【健診結果のミカタ・第2回】忘年会・新年会シーズンは特に気になるγ-GTP

メディカルブレイン編集部

健康を維持していくためにも、健康診断結果の「見方」を知ることで、自身の健康の「味方」にしていこうというこの企画。第2回目に紹介するのは、γ-GTPです。肝臓の疾患に関係する数値のため、健康診断の結果が出ると真っ先にこの数値を見るというお酒好きの人もいるのではないでしょうか。今回はこのγ-GTPについて、詳しく紹介します。

お酒好きなら気になるγ-GTPってどういう数値?

お酒好きの人が健康診断を受けた時に気になるのが、アルコールを分解する働きを持つ肝臓の状態です。特に忘年会・新年会が続く年末年始は飲酒量が増えることもあって、年明け早々に健康診断などを受ける予定のある人は、気が気ではないかもしれません。

そんな人たちの多くが、健康診断結果を見る時に気にしているのがγ-GTPの数値です。

γ-GTPとは、正式には「ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ」と呼ばれる、たんぱく質を分解する酵素の一種です。肝臓や胆管の細胞に存在し、肝臓の大きな役割の1つでもある解毒作用にもかかわっています。

通常は細胞内に存在するのですが、お酒を飲み過ぎてアルコールを分解するために肝臓の負担が大きくなると、肝臓の細胞が壊れてしまいます。通常だと細胞は自然と再生していくのですが、肝臓の負担が大きい状態が続けば、再生が追い付かずに壊れた細胞が増えていくことになります。すると、壊れた細胞からγ-GTPが血中に漏れ出して、数値が上昇します。このことから、γ-GTPはアルコール性肝障害の可能性を示す指標となるのです。

γ-GTPのイラスト

また、胆管結石や胆道炎などの異常がある場合や薬剤性肝障害の場合にも、γ-GTPの数値は上昇します。薬剤性肝障害の場合はアルコール性肝障害と同様に壊れた肝臓の細胞から血中にγ-GTPが漏れ出てくるのですが、胆管に異常がある場合は、胆汁が流れにくくなって血中にγ-GTPがあふれ出てきます。γ-GTPの数値が教えてくれる体の異常は、アルコール性肝障害がよく知られていますが、それだけではないのです。

γ-GTPの数値がどの程度になると要注意?

日本人間ドック・予防医療学会では、基準範囲が50U/L以下、51~100U/Lだと要注意、101U/L以上だと異常としています。
※U/L=ユニットパーリットル

基準範囲 要注意 異常
50以下 51~100 101以上
※単位はU/L(ユニットパーリットル)

健康診断を受けた際、数値が「要注意」あるいは「異常」を示していると、アルコール性肝障害や薬剤性肝障害、胆道の病気(胆道炎、胆管結石)、あるいはアルコール過剰摂取や薬物摂取といった可能性が疑われます。もし要精密検査、要治療と診断された場合は、速やかに医療機関を受診してください。

肝臓の異常を示すバロメーターは他にもある?

肝臓の状態が気になる人は、健康診断の結果を見る際にはγ-GTPの数値だけに注意していればいいというわけではなく、他にもチェックしておきたい項目があります。GPT(ALT)とGOT(AST)の2つです。

1つ目のGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)ですが、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)とも呼ばれる酵素で、肝臓の細胞に多く含まれています。たんぱく質を分解してアミノ酸をつくり、体の代謝を助ける働きをする酵素なのですが、この酵素も肝臓や胆管に異常があると、血中の数値が高くなります。

もう1つのGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)はAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とも呼ばれる酵素で、GPT(ALT)と同様にアミノ酸をつくり代謝を助ける働きをします。肝臓の細胞だけではなく、腎臓や心筋(しんきん)の細胞にも多く含まれています。こちらも肝臓や腎臓、心筋に異常が起こると血中に流れ出し、数値が高くなります。

いずれも日本人間ドック・予防医療学会によると基準範囲が30U/L以下、要注意が31~50U/Lで、51U/L以上が異常。これらの数値が「要注意」あるいは「異常」を示していると、アルコール性肝炎や脂肪肝、肝硬変、急性・慢性肝炎、そして心筋梗塞(こうそく)の可能性が疑われます。

γ-GTPと合わせてこれら3つのバロメーターをまとめると、以下の表のようになります。

基準範囲 要注意 異常
γ-GTP 50以下 51~100 101以上
GPT
(ALT)
30以下 31~50 51以上
GOT
(AST)
30以下 31~50 51以上
※単位はU/L(ユニットパーリットル)

肝臓の状態が気になる人はγ-GTPだけではなく、今度からはこれら3つの数値をチェックしてみてはいかがでしょうか。

お酒を飲まない人は肝臓のことを気にしなくてもいい?

お酒を(たしな)まない人は、これら3つの数値を気にしたことがないという場合もあるかもしれません。しかし、お酒を飲まなくても知らず知らずのうちに肝臓に異常が発生しているということもあり得ます。

先に述べた薬剤性肝障害というのもその1つなのですが、より日常の生活習慣で気を付けたいのが、糖質の摂りすぎによる脂肪肝です。

お酒を一切飲まない人でも、甘いコーヒーや紅茶、ジュース、お菓子、糖質が入った調味料や食品を日常的に口にしている場合があるはず。このような食べ物や飲み物を摂りすぎてしまうと、中性脂肪が肝臓に蓄積し、脂肪肝になってしまうケースもあるのです。

GPT(ALT)とGOT(AST)は脂肪肝の可能性を示す数値でもあるため、お酒を飲まない人でも、健康診断の結果を見る際にはこれら3つの数値をチェックすることをお勧めします。

更新:2024.12.20