2型糖尿病と上手に付き合っていくために

浜松医科大学医学部附属病院

内分泌・代謝内科

静岡県浜松市東区半田山

糖尿病とは?

食べ物に含まれるブドウ糖は、体内に取り込まれると、エネルギーとして利用されます。そこには、膵臓(すいぞう)から分泌される「インスリン」というホルモンが重要な働きをしています。

糖尿病とは、インスリンの作用が弱くなったことでブドウ糖(血糖)をうまく利用できず、血糖値が必要以上に高くなり、それが長く続いている状態のことをいいます。

糖尿病は主に、インスリンがまったく分泌されない「1型糖尿病」か、インスリンが足りない、あるいは効き目が悪い「2型糖尿病」に分かれますが、約9割は「2型糖尿病」です。

2型糖尿病になるのはなぜ?

2型糖尿病の原因はさまざまで、食生活などの環境因子と、生まれつきの体質の組み合わせで起こると考えられています。特に、インスリンをどのくらい出す力があるかというのは、体質の影響が大きく、人によってそれぞれ違います。

通常、食事によって血液中のブドウ糖が増えると、膵臓からインスリンがたくさん出ることによって、ブドウ糖が細胞の中に送り込まれ、エネルギーとして利用されます。そのため、インスリンをたくさん出せない人がたくさん食べると、血液中のブドウ糖を処理しきれなくなり、血糖値の高い状態が続くようになります。

血糖値が高いままで放置されると、いろいろな細胞が傷つき、糖尿病に特有な「合併症」が起こると考えられています。

糖尿病との付き合い方

糖尿病の治療の目標は「元気で長生きをすること」です。頑張りすぎず、あきらめず、長く上手にお付き合いしていくことが最も大切です。できることから少しずつ継続していきましょう。

糖尿病だからといって、食べてはいけないものはありません。食事は適切な量と内容のバランス、食べ方が重要になります。1日の適切なエネルギー量は年齢と体格、活動量によって決まり、人それぞれです。その範囲の中で、好きなものばかりに偏らず、バランスよく食べましょう。不安であれば、主治医や栄養士に相談してみましょう。

適度に体を動かすことは、糖尿病だけでなく肥満や心臓の病気、がん、認知症のリスクを下げることができるといわれています。筋肉への血流が増えて糖が使われたり、インスリンの効き目が良くなったりすることで、血糖値が下がります。

特別なトレーニングをしなくても、ラジオ体操やできる範囲の散歩などを習慣にするだけで変わってきます。気持ちよく楽しく続けられる運動を、ぜひ見つけてください。しかし、急に激しい運動を始めると、思わぬ体の不調が生じます。最初は軽い運動から、少しずつ強度を上げていきましょう。

糖尿病の薬には、飲み薬や注射薬など、いろいろな種類があります。効果としては、インスリンを増やすものや効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖を尿から出してしまうものなどがあります。

最近では、1週間に1回の飲み薬や注射薬もあります。薬の組み合わせも患者さんによってさまざまで、心臓や腎臓(じんぞう)など体の状態によっては使えない薬もあります。年齢や体の状態によって薬の見直しをすることも大切です。

治療で注意することは?

血糖値は高すぎても低すぎてもよくありません。血糖値が70㎎ /㎗以下となり、低くなりすぎることを「低血糖」といいます。

低血糖の状態は、命に危険が及ぶこともあるため深刻で、できるだけ早く対応をしなければなりません。また低血糖な状態が多いと、心臓の病気や認知症のリスクとなることもわかってきています。血糖値を下げることは重要ですが、積極的な治療を行うと、どうしても低血糖が起こってしまいます。

最近では、血糖値の動きを24時間観察できる持続血糖モニタリング装置(CGM)により、血糖値や変動がスマートフォンで確認できるようになりました(図)。

図
図 持続血糖モニタリング装置について(アボットジャパン合同会社ホームページより)
*間質液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度を測定します。血管を流れる血液中のグルコース濃度が「血糖値」であり、血糖値と間質液中のグルコース値の間には、高い相関関係があることが証明されています

低血糖の起こりやすい時間帯や血糖値の上がりやすい時間帯がグラフで示され一目瞭然ですので、血糖値の動きに合わせた治療を行うことができます。

現在では、患者さんの血糖値を「70~180㎎ /㎗の間にできるだけ入れること」が治療の目標となっています。現在の治療がなかなかうまくいかない場合や、低血糖が気になる場合には、持続血糖モニタリングを検討してもよいでしょう。

更新:2023.10.26