オーダーメイドの肺がん薬物治療
札幌医科大学附属病院
呼吸器・アレルギー内科
北海道札幌市中央区

肺がんとは
肺がんは「小細胞がん」と「非小細胞がん」に大きく分けられます。さらに非小細胞がんは「腺がん」「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」に分かれます(図1)。肺がんの治療法は「手術」「放射線」「薬剤」があります。がんの転移が肺を覆う膜(胸膜(きょうまく))や、胸以外まである場合には「薬剤」による治療がメインとなります。ここでは非小細胞がんの「薬剤」の治療について説明します。

非小細胞肺がんの治療薬
肺がんの治療薬の種類は3つあります(図2)。

1.抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)
がん細胞を直接攻撃する、以前から使用されている薬剤です。基本は2種類の組み合わせで用いられ、多くは点滴薬です。
2.分子標的治療薬
がん発生の原因となった遺伝子変異が存在する場合に用いられます。変異の部分を阻害することで、がん細胞の増殖を効率的に抑えることができます。さまざまな遺伝子変異の種類があり、それぞれに対応する内服薬が用いられます。
3.免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞にはリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みがあります。この仕組みを解除する点滴の治療薬です。治療を受けた人すべてではありませんが、効果があった人の一部で長期間にわたり効果が持続するという特徴をもつ薬剤です。
これらの薬剤を用いて、患者さんに適切な治療を行います。
オーダーメイド治療を決めるのは
分子標的治療薬の適応となる遺伝子変異の有無や、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できるかどうかを、がんの組織を用いて調べます。しっかりと調べるには十分量の組織が必要になります。
肺はカメラで直接観察できない場所に腫瘍(しゅよう)があることも多く、組織採取に工夫が必要です。肺の中はエコーを併用しての気管支カメラ、胸膜にある場合には局所麻酔での胸腔(きょうくう)カメラを用います(写真)。体の表面から超音波を併用して針を用いた組織採取も行います。最適な採取場所、検査法を選ぶことが重要なポイントです。

当科では前記の検査に加えて、瞬間冷凍で大きな組織を採取する検査も適宜併用して、患者さんに確実にオーダーメイドの治療を提供できるように努めています。
持病は治療に影響しますか
肺がんの患者さんは慢性的な肺の持病を持っている方が多いです。特に慢性的に肺が硬くなっていく間質性肺炎(かんしつせいはえん)の患者さんに「抗がん剤」の一部、「分子標的治療薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」を使用すると間質性肺炎が急性に悪化することがあります。
治療が患者さんにとって不利益になることがないよう、しっかりと判断することが重要です。当科では肺がん、間質性肺炎のチームで相談をして治療法を決めています。
肺がんの情報はちまたにあふれています。信頼のおける情報源から情報を得ることが大事です。日本肺癌学会から「患者さんのための肺がんガイドブック2019年版」が出ていますので参照ください。
◆参考URL:日本肺癌学会「患者さんのための肺がんガイドブック」
更新:2024.09.23