札幌医大から発信する新たな全身疾患 IgG4関連疾患とは?
札幌医科大学附属病院
免疫・リウマチ内科
北海道札幌市中央区

IgG4関連疾患とは?
涙腺や唾液腺、膵臓(すいぞう)などに炎症が生じ、かたまりをつくってゆっくりと腫(は)れてくる病気です。がんや感染症と違って、差し迫った命の危機は発生しませんが、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)や、尿の出が悪くなる腎不全(じんふぜん)を引き起こすこともあります。21世紀に入り、血清IgG4が高くなることを特徴とした新たな疾患として確立し、広く認知されるようになりましたが、その過程に札幌医大からの多くの知見が貢献しています。
IgG4関連疾患とはどんな病気ですか?
リンパ球と線維成分の増加を主体としたできものが、涙腺・唾液腺、膵臓・胆管や腎臓、後腹膜(こうふくまく)などの全身に発生する良性の病気です(写真1、2)。免疫グロブリン(*1)の一種であるIgGの中で一番少ないIgG4が増加することが特徴で、免疫異常が基盤にあると考えられますが原因は不明です。涙腺・唾液腺が腫れた場合、昔はシェーグレン症候群と同じ病気とされていましたが、当科からの報告などで、IgG4関連疾患の一部であることが判明しました。


2009年の厚生労働省研究班の全国調査では患者さんの数は約8,000人(男女比2:1、診断時年齢60歳前後)でしたが、もっとたくさんの患者さんがいると推測されます。
*1 免疫グロブリン:たんぱく質の一種で抗体としての働きがある
どんなときにIgG4関連疾患を疑ったらよいですか?
涙腺・唾液腺(特に顎下腺(がっかせん))が腫れることが多く、両方の上まぶたが腫れぼったくなったり、あごの下に硬いかたまりを触れることが見つかるきっかけになります(写真1)。膵臓、腎臓、後腹膜の腫れは黄疸や腎障害、足のむくみから見つかることもある一方、CT検査で偶然見つかることもあります。また、免疫グロブリンが増加するので、高蛋白血症(こうたんぱくけっしょう)や高IgG血症を指摘され、多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)などの血液疾患が除外されてから、診断されることもあります。
どうやって診断しますか?ほうっておいたらどうなりますか?
IgG4関連疾患は指定難病の1つであり、以下の診断基準にしたがって診断されます。
①涙腺・唾液腺や膵臓などの好発(*2)臓器が腫れていること、②血清IgG4が上昇していること(135mg/dL以上)、③腫れているところにIgG4をつくっているリンパ球が集まっていること、④特徴的な線維成分の増加や静脈炎がみられること、とされています。
*2 好発:発生する頻度が高いこと
一番大切なのはがんや感染症ではないことを確認することで、そのためにも組織をとってきて顕微鏡を使って判断する検査(生検)が勧められますが、生検が難しい場合には、代替の基準で診断したりします。
また、全身での変化を評価するために造影CT検査やFDG-PET検査(保険適用外)を行うこともあります(写真2)。腫れた病変が自然に小さくなることがまれにありますが、多くはそのままか、ゆっくりと大きくなります。したがって、診断時点で症状がなくても、3~6か月に1回程度は定期的にチェックを受ける必要があります。
どうやって治療しますか?
IgG4関連疾患により、黄疸や腎機能障害、背部痛(はいぶつう)などの症状、検査異常が生じている場合には治療を開始します。
副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドが最初に使われる薬で、中等量(プレドニゾロン30~40mg/日)から投与を開始し、効果を確認しながら徐々に減量し、10mg/日以下をめざします。3年以上、再発がなければ、副腎皮質ステロイドの中止も考慮します。しかし減量途中で再燃(*3)しかかることが多く、少量投与を続けることになりますので、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)や糖尿病、感染症のモニタリングが重要です。涙腺・唾液腺の腫れのみで症状がない場合、経過をみることもありますが、ドライアイや唾液減少を生じるため、治療を始めるかどうかは担当医とよく相談する必要があります。
*3 病気の進行が軽快または止まっていたものが、再び悪化すること
病因・病態が徐々に明らかにされ、副腎皮質ステロイドに頼らない治療の開発が喫緊の課題で、当科も新しい治療法の開発に積極的に取り組んでいます。
更新:2024.09.23