ダニや蚊が媒介する感染症

感染症・膠原病内科

ダニ媒介感染症とは

山中や草むらには多くのダニが生息しています。その中でもマダニ(写真1)といわれる種は世界中に800種以上知られており、国内には47種が存在します。これらのダニは細菌、ウイルスおよびリケッチアなどの病原体を保有しており、ダニに咬まれることで感染します。これをダニ媒介感染症(ばいかいかんせんしょう)といいます。

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写真1 フタトゲチマダニ(国立感染症研究所HPより引用)

最近話題になったのが、重症熱性血小板減少症候群(じゅうしょうねっせいけっしょうばんげんしょうしょうこうぐん)(SFTS(エスエフティーエス))という感染症を起こす新種のウイルスの発見です。ダニが媒介する感染症は世界中でみられますが、国内で発症するものでは圧倒的につつが虫病や日本紅斑熱(こうはんねつ)が多く、最近SFTS症例も増加しつつあります。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは

国内では2013年に初めて患者が確認され、これまでの報告では229人にのぼり、西日本を中心に発生しています(図1)。感染すると6日~2週間の潜伏期間があり、発熱や胃腸の症状(食欲低下、吐き気、下痢、腹痛など)を起こします。重症になると死亡例もあり、これまでに50人以上の方がこの病気で亡くなっています。

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図1 SFTSの届け出があった地域(国立感染症研究所HPをもとに作図)

治療法は現在、補液など症状に応じた治療しかなく、ウイルスに有効な薬剤やワクチンはまだありません。

蚊媒介感染症とは

病原体を保有する蚊に刺されることで感染する感染症のことです。世界でも多く発生し、特に熱帯・亜熱帯地域に流行しています。

国内で発生、もしくは海外から持ち込まれる可能性の高い感染症として、ウエストナイル熱、ジカウイルス感染症(ジカ熱)、チクングニア熱、デング熱、日本脳炎、マラリアがあります(表)。

表
表 主な蚊媒介感染(東京都感染症情報センターHPより一部改変)

2015年5月以降、中南米を中心にジカ熱が注目されており、2016年にはブラジルでオリンピックが開催されましたが、その際に感染が広がるおそれがあるとマスコミなどでも話題になりました。

ジカ熱はなぜ怖い?

国内にも生息するヒトスジシマカ(写真2)という仲間の蚊に刺されてウイルスに感染します。ジカウイルスに感染しても実は8割の人には症状が出ません(不顕性(ふけんせい)感染といいます)。

写真2
写真2 ヒトスジシマカ(国立感染症研究所HPより引用)

では、なぜジカウイルス感染症が問題になるかというと、妊娠の方が感染すると生まれてくる子どもが小頭症(しょうとうしょう)(小さな頭で生まれたり、生まれた後に頭の成長が止まる病気)などの障害を持つ可能性があることが分かったためです(図2)。

図2
図2 小頭症のイメージ(2016年1月28日BBCの記事をもとに作図)

ダニ・蚊媒介感染症の予防法

大事なのはダニに咬まれたり、蚊に刺されないことです。

マダニはシカやイノシシなどの野生動物が活動するところを中心に、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道などに生息しています。これらの場所では肌の露出の少ない服装をして(図3)、脱いだ上着や作業着を家の中に持ち込むときには注意して、帰ったらシャワーや入浴で体にダニがついていないか確認するとよいでしょう。また、もしダニに咬まれてしまったら、無理やり取らずに医療機関(皮膚科をお勧めします)を受診するようにしてください(ダニの一部が体の中に残ることがあります)。

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図3 ダニから身を守る服装(国立感染症研究所HPをもとに作図)

蚊の場合も同様に蚊がいそうな場所では肌を露出しない、素足でサンダル履きを避けるなどの注意が必要です。

虫よけスプレーや蚊取り線香などの使用も有効です。ダニでは衣服に塗布する忌避剤(きひざい)(虫よけ剤)などもあります。

蚊の発生を減らすために家の中や周囲で、タイヤの溝、空き缶やペットボトル、植木鉢の受け皿など不要な水たまりを減らすことも大切です。

当院での取り組み

私たちはダニ媒介感染症の研究班に所属し、それらの感染症の研究を行っています。

これまでにサイトカインという細胞から分泌される炎症や免疫に関係する物質を測定し、感染症の重症化の機序(仕組み)の研究では中心的機関となっています。また、抗生物質とサイトカインの関係を解明してきており、最適な治療への応用を追求しています。

もし、皆さんが海外から帰国されて発熱した場合や、なかなか下がらない熱が続いているときには、専門的な診断が必要になることがあります。お困りの際にはスペシャリストである当科にぜひお任せください。

更新:2024.07.04