まだ間に合う!子宮頸がんを予防するHPVワクチンのキャッチアップ接種
メディカルブレイン編集部
1997年4月2日から2008年4月1日までに生まれた女性の皆さん。子宮頸がんなどを予防する「HPVワクチン」を無料で受けられる「キャッチアップ接種」をご存じですか?
近年、若い女性を中心に子宮頸がんが増加傾向にあります。今回は、そのリスクを少しでも減らすことができる、貴重な機会に関するお話です。
HPVワクチンのキャッチアップ接種とは?
子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンは日本では2009年に承認され、2013年4月から国は小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種を実施してきました。
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ところがその2013年に、HPVワクチン接種後に体の痛みなどの症状を訴えた人が相次いだことから、2021年までの一定期間、HPVワクチン接種に関する積極的な案内を差し控える動きがありました。
その後、2021年11月に行われた専門家による会議において、HPVワクチンの有効性や安全性が確認できたことから、2022年4月に積極的な案内を再開しました。しかしその結果、案内が差し控えられていた期間中、定期接種の対象にもかかわらずHPVワクチンの接種機会を逃してしまったという人が生まれることに。
そこで国は、定期接種の対象年齢(小学校6年~高校1年相当)を超えて、改めて公費による無料接種の機会を提供することにしたのです。これが「キャッチアップ接種」です。
HPVワクチンのキャッチアップ接種が受けられる対象・期間
以下の条件を満たす人が対象です。
<接種対象者>
- 1997年4月2日から2008年4月1日までに生まれた女性
- 過去に、HPVワクチンの接種を合計して3回受けられていない女性
<接種可能期間>
2022年4月から2025年3月末までの3年間
2024年11月末までにHPVワクチンの初回接種を!
これまでの一般的な接種スケジュールでは、3回の接種を完了するまでに6カ月ほどかかるため、初回接種を2024年9月末までに受ける必要がありました。
しかし国はキャッチアップ接種で受けられるHPVワクチン3種類のうち、サーバリックス®(2価ワクチン)を除くガーダシル®(4価ワクチン)とシルガード®9(9価ワクチン)の2種類は、接種完了までのスケジュールを最短で4カ月に縮めることが可能という見解を改めて示しました。つまり、2024年11月末までに初回接種を済ませば、キャッチアップ接種の期間内に3回の接種を完了できることになったのです。
なお国は、接種の間隔が短くなっても健康上の問題は見受けられないという見解も発表しています。
HPVワクチンを任意で接種する場合は全額自己負担となり、およそ5万〜9万円ほどの費用がかかってしまいます。
また、定期接種の対象年齢の期間内に接種するのが最も効果的ですが、対象年齢を過ぎてからの接種でもある程度の有効性が期待できることが、国内外の研究により示されています。
HPVワクチンのキャッチアップ接種を受けるには?
住民票のある市区町村から具体的な接種方法についての案内が届くので、まずはそちらの確認を。
また、過去に受けた接種回数や時期により、接種方法やスケジュールが変わる場合があります。可能な限り母子健康手帳を確認・持参したうえで、市区町村の担当窓口や医療機関に相談するようにしましょう。
HPVワクチン接種による健康被害に対するフォローについて
1回目や2回目の接種で気になる症状が現れた場合は、それ以降の接種を取りやめることも可能です。
また、極めてまれなケースですが、予防接種を受けた後、重度の健康被害が生じる場合もあります。今回のHPVワクチンに限らず、予防接種によって医療機関での治療が必要となる、生活に支障が出るような障害が残るなどの重い健康被害が生じた場合は、お住まいの地域の市区町村の予防接種担当部門に相談してください。
申請のうえ認定されると、法律に基づいて「予防接種健康被害救済制度」による救済(医療費・障害年金等の給付)を受けることができます。
HPVワクチンとは?
キャッチアップ接種できるHPVワクチンとは、どのようなものなのでしょうか。
HPVはその正式名称を「ヒトパピローマウイルス」と呼び、性交渉の経験がある女性であればその過半数が一度は感染するといわれている一般的なウイルスのことです。子宮頸がんをはじめとして肛門がんや膣がん、尖圭コンジローマなどといった、多くの病気の発生に関係しています。
たとえ感染しても、免疫機能などによりウイルスが自然に消滅する場合がほとんどです。しかし一部では、ウイルスが体に残り続けて持続的に感染した状態となり、その後病変してがんになってしまうケースも見受けられます。
HPVワクチンは、このウイルスへの感染をある程度抑制するための有効な手段の一つなのです。
HPVワクチンの効果とリスク
サーバリックス®(2価ワクチン)とガーダシル®(4価ワクチン)は、子宮頸がんを起こしやすいとされるHPV16型と18型の感染を防ぐことから、子宮頸がんの原因の50〜70%の予防効果が期待できます。
シルガード®9(9価ワクチン)は、HPV16型と18型に加えてHPV31型・33型・45型・52型・58型といった5種類の型の感染も防ぐことから、子宮頸がんの原因の80〜90%もの予防効果があるとされています。
HPVワクチン接種のリスクとしては、一般的かつ軽度のものでは接種部位の痛みや腫れ、赤みなどが見られます。ごくまれに、重度のアレルギー症状や神経系の症状が起こることもあります。また、広範囲の痛みや手足がうまく動かない、動かそうという意図がないにもかかわらず体の一部が動いてしまう不随意運動など、他にもさまざまな症状が報告されています。
接種後に体調の変化が見られた場合は、まずは接種を受けた医療機関の医師に相談を。国は、HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に関わる協力医療機関を、都道府県ごとに設置しています。接種を受けた医療機関の医師やかかりつけの医師などに相談のうえ、受診してください。
更新:2024.12.05