糖尿病 24時間監視の試み

現在、国内の糖尿病患者さんの数は約1,000万人と推定されています。血糖値が高いけれども糖尿病の基準に達していない人（いわゆる糖尿病予備軍）も同じく約1,000万人と推定されています。国内の総人口を約1億2,000万人とすると、約６人に１人が糖尿病の可能性があります。つまり、糖尿病は他人の問題ではなく、私たち自身の身近な問題です。糖尿病を正しく知り、正しく向き合うことはとても大切なことです。

糖尿病は、高血圧症や脂質異常症と並んで「生活習慣病」としての一面があります。食べ過ぎ、運動不足、寝不足、肥満により糖尿病が発症しやすくなります。また、自己免疫により膵臓（すいぞう）でインスリン分泌が低下する１型糖尿病や、糖代謝にかかわる遺伝子異常による糖尿病のほか、妊娠、ステロイドなどの薬剤、がんや肺炎などの他疾患も糖尿病を発症させたり悪化させたりします。

さらに、血縁者に糖尿病の方がいる場合は、ご自身も糖尿病になりやすいことが知られています。糖尿病と診断されたとき、その誘因や原因を正しく知ることは、適切な治療を受けるためにも重要です（図１）。

高血糖の多くは無症状ですが、適切な治療を受けずに放置すると「合併症」が発症します。

急性合併症として高血糖緊急症、慢性合併症として網膜症（目が見えなくなる）、腎症（じんしょう）（体のむくみ、だるさが出たりするなど）、神経障害（両足のしびれ、立ちくらみなど）、心筋梗塞（しんきんこうそく）、脳卒中、閉塞性下肢動脈硬化症（へいそくせいかしどうみゃくこうかしょう）（歩行時の足のだるさや痛み、足の潰瘍（かいよう）や壊疽（えそ）〈皮膚や皮下組織が腐って暗褐色や黒色に変色すること〉）などの心血管病がよく知られています。

早期からの適切な治療により、合併症の発症を予防し、もし合併症が発症してしまった場合は悪化させないように治療を行います。いずれの場合も通院を自己中断せず、適切な治療を継続することが重要です。

血糖値は食事の影響を受けるため、「ある時点」の血糖値だけでは、コントロール状況を知ることは難しいです。採血によるHbA1c（ヘモグロビンエーワンシー）やGA（グリコアルブミン）といった指標は、約１か月の平均の血糖値を反映するため、血糖値のコントロール状況を知るための指標として用いられています。

しかし、HbA1cやGAは、それぞれ貧血や栄養状態の影響を受けることに注意が必要です。また、低血糖が多くてもHbA1cやGAは低下します。低血糖はむしろ糖尿病合併症を発症させたり悪化させたりします。

よって、薬物治療中の糖尿病患者さんでは、HbA1cやGAが低すぎる場合にも注意が必要です。血糖値のコントロール目標は患者さんそれぞれで異なりますので、主治医に相談してください。

最近、皮下持続血糖モニタリング（CGM）という技術が進歩し、皮膚に器具を貼り付けるだけで簡単に、血糖値を推定することが可能となりました。

CGMを有効に活用することで、24時間の血糖値の変動を知ることができ、治療法の選択や効果判定に役立つのみならず、食生活や運動との関連も知ることができることから、血糖値の自己管理にも役立ちます（図２）。最近では、スマートフォンアプリと連動するもの、低血糖のアラーム機能を有するものも利用できるようになりました。

当院では積極的にCGMを活用し、糖尿病患者さんの血糖値コントロールに役立てています。患者さんの治療内容や病態によっては、保険診療内で処方可能な器具に制限がありますが、興味のある方は遠慮なくスタッフにご相談ください。