睡眠障害の診断の決め手となる検査ーポリソムノグラフィー
福井大学医学部附属病院
神経科精神科
福井県吉田郡永平寺町
睡眠障害の現状
ある調査では、日本人の5人に1人が、「眠れない」と回答し、通院患者さんの20人に1人が、睡眠薬を服用しているといわれています。しかし、睡眠障害の原因が十分に検査されずに治療が行われているのが現状です。特に不眠症以外の睡眠障害の診断には専門的な検査が必要となります。
睡眠障害の弊害
睡眠の量(睡眠時間)あるいは質(睡眠の深さ)が十分にとれないと、日中の眠気や集中力低下をきたすだけでなく、居眠り運転による交通事故などの重大な社会問題を引き起こすことになります。さらに睡眠障害が放置されると身体疾患の悪化やうつ病などの精神障害の誘因となることも少なからずあります。
不眠症以外の代表的な睡眠障害過眠症と行動異常
「図1」に代表的な睡眠障害と症状をまとめました。
「よく眠っているはずなのに、日中眠くて仕方がない」と感じている方の中には、自分が睡眠障害であること自体に気づいていない方もいます。この場合、過眠症の可能性があります。代表的な過眠症に、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に息が止まる)、周期性四肢運動障害(筋肉がピクつく)があり、睡眠の質を低下させます。日中突然眠気が起こるナルコレプシーを含め、過眠症の原因を明らかにし、適切な治療を行うための検査が必要です。
また睡眠中に突然起き上がり、眠りながら夢の内容に影響されて予想外の行動をとるレム睡眠行動障害では、思わぬ事故につながることもあります。
睡眠中のてんかん発作
睡眠中のピクつきや突飛な行動は、てんかんが原因で起こることがあります。発作が睡眠中に起こることはまれではありません。会話や行動がまとまらないために、単なる寝ぼけと片付けられることもあります。てんかんは脳の過剰興奮によって起こる病気で、睡眠障害とは全く治療が異なります。てんかんと睡眠障害の正確な診断が必要となります。
睡眠検査ポリソムノグラフィー
睡眠の質の低下とその原因を調べる検査が、ポリソムノグラフィー(PSG)です。睡眠中の脳波、目の動き、心電図、呼吸、動脈血酸素飽和度(血液に酸素が十分取り込まれているかを示す指標)を同時に記録します(図2)。脳波によって、睡眠の質が客観的に評価されます。加えて、エアーフロー、胸部と腹部の動きと動脈血酸素飽和度によって呼吸状態を評価し、筋電図とビデオ撮影によって筋肉の運動やけいれんおよび行動を調べます。この検査によって、睡眠の質が低下する原因や睡眠時の行動異常を明らかにし、睡眠障害を診断します。
さらにポリソムノグラフィーに含まれる脳波検査によって、てんかんの診断も可能となります。
検査のため、神経科精神科病棟にある特別な病室に3日間入院し、2夜の睡眠時ポリソムノグラフィーを記録します。ポリソムノグラフィーの結果と診断は、退院後に外来にて説明し、その診断に応じて適切な治療を提案します。
更新:2024.07.04