異例の早さで流行 2023年インフルエンザ

メディカルブレイン編集部

10月1日からインフルエンザワクチンの接種が開始されました。通常、インフルエンザの流行は12月ごろから始まりますが、今年は9月から患者数が急増しており、早くも休校や学年・学級閉鎖も報告されています。

インフルエンザの大流行が心配される冬を迎える前に、現在の状況や早期流行の原因について解説していきます。

現在のインフルエンザ流行状況

患者報告数:2019年の6倍以上

厚生労働省によると、2023年9月18日~24日の全国のインフルエンザ患者報告数は35,021人で、コロナ前の2019年同時期の6倍以上に増加しています。

下のグラフ1からわかるように、通常、インフルエンザの患者報告数は5月から11月中旬まではごくわずかで、12月から増加し、1月末から3月上旬にピークに達します。しかし、今年は9月から患者報告数が急増しており、通常よりも3か月早いペースで流行しています。

2018年、2019年、2023年のインフルエンザ患者報告数の月間推移グラフ
【グラフ1】インフルエンザ患者報告数
(厚生労働省ホームページ 2023年度・2019年度・2018年度「インフルエンザの発生状況について」より筆者作成)

休校、学年・学級閉鎖:9月中旬で1,500校超え

患者報告数と同様に、休校、学年・学級閉鎖の学校数も、2019年以前と比較して著しく増加しています。

また、今年9月第1週から第2週で約2倍に増加しており、学校内での急激な流行がうかがえます。

【休校、学年・学級閉鎖が行われた学校数】
2023年 2019年 2018年
38週(9月第3週) 1,569校 97校 9校
37週(9月第2週) 1,625校 141校 23校
36週(9月第1週) 793校 51校 6校
(厚生労働省ホームページ 2023年度・2019年度・2018年度「インフルエンザの発生状況について」より)

注意報、警報について:すでに半数以上の都府県で注意報、警報レベル

インフルエンザ感染者数は、全国5,000の定点医療機関から毎週報告され、過去の発生状況に基づいて基準値が設定されています。その基準値を超えると注意報や警報が発生する仕組みになっています(表1参照)。

【表1】注意報、警報の基準
内容 基準値(定点当たりの患者数)
流行の目安 流行しているといえる状態の目安。 1
注意報 流行の発生前であれば今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性があることを、流行発生後であればその流行がまだ終わっていない可能性があることを示す。 10
警報 大きな流行の発生・継続が疑われることを示す。 30(開始基準値)
※前週に警報が発生していた場合は10(継続基準値)以上で継続

9月27日時点で6府県が警報レベル、18都府県が注意報レベルを超えており、東京都では、統計開始以来最も早い9月第2週に注意報レベルに達しています(グラフ2、図1参照)。

2019年度・2023年定点当たり報告数
【グラフ2】定点当たり報告数
(厚生労働省ホームページ 2019年度・2023年度「インフルエンザの発生状況について」より筆者作成)
注意報、警報レベルの都道府県マップ
【図1】注意報、警報レベルの都道府県(9月27日時点)
国立感染症研究所ホームページより)

今年はなぜ流行が早いのか?

今年のインフルエンザが通常よりも3か月ほど早く流行している理由には、以下の要因が考えられます。

  • コロナ禍でインフルエンザが3年間流行しなかったため、免疫が低下
    (特に15歳未満の子どもに大きな影響)
  • 5月からコロナが5類感染症に変わり、マスク着用率が低下し、うがいや手洗いの頻度も減少
  • コロナ禍で中止されていたイベントや外出が通常通りに再開され、人々が密集する機会が増加
  • 外国人旅行者が急増し、ウイルスの持ち込みが起こりやすくなった
  • 長期にわたる夏の厳しい暑さにより抵抗力が低下

インフルエンザの疑問解決!

インフルエンザに関する疑問について、以下にまとめました。

Q)インフルエンザとコロナ、同時にかかることはありますか?
A)まれに同時に感染することがあります。
この冬は、インフルエンザとコロナの同時流行が懸念されます。両方に感染した場合、重症化する可能性もあるので注意が必要です。
Q)インフルエンザワクチンとコロナワクチン、同時に接種できますか?
A)同時接種は可能ですが、かかりつけ医に相談のうえ、接種するようにしてください。
Q)インフルエンザワクチンの有効性はどれくらい?
A)ワクチンの効果は年によって異なりますが、重症化を予防するためには大きな効果があります。
Q)ワクチンはいつ受けるのがよいのでしょうか?
A) 通常、インフルエンザは12月から4月ごろに流行するので、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。ただし、今年は流行の始まりが早いため、高齢者や基礎疾患がある人は早めの接種を検討しましょう。
Q)ワクチンの効果はどれくらい持続します?
A)ワクチン接種後約2週間で効果が現れ、約5か月間持続すると言われています。
Q)今年すでにインフルエンザにかかった人もワクチンを打った方がいいのでしょうか?
A)別の型のインフルエンザに感染する可能性があるため、ワクチン接種を検討することをおすすめします。
Q)ワクチンは何回打つのですか?
A)【13歳以上】1回接種を原則としています。
【13歳未満】2回接種です。1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっている場合でも、2回目の接種を行って問題ありません。

インフルエンザの感染予防策

2020年から2023年春までのコロナ予防策が徹底されていた期間は、インフルエンザの流行は全くありませんでした。つまり、以下のようなコロナ同様の予防策が非常に有効です。

  • 手洗い、うがい
  • マスクの着用
  • こまめな換気
  • 十分な睡眠と休息、バランスのとれた食事

今年のインフルエンザは異例の早期流行が特徴で、コロナとの同時感染も懸念されています。ワクチン接種を検討し、感染予防策を徹底することが重要です。冬のピークに備え、注意深く行動しましょう。

更新:2023.10.20