家の鍵、ちゃんと閉めたかな――それは心配性ではなく、不安障害かもしれません
メディカルブレイン編集部
家の戸締まりやガスの元栓が気になって、外出したのに何度も確認に戻る――そんな経験をしたことはありませんか? 一度や二度ではなく、長期間にわたってその状態が続いているようなら、それは単なる心配性ではなく不安障害という“こころ”の病気かもしれません。過度な不安や緊張が心身に影響を及ぼす不安障害は複雑で、さまざまな症状が現れます。今回は、その中でも代表的な例をご紹介します。
不安を覚えることは病気なの?
学生の頃は進学や就職、社会人になっても仕事や周囲の人間関係など、人は日常的に何かに対して不安を抱えながら生きていると言っても過言ではありません。ただ、不安を覚えること自体は病気ではありません。逆に適度に不安を感じるからこそ、人はよりよい未来のために目の前の勉強や仕事を頑張れるとも言えるのです。
しかし不安や緊張が過度になると、勉強や仕事が手に付かず、さらには行動異常により日常生活にも支障が出てきます。区別が難しいのですが、一般的には大人の場合、半年以上にわたって以前よりも不安が増えて特定の症状が出たり、日常生活の行動にまで影響を及ぼしたりしていると、危険なサインだと言われています。
では、その過度な不安や緊張が原因となって発症する不安障害には、どのような種類の病気があるのでしょうか。
不安障害にはどんな種類の病気があるの?
パニック障害
突然原因不明の不安や恐怖に襲われ、動悸やめまい、呼吸困難といったパニック発作が生じ、それが繰り返される病気です。パニック発作を頻発することへの不安や恐怖は、「またパニック発作が起きてしまったらどうしよう」という「予期不安」と呼ばれる気持ちにつながります。パニック障害が人混みや電車、一人での外出を避けるといった日常生活に差し障りのある行動に結び付いてしまうのは、この「予期不安」があるからなのです。
社会不安障害
人前で話すなど多くの人の視線を集める状況で過度に緊張してしまい、ひいては多くの人が集まる状況さえもが怖くなり、手の震えや赤面、発汗、動悸や呼吸困難といった症状が現れる病気です。恐怖のあまりパニック発作を起こすこともあるため、症状が進むと人と話すことや、電車やバス・街中といった人が集まる場所への外出を避けるようになり、社会生活に支障が生じます。
強迫性障害
冒頭で述べたような、家の戸締まりやガスの元栓が気になって確認するために何度も自宅に戻ってしまったり、汚れていなくても繰り返し手を洗ってしまったりと、ささいなことと頭では分かっていながらもその行動を繰り返し行わないと不安になってしまう病気です。
他にも、「自分で決めた順序に従って物事を進めないと恐ろしいことが起きてしまう」という不安から合理的でないと分かりながらも仕事や家事を同じ手順で進めてしまう、あるいは不吉とされる数字に縁起を担ぐというレベル以上にこだわる、といった行動にこだわるケースも見られます。
全般性不安障害
学生なら勉強・友人・家族など、社会人なら仕事・家庭・人間関係などについてあることないことがいろいろと心配になり、極度に不安な状態が続く病気です。
過度の不安によって十分な睡眠がとれなくなったり、体の筋肉が緊張してしまったりと身体的な悪影響を及ぼすだけではなく、勉強や仕事に集中できなくなる、あるいは他の精神疾患が進行してしまうという場合もあります。
“こころ”の健康を保つために効果的なこと
ゆっくりと行う腹式呼吸やヨガ、ストレッチなどでリラックスすることや、部屋の掃除や友人と電話をしたり、休日の計画を立てたりして意識を不安から遠ざけることなどが効果的です。
また、不安の原因となるような情報からは、適切な距離を取ることも重要です。特に気を付けたいのが、インターネット。便利ですが、真偽が確かでない大量の情報があふれてもいます。一日の中で使用する時間を制限したり、信頼できるサイトを選んで閲覧したりするなど、工夫して利用しましょう。
さらには、過度のアルコールやカフェインの摂取にも注意が必要です。特にカフェインは交感神経系を刺激するので、摂取すると体が緊張している時と同じ状態になってしまいます。コーヒーを飲んでリフレッシュしたい気分でも、強い不安を感じている時は控えめに。
それでも不安を感じてしまっていたら…
成人なら半年、子どもなら4週間ほど強い不安や緊張が続き、動悸や呼吸困難、震え、発汗などの症状が生じるようなら、それは日常の不安ではなく不安障害かもしれません。もし自身の症状が不安障害に当てはまるようでしたら、なるべく早めに医師に相談することをお勧めします。主な対処法となるのは、薬物療法やカウンセリングです。
更新:2024.07.22