かんせん

乾癬

概要

乾癬は、免疫に異常をきたしやすい体質の人に、外的・内的な因子が加わることで発症する皮膚の慢性疾患です。皮膚に現れる症状を見て、「ほかの人にうつるのではないか」と心配される方も多いようですが、ウイルスや細菌、カビが発症の原因ではないので、感染することはありません。

乾癬は良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、その症状・経過には個人差が大きい病気です。治療は長期にわたることもありますが、適切な治療と生活改善を行うことで、良い状態を保つことが可能です。

乾癬を発症すると、皮膚の内部に炎症(血管が広がり、血流量が増加)が生じ、表皮細胞が著しく増殖します。

皮膚の外側は、表皮と呼ばれる薄くて丈夫な層で覆われており、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入するのを防ぐといった働きをしています。正常な皮膚では、表皮の部分で常に新しい細胞が作られ、皮膚の表面へ向かって徐々に押し上げられていきます。通常はこの表皮細胞は40 日前後のサイクルで新陳代謝を繰り返していますが、乾癬の患者さんの皮膚ではそのサイクルが 10 分の1(4~5日)くらいに極端に短くなります。これは、表皮細胞が増殖することによって、皮膚の表面へ押し上げられるスピードも速くなるからで、さらに積み重なった角質がフケのようにポロポロと剥がれていきます。また、炎症を起こす物質(TNFαなどのサイトカイン)が生じて活発に活動するため、毛細血管が拡張・増生されて、皮膚が赤く盛り上がったり、かゆみなどの症状が発生します。

図
図:正常な皮膚と乾癬の皮膚の構造

原因

乾癬の発症に関係する外的な因子には、けがや感染症、ストレスや乾燥、食生活などが挙げられます。内的な因子は、肥満や高血圧脂質異常症糖尿病などです。もともと免疫に異常をきたしやすい人に、こうした外的・内的因子が加わると、皮膚表皮の新陳代謝が急激に進み、その結果、皮膚にさまざまな症状が現れます。

症状

もっとも一般的なタイプである尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)の主な症状は、皮膚が赤くなる紅斑(こうはん)、皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)、細かいかさぶたのような鱗屑(りんせつ)、鱗屑が剝がれ落ちる落屑(らくせつ)です。

全身のどこにでも出現しますが、連続して刺激を受けやすい部位や、日光の当たりにくい部位に出やすいという特徴があります。具体的には、頭皮や髪の生え際、肘(ひじ)、膝(ひざ)、腰の周りなどです。初期に多く見られる頭部の場合、最初はフケのような鱗屑を伴う点状の紅斑が次第に広がっていきます。肘や膝などには、銀白色(ぎんはくしょく)の鱗屑が左右対称に現れます。

けがや掻(か)くことが刺激となって、新たな皮疹が発生することも特徴です。

治療

治療の基本は、外用剤(塗り薬)です。異常をきたしている皮膚の新陳代謝を抑えるにはビタミンD3外用薬が、炎症の抑制にはステロイド外用薬が有効とされています。症状に合わせて、どちらか一方、または併用します。

外用剤では十分な効果が見られない場合は、紫外線を照射する光線療法が選択されるのが一般的です。日光浴が乾癬の症状改善に効果があることは昔から知られていましたが、現在では、部位や皮疹の範囲に応じたさまざまな照射機器が登場しています。

皮膚の新陳代謝の調整や免疫抑制、炎症抑制のために内服薬を用いるケースもあります。また、掻くことで皮疹を発生させることを防ぐために、抗ヒスタミン薬が使用されることもあります。

乾癬治療の進歩は目覚ましく、最近では、乾癬の発症に関与している特定のタンパク質のみに作用する生物学的製剤も、治療の選択肢に加わりました。生物学的製剤には、点滴製剤と皮下注射製剤があります。ただし、免疫力を抑制する生物学的製剤には、さまざまな臓器への影響は少ないものの、感染症の予防への影響や価格などの問題もあり、使用に際して慎重な検討が必要です。

高カロリー・高脂質の食事を避ける、精神的ストレスはなるべく排除する、風邪(かぜ)などの感染症を予防するなど、生活面を見直すことも、自分でできる有効な治療法です。

更新:2022.05.26