膵がんの治療はどのように決まるのですか?
消化器内科 外科 放射線治療科
膵がんって、どんな病気?
膵(すい)がんは治療が難しいがんの代表であり、多くの診療科、患者さん、家族とみんなで力を合わせ、多くの壁を乗り越えて治療を行うことが大切な病気です。
そもそも膵臓とは、胃の後ろにある20cmほどの横長の小さな臓器です。食べたものを消化するための膵液という消化液を出す作用と、血糖の調節をするホルモンを出す作用、2つの重要な役割があります。
「図1」が示すように、体の奥にあって胆管(たんかん)や十二指腸とくっついており、太い血管の近くにある隠れた臓器です。その膵臓にできる悪性の腫瘍(しゅよう)で一番多いのが膵がんです。膵がんは早期発見が難しく、重要な太い血管が近いため、診断や手術、治療も難しいがんの1つです。
みぞおちが痛くなったり、急に血糖値が上昇したり、胆管が詰まって黄疸(おうだん)が出て顔が黄色くなって診断されることが多く、進行した状態で発見されるのが現状です。
現在、国内における膵がんの死亡者数は肺がん・胃がん・大腸がんに次いで4番目となっていますが、治療の難しい膵がんが将来的には2番目に多いがんとなることが予想されており、世界中で膵がんの治療法の開発が進んでいます。
どんな治療があるの?
膵がんはほかのがんと比べても腫瘍マーカー、エコー、CT、MRI、超音波内視鏡、PETなど、多くの検査を行ってから診断し、病気の進み具合を見極めて、治療方針を決定します(図2)。
ひと昔前は膵がんにはよい薬がなく、治療が停滞していました。しかし最近では、非常によい抗がん剤などが開発されて治療も進歩し、手術などとも組み合わせて治療成績も改善しています。
膵がんの治療の柱は、
1)外科的な手術
2)抗がん剤などの薬物治療
3)緩和療法(膵がんは早くから痛みを伴うことが多いため)
4)内視鏡治療(黄疸がある際に胆管の詰まりを改善する治療)
ですが、これらに加え、放射線治療や遺伝子を調べるゲノム診断による新たな治療薬選択などがあります。
手術をする際にも、先に抗がん剤を使用したほうがいい場合や、手術後も抗がん剤を追加したほうがいい場合など、治療が進歩したのはよいことですが、非常に治療が複雑になり分かりにくくなっているのが現状です。
先述したように膵臓は消化液(膵液)を出していますが、この膵液が内視鏡検査や手術の際に漏(も)れたりすると膵炎などを起こすことがあり、さらに治療を難しくしています。
当院においても、膵がん患者さんの治療方針は主治医単独で決めるのではなく、消化器内科全体で検討し、さらに外科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科と、多くの科によるカンファレンス(検討会)により決定します。膵がんの治療には病院の総合的な力が必要なのです。信頼できる医師・診療科に出会うことも非常に大切です。
膵がんの治療を受ける際に、最初に家族でよく話し合い、治療方針を決めることも忘れてはいけない重要なことです。治療の途中、家族の間で意見が分かれたりして治療が滞(とどこお)ると、つらい思いをするのは患者さんであることを認識し、意見を統一して、治療を受けるようにしましょう。
膵がんは治療が難しいため、セカンドオピニオンを希望する方もいます。遠慮せずにセカンドオピニオンを希望してもらえたらと思います。しかし、あまりに多くの意見を聞くと、逆に混乱されて治療法を決められない場合や、治療の開始が遅れる場合も見受けられますので、1つか2つの施設にとどめておくほうがよいでしょう。
国立がんセンターがん情報サービスの一般向けホームページ(https://ganjoho.jp/public/)に膵がんについての詳しい説明がありますので、参考にしてください。
非常に治療が難しい膵がんですが、医療者(医師、看護師、薬剤師など)、患者さん、家族が一丸となり治療を行うことで、より良い結果となればと思います。
治療が難しい膵がんですが、新たな薬の開発や手術と抗がん剤の組み合わせなど、治療は大きく進歩しつつあります。医療者(医師、看護師、薬剤師など)、患者さん、家族が一丸となって治療を行い、より良い治療結果が得られることをめざしましょう。
更新:2024.10.08