発作を繰り返す脳の病気「てんかん」の治療
札幌医科大学附属病院
脳神経外科
北海道札幌市中央区

てんかんとは?
てんかんとは、脳の異常な神経活動によって起こる発作(てんかん発作)を繰り返し起こしてしまう慢性的な脳の障害です。ただし、てんかん発作自体はさまざまな原因で起こりうるため、1回だけのてんかん発作では必ずしもてんかんとは診断されません。発作の症状は、異常な神経活動が起こる脳の部位や、広さによってさまざまですが、患者さんごとにはほぼ一定で、同じ発作が繰り返し起こることが多いです。
どうやって診断するの?
てんかんの診断をするうえで、まず、大事なのは問診です。発作の症状(状況)、部位、持続時間、病歴など、患者さん本人や発作を目撃した周囲の人からの情報がとても重要になります。
また、欠かすことができないのが脳波の検査です。脳波は脳の神経細胞の電気活動を記録する検査ですが、てんかんに特徴的な異常所見を認めることで診断がつきます(図1)。ただし、外来の限られた時間の脳波検査では異常が見つからないことも多いため、診断がつかなければ、入院して数日間ビデオと脳波の記録を行う長時間ビデオ脳波同時記録を行います(図2)。


ほかにも頭部MRI・CTで脳の病変を探したり、PET検査・脳血流シンチなどで代謝や血流の低下部位を見たりなど、種々の検査を組み合わせて診断します。
どうやって治療するの?
てんかんの治療で最も基本となるのが薬による治療です。抗てんかん薬は大脳の過剰な興奮を抑える働きをもっています。抗てんかん薬には多くの種類がありますが、発作のタイプによって効き目が異なるので、発作の症状や、年齢、性別、合併症や薬の飲み合わせ、過去の副作用なども考えながら、患者さんに合った抗てんかん薬を選びます。適切な抗てんかん薬を選択することで、約7割の患者さんは発作を抑えることができます。
薬が効かなければどうするの?
実はおよそ3割の方は、薬が効かない薬剤難治性てんかんです。薬による治療が難しくても、発作のもととなる焦点が明らかであれば、外科手術により焦点を切除することで発作を抑制することができます。先に述べたような検査で発作の焦点が見つからない場合は、手術を行って脳に直接電極を留置(頭蓋内(ずがいない)電極、図3)して脳波を記録することで、より正確に発作の焦点を見つけることができます。

また、焦点が複数あったり、広かったり、大事な機能があったりして、切除が難しい場合は、発作の伝播路を断ち切る離断術や、頸部(けいぶ)の迷走神経に電気刺激装置を埋め込む迷走神経刺激療法を行うことによって、発作を軽くすることができます。
利用できる社会制度は?
てんかんで発作があり、長期にわたり、日常生活または社会生活への制約がある場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となります。病院に初めてかかった日から6か月以上たった日から申請でき、症状の重さによって1級、2級、3級と分けられます。
この制度を活用することで税制上の優遇措置や福祉手当(経過措置)、障害児福祉手当、特別児童扶養手当、特別障害者手当、携帯電話の基本使用料金が半額になるなどのサービスが受けられます。外来通院医療を受けている方は、自立支援医療制度の対象となり、活用することで自己負担を1割にすることができます。
また、てんかん発作がコントロールされず、日常生活、社会生活、経済生活上で困難がある場合、初診後、1年6か月たった日(障害認定日)から、要件を満たしていれば、所得補償として障害年金の受給が可能です。
本疾患の関連病院(紹介を受けてフォローアップ可能な病院)
【札幌市】市立札幌病院、新さっぽろ脳神経外科病院、札幌宮の沢脳神経外科病院、北海道立子ども総合医療・療育センター、北海道脳神経外科記念病院、札幌白石記念病院、西さっぽろ脳神経外科クリニック、札幌美しが丘脳神経外科病院、北海道大野記念病院、マロニエ通クリニック
【千歳市】千歳豊友会病院、千歳脳神経外科
【江別市】江別脳神経外科
【小樽市】小樽セントラルクリニック、脳神経外科おたる港南クリニック
【余市町】脳神経外科よいち汐風クリニック
【岩見沢市】岩見沢脳神経外科
【函館市】函館新都市病院、市立函館病院
【旭川市】旭川脳神経外科循環器内科病院
【室蘭市】市立室蘭総合病院
【苫小牧市】王子総合病院
【釧路市】市立釧路総合病院、釧路孝仁会記念病院
【帯広市】帯広厚生病院
【砂川市】砂川市立病院
【留萌市】留萌セントラルクリニック
更新:2024.09.23