我慢しないで!生理痛(月経痛)を正しく理解して、適切に対処
メディカルブレイン編集部
平均して月に一度、ほとんどの女性に訪れる生理(月経)。「生理痛(月経痛)」とは、この生理の前や最中に、下腹部や腰のあたりに感じる痛みのことです。毎月のことだからと我慢してしまうことも多い生理痛ですが、場合によってはその裏に病気が隠れていることも。そんな事態を避けるためには、生理痛を正しく理解して、対処法を知ることが大切です。
生理痛とは?
生理の仕組みと生理痛
子宮の内側にある子宮内膜は、妊娠時の着床に備えて定期的に増殖し、分厚い状態になります。しかし妊娠とならなかった場合、子宮を収縮させ、増殖した内膜を体外に排出する働きをします。これが、平均して28〜40日周期で女性に訪れている「生理」です。
その際に、子宮の収縮に作用する「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。これが過剰に分泌されると子宮が収縮し過ぎてしまい、下腹部や腰のあたりの痛みをはじめとしたさまざまな症状を引き起こすのです。痛みのほか、頭痛や胃痛、吐き気に目まい、貧血、下痢、イライラしやすくなる、などの症状を伴うこともあります。
生理痛には2つのタイプがある
生理痛やそれに関連する症状が日常生活に支障をきたすほど重度な場合を「月経困難症」と呼びます。大きく以下の2つに分けられます。
病気ではない 「機能性月経困難症」 |
・特に原因となる疾患がなく、体質に起因して症状が起こる ・「プロスタグランジン」の過剰分泌による子宮の過剰収縮が主な原因 |
病気が原因となる 「器質性月経困難症」 |
・体内に潜む疾患が原因で症状が起こる ・生理期間以外にも何かしらの症状が起こるケースも多く、原因疾患の治療とともに改善 |
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隠れているかもしれない病気は?
よく疑われる代表的な3つの疾患を紹介します。
子宮内膜症 | 子宮内膜が、卵巣や腹膜など子宮の外で発生・発育する病気 |
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子宮筋腫 | 子宮の筋肉に生じる良性の腫瘍。筋腫が大きくなると、過多月経や過長月経、不正出血や貧血を起こしやすくなる |
子宮腺筋症 |
子宮内膜に類似したものが、生理時とは異なる子宮筋層内で発生・発育する病気 |
生理期間以外にも症状がある場合や加齢とともに症状が現れるようになった場合、または徐々に症状が悪化する場合などは、疾患が潜んでいる可能性があります。当てはまる時は、産婦人科の受診を検討する必要があります。
病気を原因としない生理痛の対処法
鎮痛剤の服用
生理痛の主な原因となる物質「プロスタグランジン」の産生を抑える作用がある、ロキソニン錠・ボルタレン錠・バファリン錠などといった、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用が一般的な対処法です。鎮痛剤は効くまでに時間がかかるので、痛くなる前や痛くなりそうな時は、早めに内服するのがコツ。痛くなってから飲むと、一番痛みがつらいタイミングで十分な効果を発揮しづらいことがあります。
低用量ピルの服用
低用量ピルには経口避妊薬(OC)と低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)がありますが、実はLEPは、月経困難症や子宮内膜症の治療薬として保険適用されます。LEPには子宮内膜の増殖を抑える働きがあり、それに伴ってプロスタグランジンの産生も抑制します。また、生理期間に剥がれる内膜の量も減少するため、子宮収縮作用を軽減する効果も。さらに低用量ピルは月経前症候群(PMS)や生理不順の改善にも寄与する、女性にとっての強い味方なのです。
漢方薬の服用
漢方薬の中には婦人科系の不調に効果的な薬も多く、医師の処方の下で服用するのも選択肢の一つです。自然由来の生薬を使用しており、副作用が少ないのもメリット。生理痛に関するものとしては、桃核承気湯、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、加味逍遙散などがあります。
ミレーナの装着
子宮内に「ミレーナ」と呼ばれる子宮内避妊システム(IUS)を装着する方法です。ミレーナから持続的に分泌される「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンにより子宮内膜が厚くなり過ぎず、重い生理痛や過多月経の改善を促してくれます。高い避妊効果もあり、一度の装着で最長5年間持続します。
生理痛を和らげるには?
温める・温活
「冷え」は生理痛の大敵。体内の血流を滞らせ、生理痛を悪化させます。痛みを感じたら下半身を冷やすような薄着は避けて、カイロや毛布、膝掛け、腹巻きなどで下腹部や骨盤周辺を温めてください。お風呂もシャワーだけで済まさず、入浴や足浴を取り入れましょう。また生理期間外のケアとしては、首から下をガウンで覆いヨモギを煎じた蒸気をデリケートゾーンに直接当てる「よもぎ蒸し」もおすすめ。生理痛だけでなく、生理不順やPMS、冷えや不眠、便秘など、ヨモギの成分や血流改善によるさまざまな効果が期待できます。
適度な運動
運動不足も、血行不良を引き起こす原因の一つ。生理期間中は、ストレッチや軽いウオーキング・ヨガなどで、ゆっくり体をほぐしましょう。適度な運動は血流改善のほか、ストレスを発散したり心身をリラックスさせたりしてくれるので、ぜひ習慣化を。
姿勢にも注意
座位は、骨盤を立てるイメージで、椅子に浅めに腰掛けて座る姿勢がおすすめ。横になる時は、横向きに寝る側臥位が痛みを和らげやすくしてくれます。膝を軽く曲げ、体を少し丸めるのがポイント。左右はどちらでも構いません。布団やクッションなどを抱いたり脚の間に挟んだりすると、重心が分散されてさらに楽になります。
食事にもひと工夫
冷たい飲食物や砂糖たっぷりのお菓子類、カフェインの摂取も、体を冷やし、血流の低下につながるので避けましょう。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やナッツ類は、痛みの緩和や倦怠感にアプローチしてくれます。生理期間中は、積極的に摂取したい食品です。
アロマテラピー(芳香療法)
精油の種類によっては、生理期間中のつらい症状を緩和してくれる効果があります。おすすめは、鎮痛作用や精神安定作用のあるラベンダーにホルモンバランスの改善や緊張・不安を緩和してくれるゼラニウム、鎮痛・鎮静作用のあるカモミールなど。入浴やハーブティーなどとともに取り入れてみましょう。
更新:2024.08.26