広がるロボット支援手術の適応と可能性

札幌医科大学附属病院

泌尿器科

北海道札幌市中央区

内視鏡手術支援ロボットは外科医が行う手術の低侵襲化(ていしんしゅうか)(体に負担の少ない)を可能とする医療機器です。2012年より泌尿器科領域の前立腺がんに対するロボット支援手術が保険適用となり、以降、消化器外科、婦人科、呼吸器外科など、さまざまな分野で適用が拡大されました。ここでは、ロボット支援手術が患者さんの外科手術にもたらすメリットやその特性に関して紹介します。

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ロボット支援技術の導入と広がり

2018年のがん統計では、国内で約98万人が新たにがんと診断され、日本人の2人に1人は一生のうちにがんと診断されることが報告され、現在でも外科手術は極めて重要な治療法の1つです。一方で、外科手術は患者さんにとって身体的、精神的負担が大きいため、外科手技は「いかに体への負担を少なくするか=低侵襲化」という課題を抱えていました。

ダビンチは米国のIntuitive Surgical社が開発した手術支援ロボットであり、現在、当院に導入されている2台のダビンチXiは最新の第4世代にあたります。この手術支援ロボットの導入は外科手術の低侵襲化を一気に推し進めました。その安全性や操作性の高さから、現在では泌尿器科手術領域に加え、消化器外科、呼吸器外科、婦人科領域と、その適応と重要性は確実に広がり続けています。

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図 当院のロボット支援手術の推移(2016~2020 年)

さらに5Gをはじめとする通信技術革新とともにロボット支援手術を遠隔地医療に用いることで、医療地域格差解消に役立てようとする取り組みも広がりを見せつつあります。

ここではロボット支援手術のメリット・デメリットを、各項目において領域別のロボット支援手術に関して紹介したいと思います。

ロボット支援手術のメリット・デメリット

「写真1」はロボット支援手術の様子です。術者はコンソールと呼ばれる機械を操作し、内視鏡手術支援ロボット(ペイシェントカート、写真2)を動かします。この手術のメリット・デメリットは、以下の点があげられます。

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写真1 ロボット支援手術風景(コンソール側)
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写真2 内視鏡手術支援ロボット(ペイシェントカート)

【メリット】

①傷口が小さい:
内視鏡や鉗子(かんし)を挿入するための穴(ポート)を作成するので5~12mm程度の創(そう)切開を複数用います(切除した腫瘍(しゅよう)などを取り出す際は創部を広げる必要があります)。傷が小さいことは疼痛(とうつう)(痛み)の軽減にもつながります。
②術中出血量が少ない:
手術中は体の中を二酸化炭素により膨らませ、手術操作の視野を確保します。この気体による圧力(気腹圧(きふくあつ))が、出血を抑制するため、出血量が少なくなります。
③拡大視野が得られる:
肉眼で見るよりも拡大して確認することができ、3次元で見えるため細かな操作も可能です。それゆえ正確な患部の切除や機能温存の可能性が高まります。

【デメリット】

触覚がない:
鉗子には触れている感覚がないため、安全な手術操作には手術チームとしての完成度が求められます。

更新:2024.09.23