体にやさしい前立腺肥大症手術とは?
札幌医科大学附属病院
泌尿器科
北海道札幌市中央区

前立腺肥大症とは?
前立腺肥大症はよくみられる病気で、年齢を重ねると進行する特徴があります。がんなどとは違い、命にかかわることは少ないものの、尿が出にくい症状や頻尿(ひんにょう)症状が続くことで生活の質が大きく低下します。治療方法は大きく分けて、薬による治療と手術による治療があります。今まで手術は患者さんの体に負担のかかる場合が多かったのですが、最近では機械や道具の発達もあり、体にやさしい手術ができるようになりました。
前立腺肥大症とは、どんな病気?
前立腺肥大症は60歳代男性の約6%、70歳代男性の約12%がかかり、年齢とともに進行する非常によくみられる病気です。
前立腺は膀胱(ぼうこう)の出口部の尿道を取り囲むように存在し、精子を作る働きを持つ臓器ですが、さまざまな原因で年齢とともに大きく肥大していきます(図1)。前立腺が肥大すると尿道が狭くなり、また前立腺が膀胱へ飛び出していくことで、尿が出にくい症状や頻尿症状の原因となります。
図1 通常の前立腺(左)と肥大した前立腺(右)
(写真提供 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)がんなどとは違い命にかかわることは少ないですが、排尿は毎日繰り返し行われる生活の一部ですので、症状が続くことで生活の質が大きく低下することも多いです。最近は健康寿命の重要性が注目されていることもあり、前立腺肥大症を治療して生活の質を高めることは非常に重要なことです。
どのような手術ですか?
前立腺肥大症は薬による治療で症状が良くなることも多いですが、薬が効かない重症の患者さんには手術による治療も選択肢の1つとしてあります。
手術の内容としては、以前は経尿道的前立腺切除術(けいにょうどうてきぜんりつせんせつじょじゅつ)といって内視鏡を使い、電気メスのようなもので前立腺を少しずつ切り取っていく手術が主に行われていましたが、出血量がやや多いこともあり高齢の患者さんや、合併症の多い患者さんにはあまりお勧めできないものでした。しかし最近では、手術機器の発達により体にやさしい手術ができるようになりました。
当院でもグリーンライトレーザーというレーザーで前立腺を蒸散させる手術を行っていますが(図2)、出血がほとんどないため、抗血栓薬(血をサラサラにする薬)を内服したまま手術することも可能です。保険適用の手術ですので高額ではなく、手術時間は1時間半程度で入院期間は5日程度です。

(写真提供 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)
手術の良い点と悪い点は?
尿の勢いが弱い、尿が出にくい、排尿に時間がかかる、お腹(なか)に力を入れないと尿が出ないといった症状は手術後1か月以内に改善します。さらに尿が近い、急に強い尿意を感じる、尿が漏(も)れる、尿が残った感じがするといった症状は手術後数か月で改善します。症状の改善には手術前の時点で膀胱を収縮する力がどの程度残っているかが重要になります(当院では手術前に膀胱収縮力を調べています)。

悪い点としては、可能性は低いですが出血、感染症、膀胱穿孔(せんこう)(*)などで入院期間が1週間程度延びることがあります。退院後の合併症としては、こちらも可能性は低いですが、再出血や症状残存などがあります。また、手術後は射精ができなくなることがあります。
*膀胱穿孔:膀胱の壁に穴があくこと

更新:2024.09.23