リウマチ性疾患患者さんへのシームレス診療
浜松医科大学医学部附属病院
免疫・リウマチ内科
静岡県浜松市東区半田山
リウマチ性疾患とは?
リウマチ性疾患とは、関節や筋肉、骨など運動器系の疼痛(とうつう)(痛み)を伴う病気の総称です。関節リウマチが有名ですが、主に全身症状や内臓器障害がある自己免疫疾患なども含まれます。
多くのリウマチ性疾患は、診断・治療の著しい進歩により、寛解(かんかい)(病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態)が望める時代となりました。最近は、検査結果や決められた基準だけでなく、「患者目線」の診療が重視される時代となりました。
診療連携、ライフステージに沿った、つなぎ目のない(シームレス)診療が求められています。
新たな疾患概念、自己炎症性疾患
熱の原因として、感染症、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、リウマチ性疾患などに加えて、自己炎症性疾患という病気が知られています。
自己炎症性疾患にはいくつかの病気があり、病気によって症状が異なります。熱の反復に加え、発疹、頭痛、目の異常、お腹(なか)や胸の痛み、リンパの腫(は)れ、関節の痛みなどの症状があります(図)。次のような兆候がある場合に、疑われます。
- 熱を繰り返し、熱の期間・間隔や症状が毎回似ている
- 抗菌剤の効果がなく、自然に熱や症状が改善する
- 原因となるほかの病気が否定されている
- 幼少時から熱などの症状がある
- 家族や血縁者に同様の症状がある
- けが、疲労、運動、月経、飲酒、日光、ストレスなどがきっかけになる
熱の原因となるほかの病気ではないことを確認し、発熱期間・間隔、熱に伴う症状、家族歴、薬の反応、臨床検査(採血や検尿など、患者さんから採取した検体で行う検査)、遺伝子検査などによって診断します。
遺伝子検査はあくまでも診断の1つの方法で、病気の特徴的な症状があるのに、遺伝子の異常が検出されないこともあります。検査を受ける患者さんは少なく、遺伝子検査の結果を判断するためには高度な専門性が要求されるため、全国の専門機関と協力して診療にあたっています。
遺伝子検査は社会的・倫理的な側面があり、患者さんへの影響も大きいため、遺伝子診療部との連携のもと、遺伝カウンセリングを受けることが可能です。遺伝子検査の結果は他人に漏れないように、個人情報保護法に基づいた厳重な管理を行っています。
病気により治療法が変わるため、正確な診断が重要です。非ステロイド性消炎鎮痛剤、副腎(ふくじん)ステロイドホルモン剤などのほか、体内の炎症を抑え込む生物学的製剤が有効な病気もあります。
日本免疫不全・自己炎症学会を中心とした診療システムが構築され、当院は連携施設となっています。また、県内の診療をスムーズに行えるよう、地域診療ネットワーク構築に向けた取り組みも進めています。
地域診療連携の取り組み
関節リウマチ患者さんを取り巻く状況は改善していますが、どの病院・科にかかったらよいかわからないといった声は、いまだによく聞かれます。
当科は2007年に設立された「静岡リウマチネットワーク」の事務局を置いています。医療機関をネットワーク化すること(地域診療連携)で、医師および医療スタッフの診療レベル向上と、患者さんにとって最高の医療を提供できると考えています。
現在、50施設の医療機関、約500人の一般会員(患者さんおよび家族など)の登録があります。市民公開講座、医療スタッフを対象とした勉強会の開催、会報や登録医療機関の施設情報誌の発行などを行っています。
患者さん目線のリウマチ性疾患診療
近年、リウマチ性疾患は「患者報告アウトカム」という患者さん目線の評価が注目されています。
治療効果や副作用は、検査結果や決められた基準に沿って評価されてきました。しかし、痛みや倦怠感(けんたいかん)などの自覚症状は、医師と患者さんの評価が解離していることがあり、課題でした。患者さん目線の評価を導入することで、より精度の高い評価や、より良い治療選択につながることが期待されます。
また、リウマチ性疾患は幅広いライフステージで発症し、治療も長期にわたります。就学、就労、出産、育児など、心理社会的状況もさまざまで、多様なニーズが存在します。当科では、個々の患者さんの希望に沿った診療を行うために、さまざまな連携や対応を行っています。
- 移行医療/小児科と連携し、慢性疾患を持っている小児の患者さんが、成人後に引き続き診療が必要になる場合に、成人期診療へのスムーズな橋渡しを行う診療
- プレコンセプションケア/将来の妊娠や出産を考慮に入れた、相談や診療
- 医療福祉支援センターとの連携
- ほかの科・職種・医療機関との連携
更新:2023.10.26