さまざまな種類がある気管支喘息の診断と治療

浜松医科大学医学部附属病院

呼吸器内科

静岡県浜松市東区半田山

気管支喘息とは?

気管支喘息(きかんしぜんそく)とは、空気の通り道である気道(気管や気管支)に慢性的な炎症が起き、少しの刺激に対して気管支が過敏に反応するようになり、気道が狭くなってしまう病気です。長引く咳(せき)や、気道が狭くなりヒューヒュー・ゼーゼーする症状(喘鳴(ぜいめい))、息切れなどを生じ、悪化すると呼吸困難をきたします。

喘息の治療では、咳や息切れなどの症状の改善だけではなく、病気の原因となっている「気道の炎症」を抑えることが重要です。

気管支喘息の症状と病態

気管支喘息の60%程度は、乳幼児期に発症します。多くは思春期の頃にいったんよくなりますが、30%程度は大人になっても続きます。大人になってから喘息を発症することも、しばしばあります。

気管支喘息では、長引く咳、喘鳴、息切れ、胸苦しさなどの症状がみられます。これは、持続する気道炎症によって気道が過敏な状態となり、わずかな刺激に反応して気道が狭まってしまうことにより起こる症状です。

喘息による気道炎症が続いていると、風邪(かぜ)(ウイルス性上気道炎)、アレルゲン暴露(ばくろ)(花粉など、アレルギーの原因物質にさらされること)、天候の変化、運動などの刺激により、咳や喘鳴、息切れが誘発され、さらに悪化すると喘息発作となり、呼吸困難をきたします。症状は、夜間や早朝などに強く現れることが多いです。

喘息には、症状を誘発するアレルゲン(原因物質)が明らかなタイプ(アトピー型)や、はっきりしないタイプ(非アトピー型)など種々のタイプがあり、症状の程度も患者さんによりさまざまです。

喘息の本態(実態)は「気道の慢性炎症」です(図)。気道炎症が続くことにより、気道過敏性が亢進し、気道狭窄をきたして、咳、喘鳴、息切れといった症状が現れます。そのため、喘息の治療では「気道の慢性炎症」を継続的に抑えることが重要になります。

図
図 気管支喘息の病態

気管支喘息の検査・診断

咳や息切れは喘息以外の肺の病気でもみられる症状なので、問診や診察、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素検査、血液検査、胸部X線検査などを行って、総合的に喘息を診断することが必要です。

詳しい症状の経過(どのようなときに症状が出るか、夜間や早朝に症状が強くなるか)、本人や家族のアレルギー疾患(花粉症など)の有無、生活環境の確認などの問診は、喘息の診断にとって極めて重要です。

●呼吸機能検査

大きく息を吸った状態から一気に息を吐くことで、肺の機能を調べる検査です。喘息症状が出ているときは、気道が狭くなっているため、早く吐き出しにくくなります。

呼吸機能検査では、「息の吐き出しにくさ」を、一秒間に吐き出せる量の低下として捉えることができます(閉塞性換気障害(へいそくせいかんきしょうがい)と呼びます)。

喘息の患者さんでも、安定しているとき(非発作時)には気道が狭くなっていないため、呼吸機能検査は正常となります。

●呼気一酸化窒素(NO)検査

吐く息の中の一酸化窒素濃度を測定する検査です。喘息により気道の炎症があると、呼気中のNO濃度が上昇することが知られていて、喘息の補助診断に用いられます。治療により炎症が改善すると呼気NO濃度も低下するので、治療効果の判定にも有用です。

●血液検査

喘息患者さんの半数程度は、ほかのアレルギー疾患(花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎など)を合併することが知られています。血液検査によるアレルギー検査は、喘息の補助診断として用いられます。

気管支喘息の治療

喘息治療の目標は、継続的に治療をして「発作が起こらないようになり、健康な人と変わらない生活を送ることができるようになること」です。

そのためには、吸入ステロイド薬(ICS)を用いて、「気道の慢性炎症」を抑えることが極めて重要です。症状の強さを加味して、ICSにほかの薬剤を併用した治療を行います。

●吸入ステロイド薬(ICS)

ICSは、喘息の気道炎症を抑える働きをする、最も重要な治療薬です。吸入薬にすることで肺だけに作用するため、全身への副作用はほとんどありません。喘息の治療では、症状がよくなった後もICSを止めずに継続して、気道炎症がぶり返さないようにコントロールすることが重要です。

●気管支拡張薬/長時間作用性β2刺激剤(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

LABAやLAMAは、気管支を広げる作用があります。ICSと併用することで、咳や息切れの改善に優れた効力を発揮します。

●ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

喘息治療薬の中で、数少ない内服薬です。アレルギーを抑える作用があるため、アレルギー性鼻炎を合併している喘息患者さんなどに用いられます。

●抗体製剤(抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5受容体抗体、抗IL-4受容体α抗体)

重症の喘息患者さんには、前述の薬剤に加えて、喘息病態にかかわる特異的な経路を抑える抗体製剤(皮下注射)を用います。より専門的な治療法となります。

結核は過去の病気ではありません!

結核(けっかく)は、結核菌が主に肺に感染することによって起きる病気です。肺結核患者の咳(せき)やくしゃみなどの飛沫と一緒に、結核菌が空気中に飛び散り、それを周りの人が吸い込むことによってうつります。これを空気感染といいます。

日本は先進国の中でも結核が多い国で、今も年間2,000人ほどが結核で死亡しています。したがって、「結核なんてもう昔の病気だ」と考えるのは、大きな間違いです。

最近では、高齢者や外国生まれの結核患者が増えています。結核は風邪や肺炎に似た症状で始まりますが、「2週間以上続く痰(たん)のからむ咳、微熱、だるさ」などがみられた場合は、念のため、結核を疑うことが必要とされています。特に、血痰(けったん)や、体重減少、寝汗などがあれば、より強く結核を疑います。ただし、高齢者の結核患者ではこのような症状が出にくいこともあります。

昔は結核で多くの人が亡くなっていましたが、現在、結核にはよく効く薬がありますので、しっかり薬を飲めば治すことができます。結核を早めに診断し、治療するためにも、「2週間以上続く痰のからむ咳、微熱、だるさ」などがあった場合は、胸部X線が撮影できる医療機関の受診をお願いします。

更新:2023.10.26