夏場は特にご注意を!世界的に流行中の感染症「デング熱」について

メディカルブレイン編集部

蚊を媒介としたウイルスによる感染症「デング熱」が今、世界的に流行の兆しを見せています。日本でも、海外で感染した人が国内で発症する「輸入症例」による今年の患者数が昨年同時期の約2.8倍を記録していて、例外ではありません。
「デング熱」はごくまれにですが重症化し、命の危険を伴うケースもあります。
夏休みが到来し、海外旅行の機会や海外からの観光客も増えるこの時期。感染や日本国内への持ち込みに気を付けるためにも、「デング熱」についての理解を深めておくことが大切です。

デング熱について

デング熱とは?

「デング熱」とは、デングウイルスに感染した蚊に刺されることで人に感染する病気で、主に熱帯地方の都市部で多く発生している感染症です。
日本の夏は高温多湿で、特に蚊が発生しやすくなる季節。国内でも、デング熱の流行には警戒と注意が必要です。

どんな症状?

8割程度は無症状か軽症の発熱性疾患で済みますが、蚊に刺されてから2~14日後程度(多くの場合は3~7日後程度)で、40度近い高熱のほか、発疹や頭痛、骨関節痛や筋肉痛、嘔吐(おうと)などの症状が見られる場合は、デング熱が発症している可能性があります。発症後は通常2~7日程度で解熱し、解熱時期には発疹がよく現れます。
8割程度は無症状か軽症といっても、油断は禁物です。ごくまれに重症化して、デングショック症候群と呼ばれるショック症状や重度の出血、さらには重度の臓器障害などを伴う「デング出血熱」を発症し、死に至ることもあるのです。

デング熱の流行とその背景

現在、デング熱が世界的に流行中!

実は今、世界的に患者数が増加し、注目を集めています。
年間患者数が最も多かった2003年の630万人を大きく上回り、今年はすでに1000万人を超えたとの報告も。特に南北アメリカでの報告症例が多く、9割以上を占めています(2024年7月時点。世界保健機関・WHO調べ)。

国内の状況は?

日本では、2014年と2019年に国内での感染者が確認され、2016年には海外から帰国した感染者がデング出血熱を発症し、死亡する事例が報告されています。
2020年以降は海外で感染した人が国内で発症する「輸入症例」のみ確認されていますが、2024年は上半期の時点で96人の症例が報告されており、これは2023年同時期のおよそ2.8倍の数字です。国内でも増加傾向にあり、特に夏季の流行が懸念されています(2024年6月時点。国立感染症研究所調べ)。

なぜ、デング熱が流行しているの?

主な原因と考えられているのは、以下の2つです。

  • 地球温暖化の影響により、蚊の生息域が拡大し、生息数も増加している
  • 感染した旅行者やビジネスパーソンがその後国外へ移動することで、地球規模で感染が拡大している

デング熱の感染経路

デング熱は、どのようにして感染する?

デング熱を媒介するのは、「ネッタイシマカ」や日本にも生息する「ヒトスジシマカ」。デングウイルス感染者を刺した蚊がその後別の人を刺すと、刺された人はデングウイルスに感染してしまうのです(国内感染・下図参照)。

国内感染の仕組みのイラスト

デング熱の予防法・治療法

実は、デング熱には特効薬が存在しません。そのため、予防が最も重要になります。普段の生活ではもちろんのこと、海外への旅行の際にも、以下の対策を徹底しましょう。

デング熱を媒介する蚊に刺されないようにする

  • 長袖のシャツや長ズボンといった肌の露出を避けた服装を心がけ、露出部分には虫除け剤などを使用する
  • 蚊の侵入を防ぐべく、屋内で涼をとる際は網戸やエアコンなどを使用する
  • 万が一蚊が侵入しても、就寝・昼寝時に刺されないように殺虫剤処理された蚊帳などを活用する

蚊に刺されないようにするための対策のイラスト

健康管理を徹底する

  • 普段から十分な栄養と睡眠をとり、体調管理に気を配る
  • 早期の診断と適切な管理が重要なので、発熱や体調不良を感じた場合は速やかに医療機関を受診する

旅行に行く場合は…

  • 事前に、厚生労働省検疫所「FORTH」ウェブサイトなどで渡航先の疾病流行情報を確認
  • WHOや渡航先の公衆衛生機関による、デング熱の最新の情報の確認および流行状況の把握
  • デング熱の予防と対策については現地のガイドラインに従う
  • 旅行先や帰国後に発熱や体調不良を感じた場合は、旅行先の情報を受診先の医療機関に伝える

デング熱にかかってしまったら?

デング熱の潜伏期間は、蚊に刺されてから2~14日間。その期間にもしデング熱の疑いがあるような症状が出たら、速やかに医療機関を受診して診断・治療を受けましょう。注意したいのが、熱を下げるために解熱剤を用いること。アスピリンの使用はデング熱を重症化させてしまうことにつながるので、自己判断による服用は禁物です。

特効薬や特別な治療法がないため、医療機関での治療は対症療法になります。
血漿漏出(けっしょうろうしゅつ)(※)など出血性の症状が出現した場合は、輸液で循環血液量の減少を補うことが主な治療になります。対症療法でも、適切な処置を受ければ予後は比較的良好です。

(※)血漿と呼ばれる血液の血球成分(赤血球、白血球、血小板など)以外の成分が、血管の外に漏れ出てしまうこと

発症する前に蚊に刺されていたことを自覚している場合は、受診の際に報告しておくとよいでしょう。

世界的な流行が懸念される今、海外への旅行時は特にご注意を。うっかり国内に持ち込んでしまわないためにも、上記のような自身でできる対策はしっかりとして、夏を満喫しましょう。

更新:2024.08.09