【進化するがん検査 】新たな検査方法の紹介

メディカルブレイン編集部

毎年の健康診断や人間ドックで、多くの方がバリウムや胃カメラ、肺のレントゲン、便潜血検査などのがん検査を受けていることでしょう。日本では2人に1人ががんになると言われていますが、がんの検査方法も着実に進化しています。

今回は、新しいがんの検査方法についてまとめてみました。

将来のがんリスクを評価する検査

一般的な健康診断や人間ドックで行われるがん検査は、通常、現在のがんの有無を調べるものですが、近年では遺伝子検査など、将来のがんのリスクを予測する検査も広がってきています。

遺伝子検査

遺伝子検査では、特定のがんのリスク遺伝子の変異や遺伝的な傾向を調べ、将来のがんリスクを予測します。

最近では、病院での採血による検査のほかに、自宅から唾液(だえき)や血液を送付する手軽な遺伝子検査も増えています。

唾液や血液から抽出したDNAを解析し、がんや生活習慣病などのリスクや影響を評価すると同時に、適切な生活改善策を提案するサービスなどもあります。

特定のがんに特化した検査

特定のがんについての将来のリスクを評価する検査もあります。例えば、血液中の脂肪酸「GTA-446」の値が大腸がん発症に関連していることを利用して、大腸がんのリスクを評価する検査などがあります。

がんの有無を調べる新しい検査方法

現在のがんの有無を調べる主要な検査は、以下のように分類されます。

画像検査
X線(レントゲン)、CT、MRIなど
病理検査
体内から採取した細胞や組織を調べ、がんの有無や種類を診断
バイオマーカー検査
血液や尿、組織サンプルの中の特定の物質を測定
(腫瘍マーカー検査はバイオマーカー検査の一種)

がんの治療と同様に、検査方法も日々進化しています。
今回は、新しい画像検査について紹介します。

DWIBS(ドゥイブス)検査(全身MRI検査)

DWIBS検査は、MRIを用いて全身のがんを診断する方法で、2004年に日本人によって開発されました。同じ全身がん検査のPET-CT検査と異なり、放射線による被ばくの心配がなく、短時間で検査が完了します。

MRIを使って首(耳の下くらい)から足の付け根付近までを撮影していきます。

がん細胞が増殖すると細胞の密度が高くなるという性質を利用して、がんを検出します。

DWIBS検査とPET-CT検査には、それぞれメリット・デメリットがあり、どちらを選択するかは総合的に判断する必要があります。以下にDWIBS検査とPET-CT検査の比較をまとめました。

DWIBS検査 PET-CT検査
検査方法 MRIを使用した検査 PET検査とX線によるCT検査を組み合わせた検査
検査前の食事制限 なし 検査時間の約5~6時間前から絶食
注射 なし 検査薬を静脈注射
検査前の安静時間 なし 検査薬が全身にいき渡るまでの約1時間
撮影時間 約30分 約30分
検査後の安静時間 なし 放射能が下がるまでの約30分~1時間
検査完了までの時間 約1時間 約3時間
検査を受けられない人 ・体内に金属がある場合(ペースメーカー、金属プレートなど)
・タトゥー、入れ墨があるとやけどを引き起こすことがあり、検査できない場合がある
・妊娠中の人
・腎臓疾患のある人
・糖尿病の人は検査できない場合がある
X線による被ばく なし 検査薬と放射線の2重被ばくとなるが、副作用が心配される量ではない
苦手な部位 胃、食道、肺など 脳、心臓、胃、食道、腸、腎臓、肝臓、胆嚢(たんのう)・胆管、膀胱、尿路系など
CTを撮影している様子のイラスト

無痛MRI乳がん検査

乳がんの患者数は年間9万7000人を超え、女性の中で最も多いがんです(※)。

マンモグラフィーや超音波(エコー)検査が主要な検査方法ですが、厚生労働省によるとマンモグラフィー検査の受診率は2019年時点で44.6%と過半数に届かない状況です。

検査受診率が伸びない理由のひとつに「痛み」があると言われています。

MRIを用いた乳がん検査は痛みがなく、被ばくのリスクもありません。検査着を着たまま行えるため、乳がん検査の受診率向上が期待されます。

※2019年国立がん研究センターホームページより

AIを活用した画像解析

胃や食道、大腸の内視鏡画像のAIによる学習と医師との連携により、診断精度が向上しています。従来は医師の目だけに頼っていた診断をAIがサポートすることで、病気の発見の確実性が高くなり、医師の負担も軽減されます。

また、CTやMRIにおけるAIによるがん検出も進化し、医療現場で幅広く活用されています。AIの技術が画像解析に取り入れられることで、より迅速で正確な診断が可能になり、患者の治療やケアにおける前進が期待されています。

自宅で行えるがん検査

自宅で実施可能ながん検査をテレビのコマーシャルなどで頻繁に見かけるようになりました。検査キットを購入して、自宅で少量の唾液や血液、尿を採取し郵送すると、検査結果がメールや郵便で届きます。

検査手法や検査できるがんの数、種類はさまざまで、自分に適したものを選択する必要がありますが、自分の都合に合わせて検査を受けることができます。ただし、これらの検査では、がんの具体的な場所や種類などの詳細は分からないため、具体的な症状がある場合や気になる点がある場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

これらの新しい検査方法は、私たちの選択の幅を広げ、がんを早期に発見し、的確な対処法を見つける手助けとなります。適切な検査を受けることで、病気のリスクを減少させる可能性が期待されます。

更新:2024.04.26