加齢黄斑変性という病気を知っていますか?ー抗VEGF療法について
済生会吹田病院
眼科
大阪府吹田市川園町
加齢黄斑変性の症状と治療
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)とは近年、高齢化に伴い急激に増加している疾患で、ものがゆがんで見えたり、視野の真ん中がぼやけたりといった症状が出てきます。網膜(もうまく)の外側から異常な血管ができ、網膜に出血や浮腫(ふしゅ)を起こし急激に視力が低下します。網膜の中心部の視力や、視野を司るとても重要な部分である黄斑といわれる部分に異常が生じ、失明につながる怖い病気です。
現在の主な治療としては抗VEGF療法があります。VEGFというのは血管内皮増殖因子といって、加齢黄斑変性の症状を悪化させる最大の要因となる物質です。抗VEGF薬は当初、大腸がんの治療薬として開発されました。がん細胞に栄養を送る新生血管を作らせないようにする働きがあるためです。これが有効だったので、新生血管が原因で起きる目の病気にも使えると考えられました。
このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、新生血管の増殖や成長を抑制し、網膜の出血や黄斑浮腫を軽減します。黄斑浮腫はVEGFによって発生し、そのまま放置しておくと網膜の神経が傷み、視力低下の後遺症が残ります。
治療は白目の部分から目の中の硝子体(しょうしたい)という場所に注射します。3日前から抗菌薬点眼を行い、注射前に眼内手術に準じた消毒を行います。清潔なシーツを被せ、手術顕微鏡下で硝子体内に注射します。硝子体内に入った薬剤が網膜に浸みこんで効果を発揮します。
治療は数分で終わるため高齢者の方にとって、精神的身体的負担が少なく、比較的安全性が高い治療です。
また最近、この抗VEGF療法の保険適用が拡大され、網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)や近視性脈絡膜新生血管症(きんしせいみゃくらくまくしんせいけっかんしょう)、糖尿病網膜症といった、ほかの眼底出血や黄斑浮腫を引き起こす病気にも用いられるようになり、高い効果が認められています。
もし見え方がおかしいなと思ったら、すぐに眼科を受診することが大切です。抗VEGF療法は基本的に進行の予防なので、かなり進行してしまってからでは手遅れとなってしまう可能性があります。高血圧や糖尿病など生活習慣病がある方は日ごろから目の症状に注意し、網膜疾患が疑われる場合には眼科専門医に早めに相談してください。
更新:2024.10.08