切らずに治す、子宮筋腫に対するUAE(子宮動脈塞栓術)

日本医科大学付属病院

放射線科

東京都文京区千駄木

切らずに治す、子宮筋腫に対するUAE(子宮動脈塞栓術)

UAE(子宮動脈塞栓術)とは?

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)に対するUAE(子宮動脈塞栓術(そくせんじゅつ))は、国内では2014年から保険適用となった治療方法です。足の付け根の動脈から挿入した細い管(カテーテル)を通して、子宮動脈に塞栓物質(血液の流れを止める物質)を詰めることで、子宮筋腫を縮小させ、筋腫に伴う症状を緩和させることができます。

外科的手術(子宮摘出術、筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ))のように全身麻酔ではなく、局所麻酔で行います。お腹(なか)は切ることなく、創(きず)は足の付け根の5mmほどの小さな切開のみです。患者さんの体への負担がより少ないため、女性にとって子宮という大切な臓器を温存できる治療です。

子宮筋腫の症状・診断

●子宮筋腫とは

子宮筋腫は、子宮内の筋肉層で発生する良性の腫瘍(しゅよう)です。子宮筋腫は主に、①筋層内(きんそうない)筋腫、②粘膜下(ねんまくか)筋腫、③漿膜下(しょうまくか)筋腫の3つに分類されます(図1)。

図
図1 子宮筋腫の発生場所と種類

子宮筋腫は1個だけの場合もありますが、複数個が同時に存在することもあります。一般的に子宮筋腫はホルモンの影響を受け、妊娠中や更年期の間に大きくなる傾向があります。

子宮筋腫は通常、良性であり、がん化することはありません。しかし大きくなると、月経不規則または過多な月経出血、下腹部の圧迫感や痛み、尿の頻繁な排出や尿漏れ、便秘などの症状を引き起こすことがあります。また子宮筋腫は妊娠の障害や、不妊の原因になることもあります。

●診断

子宮筋腫の診断には、以下のような検査が行われることがあります。

①身体検査:
医師が患者さんの下腹部を触診し、子宮や腹部に腫(は)れや異常がないか調べます。
②超音波(エコー)検査:
子宮筋腫の大きさや位置、数などを評価するのに役立ちます。
③MRI(磁気共鳴画像):
超音波よりも詳細な画像が得られ、子宮筋腫の性質や子宮の構造を評価します。
④子宮内膜(ないまく)組織の採取(内膜生検(せいけん)):
子宮内膜症やがんなど、ほかの子宮の疾患を除外するために行われる場合があります。

治療法の選択

子宮筋腫の治療法は、症状の重症度や患者さんの年齢、希望する妊娠の可能性などによって異なります。一般的な治療法には次の4つが含まれます。

  • 経過観察と症状管理
  • 薬物療法(ホルモン療法など)
  • 手術(子宮筋腫摘出術、子宮摘出術など)
  • UAE(子宮動脈塞栓術)

UAEは、子宮筋腫の治療法の1つであり、手術による摘出を避けるために行われる場合があります。

●メリット

低侵襲(ていしんしゅう)(体に負担が少ない)であり、手術よりもリスクが低い場合があります。子宮を摘出することなく、子宮筋腫の血液供給を遮断するため、症状を軽減することができます。

●デメリット

一部の患者さんにとっては、後遺症や合併症が生じる可能性があります。妊娠を希望する場合、子宮筋腫摘出術など、ほかの手術法と比較して、妊娠に対する影響がまだ完全には明らかではありません。

症状、患者さんの希望、および医学的な適応を考慮しながら、個々の患者さんに適した治療法を医師と相談しながら決定します。

UAEの適応と手術内容

●適応

UAE治療は次のような方が適応可能です。

  • 子宮筋腫と診断され、これに伴う過多月経、貧血、腹部飽満などの圧迫症状がある
  • 薬物治療での症状改善が困難
  • 外科的手術(子宮摘出術、筋腫核出術)を希望しない、あるいは困難
  • 閉経前である
  • 現在妊娠を希望していない、将来妊娠・出産を希望していない

ただし、1~5に当てはまっていても、10cm以上の大きすぎる子宮筋腫や筋腫がある位置によっては、UAEに適さない場合もあります。まずは産婦人科医師による内診、超音波検査、子宮頸(しきゅうけい)がんや子宮体(しきゅうたい)がんの除外などを行います。放射線科医師は、MRI画像で子宮筋腫の大きさや位置、性状、血管の走行をチェックします。これらの診察を行い、UAE治療が可能かどうか総合的に判断します。

●UAEの実際

治療は、仰向けに寝て、足の付け根にある大腿(だいたい)動脈の周辺に局所麻酔を行ったあと、5mmほどの切開を行います。そこからカテーテル(直径1.5mm程度)を血管内に挿入し、X線で確認しながらカテーテルを進めていきます。標的の子宮動脈まで到達したら、塞栓物質を慎重に注入していきます(図2)。治療時間は約2時間です。

図
図2 UAEのイメージ

治療後はカテーテルを抜き、手でよく押さえて止血します。治療中から治療後3~4時間にかけて強い痛みが持続することがあります。通常は24時間以内に軽減しますが、それまでは鎮痛剤を使って、痛みのコントロールを行います。この痛みは筋腫の大きさとは関係なく、ひどい生理痛のような痛みを感じる方もいれば、ほとんど痛みを感じなかったという方もいます。

痛みの程度が落ち着き、歩行や食事が元通りできるようになり、検査値の異常がなければ退院になります。入院期間は5日間くらいです。

●UAE後の経過

退院後、1週間ほどは軽い痛みが残っていることがありますが、多くの方は治療前と同じように日常生活を送り、職場復帰することも可能です。

塞栓物質を注入して子宮動脈を詰まらせると、直後より筋腫の細胞は死んでいきます。筋腫への血流が消失したことで、治療した筋腫は数か月かけて徐々に小さくなっていきます(図3)。筋腫が縮小するとともに月経時の出血量も減少し、貧血や圧迫症状も改善していきます。

図
図3 造影MRI矢状断像
(A)治療前 (B)UAEより6か月後
黄色矢印で示しているのが子宮筋腫。この患者さんは、これら多数の大きな筋腫によって腹満感と腰痛に悩まされていました。治療前の子宮のサイズは20cmを超えています。UAE治療後、筋腫の血流は消失し、子宮は10cmまで縮小。症状もなくなりました

筋腫の血流が残存し、症状の改善が乏しい場合はUAE治療をもう一度行うこともあります。

更新:2025.12.12

関連する病気