大腸がんにおけるロボット支援手術
札幌医科大学附属病院
消化器・総合、乳腺・内分泌外科
北海道札幌市中央区

直腸がんに対するロボット支援手術のメリット
大腸は結腸と直腸に分けられます。2018年に結腸がんと直腸がんを合わせた大腸がんと診断された人は約15万人で、すべてのがんの中で一番多く、特に女性では死亡者数が一番多いがんです。
大腸がんの手術には開腹手術と小さな創(そう)で行う腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた手術がありますが、当院では創が小さく痛みが少ないなどのメリットがある腹腔鏡手術を積極的に行ってきました。直腸がんの手術は、骨盤内の狭いスペースで、排尿機能・性機能にかかわる神経を残すための操作が必要となるため、特に難しい手術といわれています。そこで腹腔鏡手術の課題を解決する可能性のあるロボット支援手術を、保険診療となる2018年以前から行ってきました。
現在では直腸がん手術の70%以上でロボット支援手術を行っており(図)、全国で5番目に多い手術数でした(2020年9月19日読売新聞)。

ロボット支援手術では3Dフルハイビジョンの高画質な映像を見ながら、手ぶれのない細かな動きが可能です。これまでの腹腔鏡手術では直線的な機器が使用されていましたが、ロボット支援手術では関節のついた機器を使用することができるため、人間の手のように自由な方向や角度の操作ができます。これらの特徴を生かして、がんの根治(こんち)(*)性が高く、合併症の少ない手術はもちろん、直腸のまわりにある細かな血管や神経を傷つけないようにして機能を温存した手術が可能となり、患者さんに多くのメリットがあります。
*根治:完全に治すこと。治癒
ロボット支援手術を行うための充実した診療体制
当院では3台の手術支援ロボットと、ロボット支援手術専用の手術室を完備して直腸がんを含めたロボット支援手術を行っています(写真1)。5人のスタッフが直腸がんに対するロボット支援手術の術者として認定され、そのうち2人がプロクター(熟練した指導者)として、新たにロボット支援手術を導入する施設への指導をしています(写真2)。また、認定指導施設として全国から多くの医師が研修に来ています。


直腸がんだけでなく、結腸がんに対するロボット支援手術を評価する臨床試験に参加しており、患者さんに最先端の治療を提供する体制を整えています。
札幌医大の使命、遠隔医療に向けた取り組み
地域医療への貢献は当院の重大な使命の1つです。広大な北海道では医師、患者さんの移動が大きな負担となるため、遠隔技術を用いて外科医療を均質化するために取り組んでいます。
手術の指導を遅延なく、リアルタイムで行える技術を企業と共同で開発し、これまでに札幌と紋別、札幌と福岡で実証実験を行いました。
この技術を応用すると道内各地の関連病院で、熟練した医師が近くにいる環境での手術が可能となることが期待されます(写真3)。

更新:2024.09.23