4次元画像がもたらす最新の排尿評価

平塚市民病院

泌尿器科

神奈川県平塚市南原

排尿がおかしいなと思ったら、早期受診、早期診断を

「最近、尿の勢いが落ちたな」「夜間に幾度となく起きるな」「でも年のせいかな」など、排尿にかかわる症状を感じていませんか?

小便なのに座ってしている男性も、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。60歳も過ぎる頃になりますと、かかりつけのクリニックの先生から「前立腺だね」と診断され、薬を内服している方も少なくないでしょう。

しかし、排尿障害は前立腺だけの問題ではありません。多くの男性は、年とともに前立腺は腫大(しゅだい)しますが、大きくなくても排尿困難を呈する患者さんはたくさんいます。実際、前立腺肥大症では、前立腺の大きさと症状の強さはほとんど関係ないとされています。

さらに、糖尿病や圧迫骨折でも、膀胱(ぼうこう)の機能が落ちることで尿の勢いは悪化します。また、年齢による尿道の柔軟性の低下も、尿の勢いを悪化させます。

排尿は、膀胱から前立腺、尿道にいたる一連の尿の流れであり、畜尿量や排尿環境など、いろいろな影響を受けるので、安易に1つの原因で生じるとはいえないのです。泌尿器科の専門の医師ですら、尿の勢いを測定し、超音波で前立腺の大きさや残尿量をはかるなど、たくさんの検査結果を総合的に判断し、排尿状態を評価しているのです。ですから、薬を内服してもなかなか改善しないというケースが多々見られており、新たな診断手法の開発が求められています。

4次元動画による排尿動画作成

そもそも、排尿という動きを、2次元の画像で評価すること自体に無理がありました。しかし、昨今のバーチャル技術の進歩により、従来不可能とされた“動きを含んだ3次元モデル”(すなわち4次元モデル)を、極めて低被曝(ひばく)に作成することが可能となりました。

当院では、最新の面検出器型CT(写真)と解析ソフトを導入し、排尿動画を立体的に任意の方向から作成できるようになり、排尿のどの時点で尿路の閉塞(へいそく)が生じるのか、どの場所が原因なのか、排尿障害の発生機序(発生のしくみ)やタイミングなどが描出できることから、正しい診断と適した治療方針を計画することができるようになりました。さらには、膀胱の影響や、尿道の影響など、前立腺以外の要素も評価することが可能となりました(図1)。

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A:面検出器型CT(東芝Aquilion one)
B:検査の様子
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図1
A,B,C:症例により前立腺の形態は異なり、閉塞機転も異なる
D:同時に作成できる仮想内視鏡では、膀胱内突出の様子が確認できる
E:尿閉症例を示す。動画的評価により、排尿が極めて困難であることが容易に理解できる
F:排尿困難なため、用手補助に排尿している様子が確認できる
G:排尿途中で前立腺部尿道にて閉塞をきたし、全量排尿できない様子を示す
H:小さな前立腺が排尿を妨げることで、排尿困難にいたっている様子が確認できる

検査方法はいたって簡単で、CT検査前に造影剤の注射を行い、十分に尿が溜(た)まった時点で、排尿していただきながらCT 撮影を行います。検査は5分程度で終了します。当院のCTは、従来のCTと比べ最大75%被曝を低減することができ、患者さんにも安全な検査方法です。

排尿困難でお困りの方、4次元排尿動画にて評価してみませんか?

夜間頻尿(ひんにょう)、尿失禁、排尿障害でお困りの患者さん、治療を継続しているにもかかわらず、改善効果が認められない患者さん、当院でのウロダイナミック4D-CT検査で、排尿状態を評価してみませんか。原因部位の詳細な評価が可能となるだけでなく、内服治療の可能性や、膀胱や尿道の治療など、患者さんに対してベストな提案をご提示できるものと考えています(図2)。

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図2 A:排尿に伴う尿道の動きを示す。B:尿勢良好症例では、振子部尿道も良好に開大している様子が確認できる

更新:2024.10.29