コロナ禍後のインフルエンザ流行時期に変化あり?
メディカルブレイン編集部
例年12月から3月にかけて流行するインフルエンザ。コロナ禍の最中だった2020-2021シーズンから2022-2023シーズンの3シーズンでは、マスク着用や手指の消毒の徹底、イベントの減少などによりインフルエンザの流行も抑えられていましたが、2023-2024シーズンからは再び流行。しかも、コロナ禍前と比べて流行時期も変わってきているようです。
インフルエンザと普通の風邪の違いとは?
まず、いわゆる普通の風邪とインフルエンザとではどのような違いがあるのかについて、おさらいしましょう。
普通の風邪はさまざまなウイルスが原因となって発症しますが、症状は多くの場合において喉の痛みや鼻水、咳やくしゃみなどで、インフルエンザのように高熱が出たり重症化したりするケースはあまり見られません。
一方インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって発症し、普通の風邪と同様の症状に加え、38度以上の高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感といった症状が感染後急速に現れるのが特徴です。
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型、D型の4種類があり、A型には複数の亜型が存在します。現在国内で流行しているインフルエンザウイルスは、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型(香港型)とB型(ビクトリア系統)です。
インフルエンザが流行する時期はいつ?
インフルエンザは例年、12月頃から流行し始め、1月~3月にピークを迎え、4月になると落ち着いていく傾向にありました。ところが新型コロナウイルス感染症の流行以降、その傾向に変化が見られます。下のグラフは過去3シーズンで、全国約5,000カ所の定点医療機関から報告されたインフルエンザ感染者数の推移です。
注目したいのは、新型コロナウイルス感染症の感染法上における位置付けが5類感染症へ以降した後の2023-2024シーズンです。
インフルエンザの感染者数は、前述の通り全国約5,000の定点医療機関から毎週報告されるのですが、流行の目安は感染者数を定点の数で割った「定点当たりの感染者数」が1.00を超えることとされています。2023-2024シーズンは、その前の2022-2023シーズンの終わりからこの「定点当たりの感染者数」が1.00を切ることなくシーズンに突入しました。その後も年明けに一度落ち着きを見せたものの、また1月下旬から2月にかけて感染者数が増加。これまでとは異なる傾向を見せました。
過去の記事:異例の早さで流行 2023年インフルエンザ
2024-2025シーズンでも2024年10月28日~11月3日の週に「定点当たりの感染者数」が1.00を上回り、その後2024年12月23日~29日の週には「定点当たりの感染者数」が64.39(感染者数317,812人)と、現行の報告体制となった1999年以降で最大の数値を記録しています。
海外でもコロナ禍以降、インフルエンザの流行が過去とは違ったタイミングで開始したという報告がされていて、今後も注意が必要です。
感染者が集中している年齢・性別はある?
インフルエンザの流行で、特に注意が必要な年齢・性別はあるのでしょうか?
下のグラフは、「定点当たりの感染者数」が64.39を記録した2024年12月23日~29日の1週間で報告された、年齢・性別ごとのインフルエンザ感染者数です。男女別では特に大きな違いは見られません。ただ、年齢別にみると、圧倒的に子どもが多いことが分かります。
0カ月~9歳の子どもに限ると合計124,131人で全体の約39%を占め、0カ月~14歳にまで広げると合計178,632人と、全体の約56%。何と半数以上を占めていることが分かります。
ただし、15歳以上の感染者数を見ても、決して感染者が少ないわけではありません。子どもだけではなく、大人も十分に予防することが必要です。
合計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
0〜5カ月 | 1,156 | 621 | 535 |
6〜11カ月 | 3,257 | 1,770 | 1,487 |
1歳 | 9,778 | 5,203 | 4,575 |
2歳 | 10,515 | 5,505 | 5,010 |
3歳 | 11,517 | 6,072 | 5,445 |
4歳 | 13,158 | 6,944 | 6,214 |
5歳 | 13,619 | 7,369 | 6,250 |
6歳 | 15,152 | 7,956 | 7,196 |
7歳 | 15,511 | 8,184 | 7,327 |
8歳 | 15,564 | 8,324 | 7,240 |
9歳 | 14,904 | 8,015 | 6,889 |
10〜14歳 | 54,501 | 29,628 | 24,873 |
15〜19歳 | 20,182 | 10,758 | 9,424 |
20〜29歳 | 16,834 | 8,755 | 8,079 |
30〜39歳 | 20,400 | 9,591 | 10,809 |
40〜49歳 | 28,280 | 13,370 | 14,910 |
50〜59歳 | 24,687 | 12,615 | 12,072 |
60〜69歳 | 12,802 | 6,449 | 6,353 |
70〜79歳 | 8,910 | 4,386 | 4,524 |
80歳〜 | 7,085 | 3,074 | 4,011 |
合計 | 317,812 | 164,589 | 153,223 |
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2024.html
インフルエンザの予防法と、かかってしまった場合の対処法
インフルエンザを予防するには、以下の方法が効果的です。
- 流行前にワクチンを接種する
- 外出後には手洗いを徹底する
- 室内の湿度を適切(50%~60%)に保つ
- 休養を十分にとり、バランスの取れた食事をとることで体の抵抗力を高める
- 人混みや繁華街への外出を控える。どうしても外出する用事がある場合は、不織布マスクを着用する
- 室内は小まめに換気する。冬場は室内温度を下げないよう、暖房器具を併用する
また、もしインフルエンザにかかってしまったかもしれないと思ったら、以下の点にご注意ください。
- 人混みや繁華街への外出を控え、無理をして通勤・通学も行わない
- 咳やくしゃみをして周囲の人にうつしてしまわないように、できる限り不織布マスクを着用する
- 咳やくしゃみの際にはなるべく周囲の人から離れて、マスクがない場合はティッシュで口と鼻を覆い、使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨てる
- 安静にして、睡眠も十分にとる
- 水分補給も十分に行う。お茶やスープでも可
- 高熱が続いたり呼吸が苦しかったり、意識が朦朧としたりといった自覚症状があれば、早めに医療機関を受診する
- 子どもがインフルエンザに感染した場合は急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロと歩き回るといった異常行動をとる場合があるので、自宅療養の際は子どもが1人にならないように配慮する
流行の時期に変化が見られるとはいえ、まだまだインフルエンザへの注意が必要な季節です。しっかりと予防して、冬場を乗り切りましょう。
更新:2025.02.06