食物アレルギーの管理・治療の最前線-食物アレルギー

富山大学附属病院

小児総合内科

富山県富山市杉谷

食物アレルギーはどのように診断しますか?

食物アレルギーは、約5~10%のお子さんで認められる頻度(ひんど)の高いアレルギーです。原因食品は鶏卵が最も多く、次いで牛乳、小麦で全体の70%以上を占めています。食物アレルギーは、実際に原因食品を摂取した後にアレルギー症状(じんましん・咳(せき)・腹痛や嘔吐(おうと)、重篤なときはぐったりしたり、意識を失うこともあります)が認められた場合に疑います。

診断のために、血液検査で食物に反応する特異的IgE抗体という免疫成分を測定したり、また皮膚に原因食品のエキスをつけて、小さな針で軽く刺してじんましんができるか評価する皮膚プリックテストを行ったりすることが多いですが、最終的には実際に病院で食品を摂取して症状が出現するかどうか評価する食物経口負荷試験を行って確定診断します(図1)。

イラスト
図1 食物アレルギーの診断
血液検査、皮膚テスト、食物経口負荷試験などで診断します
表
表 食物経口負荷試験の目的確定診断や、どの程度食べられるのかを評価します

主な対応は原因食品を摂取しない除去食療法ですが、この場合は必要最低限の除去を行います。患者さんによって摂取できる量や加工の程度は違うため、担当の医師と相談が必要です。また、血液検査や皮膚テストが陽性でも、実際に食べてみて症状が全く認められない場合は、食物の除去は必要ありません。

食物アレルギーは治るのですか?

乳児期の食物アレルギーは、成長に伴い自然に治る(耐性化といいます)ことが知られています。多くの場合は5~6歳までに耐性化するため、食物アレルギーと診断されても半年~1年ごとに評価を行い、食べられるようになったかどうか確認する必要があります。血液検査は有用ですが、これだけで治ったかどうかの判断はできないため、正しい評価をするためには食物経口負荷試験が必要です。患者さんごとに、耐性化の度合いは違うので、どの程度治ってきたかを定期的に評価する必要があります。

しかしながら、自然に治る見込みが少ない患者さんが一部に存在し、近年このような患者さんが増加している傾向があります。このような患者さんは、ほんの少しアレルゲンが混ざっている食品を食べるだけでも重篤な症状(アナフィラキシー)を起こしてしまうことがあり、日常の食事に常に注意しながら生活をする必要があります。短期間の入院でアレルゲンを摂取し、症状を起こしながら強制的に体を慣らす「急速経口免疫療法」が以前は積極的に行われていましたが、退院後の日常生活でのアナフィラキシー発症のリスクが多く、近年はあまり行われていません。

最近の食物アレルギーはどのように管理しますか?

食物アレルギーがある方は、原因食品を摂取しない(除去)ことで、症状を引き起こさないようにすること、また、アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こす方は、アドレナリン自己注射器(エピペン®)を携帯することで緊急時の対応を行うのが基本です。

しかし、近年の研究では原因食品を少しずつ摂取することで、徐々に原因食品に反応しない体質に変えていくことができることが明らかとなってきました。そのため最近は、食物経口負荷試験を行って食べられる量を確認し、摂取しても症状が出ない「安全な量」を定期的に摂取することで、体を慣らしていく指導をしています(図2)。食べられる量は個人差が大きく、食物経口負荷試験によって確認しなければなりません。食物経口負荷試験は、時に重篤な症状を引き起こすこともありますので、食物アレルギーに精通した医師の立ち会いのもと病院で行います。当科では外来や、リスクの高い方には日帰り入院での検査を行っています。

イラスト
図2 食物経口負荷試験の実際(鶏卵の場合)
食べられる量を確認します。結果に基づいて食事指導を行います

食物アレルギーの方は、自宅での安易な摂取は非常に危険です。専門医に相談してください。

・食物アレルギーは近年増加傾向にあります。

・食物アレルギーの診断は血液検査や皮膚テスト、食物経口負荷試験などで評価します。

・食物アレルギーでは原因食品を除去した「除去食療法」が中心ですが、過度な除去はせず、必要最低限の除去がよいと思われます。

・食物経口負荷試験によって食べられる量を確認し、安全な量を摂取することで体を慣らしていきます。

更新:2024.01.26