紫外線の影響は肌だけじゃない! 体全体への影響と効果的な対策方法

メディカルブレイン編集部

紫外線がシミやしわの原因になると言われていますが、体への影響はそれだけではありません。一方、紫外線はビタミンDを作る手助けをするなど、良い側面もあります。正しい知識を持ち、上手に紫外線と付き合っていくことが大切です。

紫外線とは

紫外線は私たちの目には見えない太陽光の一部であり、波長によってUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類されます。最も波長が短いUV-Cは地表には届きません。UV-Bはオゾン層などによって遮られ、地表に届く量は減少しますが、肌を赤くし日焼けの原因となり、皮膚や目に悪影響を与え、皮膚がんの原因になることもあります。一方、UV-Aは紫外線の中で最も波長が長く、その多くが地表に届きます。UV-Bほど有害ではありませんが、長時間浴びると肌などに影響を与えます。

紫外線の多い季節、場所、時間帯

紫外線の量は、浴びた紫外線の強さと時間の長さによって決まります。弱い紫外線を長時間浴びた場合と、強い紫外線を短時間浴びた場合が、同じくらいの影響になることもあります。弱い紫外線だからといって安心できるわけではありません。

紫外線の強さは、季節、場所、時間帯などによって変化します。グラフ①が示しているように、UV-Bの量は那覇と札幌では約2倍の違いがあり、一般的に北から南へ行くにつれて増加します。

札幌、つくば、那覇の月別紫外線照射量(kJ/㎡ /日)推移グラフ(気象庁データ(1997~2017年平均値)より作成)
グラフ①
(出典:環境省紫外線環境保健マニュアル2020 2020年3月改訂版 P8 図1-6〈 https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf〉)

また、紫外線は夏に強く、冬には比較的弱くなります。時間帯では、太陽が一番高くなる時刻(正午前後)に最も強くなります。

夏から秋にかけての紫外線は特に強く、グラフ②が示しているように、1年間の紫外線の量の約70~80%が4~9月に照射されます。

さらに、高度や日照時間によっても紫外線量は異なります。また、雪や砂の上では反射により紫外線量が増加します。紫外線量が多い季節や場所、時間帯を把握し、効果的な紫外線対策を行うことが重要です。

札幌、つくば、那覇の 季節別紫外線照射量と年間照射量に占める割合を表した棒グラフ(1997-2014年平均値、気象庁提供データより作成)
グラフ②
(出典:環境省紫外線環境保健マニュアル2020 2020年3月改訂版 P10 図1-8〈 https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf〉)

紫外線が及ぼす健康への影響

紫外線は、体のさまざまな部分に影響を及ぼします。以下に紫外線の影響をまとめました。

皮膚

シミ 紫外線(主にUV-A)に刺激されると、皮膚の色素細胞はメラニンという色素を作り、紫外線から身を守ろうとします。しかし、紫外線の影響により過剰にメラニンが作られ、それが沈着することによりシミやそばかすにつながります。
しわ しわは、UV-AとUV-Bの両方の紫外線が原因となります。特にUV-Aは皮膚の深い層に浸透し、皮膚の弾力を保つ繊維を破壊し、しわやたるみを引き起こします。
皮膚がん UV-Bは地球に届く量は少ないですが、皮膚細胞のDNAを損傷させることがあります。大量にUV-Bを浴びることは、皮膚がんのリスクを増加させる可能性があります。

その他、紫外線は良性腫瘍やヘルペスを引き起こすこともあります。また、肌ほどではありませんが、紫外線は髪にも乾燥やダメージを与えます。

白内障 80以上のタイプが存在する白内障の中でも、皮質白内障は日本人に最もよく見られ、紫外線との関連が知られています。治療には、濁った水晶体を眼内レンズに交換する手術などがあります。
紫外線角膜炎 強い紫外線を浴びることで起こる急性の角膜炎症で、結膜(白目)の充血、異物感、なみだ目などの症状が現れます。特に雪山など紫外線の反射が強い場所で起こる雪目(ゆきめ)が有名です。

免疫系

紫外線は免疫細胞の活性を抑制し、免疫反応を低下させることがあります。一方で、この特性を利用してアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に対して「光線療法」と呼ばれる紫外線を使った治療を行うこともあります。

紫外線とビタミンD

ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を2~5倍ほど増加させることです。

ビタミンDが不足すると、食事で取ったカルシウムが十分に吸収されず、カルシウム不足になる可能性があります。

人間の体は、皮膚にUV-Bを浴びると、7-デヒドロコレステロールという物質を材料に、皮下でビタミンDを作ることができます。

ビタミンDは、きのこ類や魚類に多く含まれていますが、食事だけで必要量をとるのは難しく、必要量の半分以上を紫外線により作られたビタミンDで補っています。

肌や目のためには紫外線を防ぐことが重要ですが、SPF30以上の日焼け止めを使用すると皮下でのビタミンD生成が5%以下に減少してしまいます。

上手に紫外線を防ごう!

紫外線の皮膚への影響は、日焼け後にケアをしても手遅れで、紫外線の浴びすぎを防ぐことが重要です。
紫外線の影響は地域や個人によって異なりますが、状況に応じて以下の対策を行うことが効果的です。

①紫外線の強い時間帯を避けて外出する
紫外線は正午前後に最も強くなります。可能な限り、紫外線の強い時間帯を避けて外出するようにしましょう。
②日陰を利用する
日陰の紫外線量は、日なたの約半分です。外出時には上手に日陰を利用しましょう。
③日傘を使う、帽子をかぶる
日差しが強い時は、日傘や帽子の使用が効果的です。紫外線防御機能を高めた日傘もあります。また、帽子をかぶることで、目への紫外線を約20%減らすことができます。
④衣服で身を覆う
体を覆う部分が多い衣服や目が詰まっている生地の衣服は、紫外線対策に効果的です。ただし、熱中症には注意が必要です。
⑤サングラスをかける
紫外線防止効果のあるサングラスや眼鏡を適切に使用すると、目への紫外線を最大90%カットすることができます。サングラスや眼鏡を使用する際は、明確な紫外線防止効果が示されているものを選びましょう。
⑥日焼け止めを上手に使う
露出した肌には日焼け止めが効果的です。日焼け止めには、SPF(Sun Protection Factor)とPA(Protection Grade of UVA)の2つの指標があります。SPFはUV-Bからの保護効果を数値で表し、数値が高いほど効果があります。また、PAはUV-Aからの保護効果を表し、PA+、PA++、PA+++、PA++++の4段階で表されます。

以上の対策を組み合わせて適切な紫外線対策を行うことで、健康への影響を最小限に抑えることができます。紫外線の強い季節や場所では特に注意が必要ですので、自身の状況に応じた対策を適切に取り入れましょう。

更新:2024.04.26