体にやさしいロボット支援手術

浜松医科大学医学部附属病院

泌尿器科

静岡県浜松市東区半田山

ロボット支援手術とは?

ロボット支援手術では、外科医が手術支援ロボットを操作して、手術を行います。3次元拡大視野のもと、自由度の高い鉗子(物をつまんだり切ったりする道具)を自在に使用して、非常に精緻な手術を行うことが可能となります。その結果、患者さんの体の負担は小さくなり、早期に社会復帰できるだけではなく、生活に必要な機能を健全に温存することが可能となり、術後も良好なQOL(生活の質)を維持することが期待されます。

現在当院では、泌尿器科、呼吸器外科、消化器外科、産科婦人科領域の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)を中心に、積極的にロボット支援手術に取り組んでいます。

ロボット支援手術の特徴

日本では現在、手術支援ロボットとしては、米国の会社が製造しているダビンチと、国産のhinotoriが使用可能です。当院はダビンチの中で最新型のものを2台とhinotori 1台の計3台保有し、稼働しています。

手術支援ロボットは、大きく分けて3つのパートから構成されます(写真1①~③)。

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写真1 手術支援ロボット ダビンチの構成パート
(提供:Intuitive Surgical Inc.)

①に術者が座り画面を覗き込みながら手もとのハンドル、足もとのペダルを操作すると、②の鉗子やカメラを装置したロボットアーム(この先端は患者さんの体内に位置します)が、連動して作動します。③はカメラから送信された画像を最適化処理し、術者の画面に3次元画像として送信します。

手術支援ロボットの最大の利点は、ハイビジョン立体拡大画像のもと、高自由度の鉗子操作が可能となり、狭い空間でも、微細な解剖学的構造を視認し、精緻な手術を行うことが可能となる点にあります。また、体表面に小さな穴を5か所程度空け、炭酸ガスで体内の空間を拡張して手術を行うため、出血量が少なく、体に大きな負担がかかりません。

ロボット支援手術の当院の現況

当院では、泌尿器科、呼吸器外科、消化器外科、産科婦人科がロボット支援手術に携わっており、2022年5月の時点で、それぞれ809件、173件、147件、140件のロボット支援手術を実施しています。

これらの多くは悪性腫瘍を対象としており、泌尿器科では、前立腺全摘除術(ぜんりつせんぜんてきじょじゅつ)、腎部分切除術(じんぶぶんせつじょじゅつ)、膀胱全摘除術(ぼうこうぜんてきじょじゅつ)、呼吸器外科では肺葉切除術(はいようせつじょじゅつ)、縦隔腫瘍摘除術(じゅうかくしゅようてきじょじゅつ)、消化器外科では胃切除術(いせつじょじゅつ)、食道切除術(しょくどうせつじょじゅつ)、産科婦人科では子宮咳叙述(しきゅうてきじょじゅつ)などが主に行われています。将来的には、心臓血管外科や耳鼻咽喉科などが、ロボット支援手術に参入することも見込まれています。

また、当院では2022年2月より、国産手術支援用ロボットhinotori(写真2)を導入しましたが、その最も優れた特性は、円滑に作動するように制御された8軸アームにより、人の腕のように滑らかに鉗子を操作できる点にあります。泌尿器科領域の前立腺全摘除術、腎部分切除術はすでにhinotoriを使用していますが、導入後4か月間で計43件の手術を施行しており、それらの成績は従来と同等の優れたものでした。

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写真2 国産手術支援ロボット hinotori
(提供:株式会社メディカロイド)

ロボット支援手術の先進的な取り組み

当院の泌尿器科では、腎臓に関連した手術を中心に、先進的な取り組みを行い、国内外から高い評価を得ています。

特に、腫瘍、血管、尿路の位置関係を明確に把握しながら、手術を行うことは非常に重要です。CT所見を3次元立体画像に再構成した画像と術中エコー所見を、術者が見る手術画面にリアルタイムに投影するナビゲーションシステム(写真3)を導入しています。

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写真3 リアルタイムナビゲーションシステム

2021年には本システムを用いて、腫瘍が腎静脈、さらには下大静脈内に進展した腎がんに対する腎摘除術に国内で初めて挑戦し、成功裏に終えています(写真4)。

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写真4 下大静脈腫瘍塞栓を有する腎癌に対するロボット支援手術

更新:2023.10.26