合は、花粉飛散季節中の症状と皮膚反応や特異的IgE検査などの陽性抗原の一致をみるだけでも診断は可能です。

アレルギー性鼻炎の治療

治療はアレルゲンの除去と回避が最も基本的ですが、医療機関では薬物治療、アレルゲン免疫療法、手術治療を行います。

●薬物治療

薬物治療は対症療法(※1)です。くしゃみ、鼻水が多い患者さんには抗ヒスタミン薬が適し、鼻づまりが強い患者さんにはロイコトリエン受容体拮抗薬が適しています。鼻噴霧用ステロイド薬は全身への副作用を気にせず使用でき、鼻と目のすべての症状に効果があります。症状が強ければ薬を組み合わせます。内服ステロイド薬の長期使用は、糖尿病、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)やホルモン異常などの副作用の危険があり、花粉症のピーク時に、1~2週間に限って使用します。

薬物治療の開始時期も大事になります。初期療法といって、花粉飛散前、もしくは飛散初期から症状に合わせて治療を開始することで、本格飛散後から治療を開始した方より症状が軽快します。重症な花粉症患者さんには、抗IgE抗体治療薬(オマリズマブ)が使用できます。重い症状、血液検査でスギ特異的IgEスコア3以上など条件がありますが、有効な治療です。

●アレルゲン免疫療法

この治療は、薬物治療と異なり、アレルギーを根本から改善することができます。アレルゲンを体に投与し、アレルギー反応を低下させます。皮下注射で行う皮下免疫療法が最初に行われ、2014年から投与経路を口腔(こうくう)内へ変え、安全性を高めた舌下免疫療法が開始されました。患者さんの状態やアレルギーの種類により、投与方法を使い分けます。

舌下免疫療法では、スギとダニの治療が可能です。2種類の舌下免疫療法を同時に開始することはできませんが、どちらか一方を始め、1か月以降から併用療法が可能です。薬物治療と異なる点は、速効性がなく、数か月以上継続することで症状の改善効果が出始めることです。3~5年継続することで、治療終了後も効果が持続する点も特徴です。

●手術治療

手術治療は、鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)を伴う患者さん、繰り返し生じたアレルギー反応で非可逆性の粘膜肥厚(※2)を生じた患者さんで検討します。内視鏡で行う手術ですが、基本的には入院が必要な全身麻酔手術になります(図2)。日帰りの手術であれば、レーザーなどで粘膜を焼灼(しょうしゃく)してアレルゲンへの反応性を低下させる下鼻甲介粘膜焼灼術(かびこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ)があります。患者さんの状態や希望に合わせて選択していきます。

図
図2 手術の前後鼻中隔弯曲の矯正と鼻粘膜の減量

※1 対症療法:病気の原因を取り除くのではなく、病気によって起きている症状を和らげたり、なくしたりする治療法
※2 非可逆性の粘膜肥厚:粘膜が太くなり、元に戻らないような状態

当科の特色 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

アレルゲン免疫療法では、皮下免疫療法、舌下免疫療法とも施行可能であり、外来でのレーザー手術を随時行っています。薬物療法、免疫療法、手術療法すべて施行可能で、患者さんのニーズに合った治療が可能です。

診療実績

舌下免疫療法は開発段階から携わっています。安全な治療法ですので、現在はクリニックなど幅広い医療機関で盛んに行われています。そのような事情から当院での導入は少なくなっていますが治療可能です。

手術治療は、コロナ禍の2022年の1年間で、鼻中隔矯正術は93件、鼻粘膜の減量手術は126件、鼻汁の分泌を減らす後鼻神経切断術は4件行っています。

更新:2025.12.12