小耳症の手術治療

札幌医科大学附属病院

形成外科

北海道札幌市中央区

小耳症とは?

小耳症は、生まれつき耳の大きさが小さい疾患です(写真1)。5000~6000人に1人の出生とされる比較的まれなものです。原因は不明で遺伝性もほとんどないとされています。外耳道閉鎖(がいじどうへいさ)や狭窄(きょうさく)を伴った場合、聴力が低下しますが、片側の小耳症の方では日常生活にほとんど影響はなく、また両側の方も補聴器を付ければ就学にも差し支えありません。マスクや眼鏡がかけにくいといった不便がありますが、形成外科では手術で耳を作ることができます。

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写真1:術前の状態。生まれつき耳たぶ分しかない小さい耳

どのような手術を行うのですか?

2回の手術で耳介(じかい)(一般にいう耳のことです)を作ります。いずれの手術も全身麻酔で行い、術後3週間程度の入院が必要です。1回目の手術(肋軟骨移植術(ろくなんこついしょくじゅつ)では、胸から肋軟骨を採取して(図1)、メスや彫刻刀を用いて耳の形を作ります(写真2)。これを皮下に埋め込むと、耳が頭に張り付いたような状態となり、耳の表側が出来上がります(写真3)。もともとある小さな耳は、移動して耳たぶに利用します。

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図1:初回手術では肋軟骨を採取する(赤色の部分)
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写真2:採取した肋軟骨をその場でメスや彫刻刀を用いて細工し、組み合わせて立体的な耳の形を作り、皮下に移植します
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写真3:術後約半年の状態。ここではまだ耳が頭に張り付いた状態です

1回目の手術後6か月以上の間隔を空けて、2回目の手術(耳介挙上術(じかいきょじょうじゅつ))を行います。2回目の手術では、耳の周囲の皮膚を切って、耳の裏側を剥(は)がし、頭に張り付いた状態の耳を持ち上げます。耳の裏側には支えの軟骨と下腹部の皮膚を移植します(図2)。この手術で耳が完成します。

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図2:2回目の手術(耳介挙上術)では立った耳を作るため、耳の後ろに支えの軟骨と2枚の皮膚を移植します

手術は何歳になったらできますか?

小耳症手術は11歳(小学5年生)以降に行います。それより小さい年齢での手術はお勧めできません。それは、肋軟骨がまだ未成熟なため、移植した軟骨が吸収されたり変形したりします。また体が小さいとたくさんの肋軟骨を採取しないといけないため、体の負担も大きくなります(肋軟骨採取した部分が陥凹(かんおう)(*)する場合があります)。

*へこみ、くぼみなど

一方、軟骨は年齢とともにだんだん硬くなってくるので、20歳を超えると肋軟骨を耳の形に細工するのが難しくなってきます。

自然な耳ができるのでしょうか?

正常の耳に比べるとやや厚みや硬さがありますが、一般の方が見ても、ほとんど気づかないような耳が作れます(写真4、5)。マスクや眼鏡の着用はもちろんですが、髪を短くしたりアップにしたりと、おしゃれも楽しめるようになります。

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写真4:耳介挙上術後約1年後の状態
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写真5:形成された耳介は、誰にも気づかれないような形になり、マスクや眼鏡もかけられるようになります

どこの病院で治療しても同じように治せますか?

小耳症手術は高度な技術と経験が必要です。小耳症の治療に力を入れている施設は少ないため、全国から札幌医科大学附属病院に患者さんが受診しています。現在、国内の小耳症患者さんの半数近くの方が当院で治療を受けており、国内で最も多くの治療をしている施設です。

更新:2024.09.23

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