早期から重症の緑内障まで幅広く手術で対応
眼科
緑内障とは
目の中には房水といって、目を栄養する水が流れています(図1)。緑内障ではさまざまな理由で、線維柱帯という房水の排水口の流れが悪くなり、目の中に房水が溜(た)まることで、目の固さ(眼圧)が上がります。それにより眼球の後ろから出ている視神経が徐々に痛んでいき、見える範囲(視野)が狭くなっていきます。一度失われた視力や視野は現在の医学では元に戻すことはできず、視神経がすべて痛んでしまうと失明してしまいます。国内において、失明原因の第1位が緑内障であり、40歳以上の20人に1人の割合で緑内障患者さんがいるとされています。
緑内障の症状
一般的に緑内障では、自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。視神経の障害はゆっくりと起こり、視野も少しずつ狭くなっていくため、目に異常を感じることはありません。
急性の緑内障では、急激に眼圧が上昇し目の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状を起こします。時間が経つほど、視神経の障害が進んでしまうため、このような発作的な症状が出現した場合は直ちに治療を行い、眼圧を下げる必要があります。
緑内障の治療
現在の医学では、より眼圧を下げ、眼圧を低く保つことが視神経の障害を遅らせる唯一の方法として広く認められています。治療法としては、薬物治療、レーザー治療、手術治療の3つに分けられます。一般的には、視機能(見え方)を脅かす合併症の少ない薬物治療やレーザー治療が第1に選択されます。それらの治療によっても、眼圧を低く保つことができない場合には手術治療が選択されます。
薬物治療
眼圧を下げるために使われる薬は、房水の流れをよくする作用の薬や、房水の産生を減らす作用の薬などです。まずは、点眼薬から開始し、最初は1種類の薬で経過をみながら、薬の変更や追加などを行い、2~3種類の点眼薬を併用していくこともあります。また、点眼薬だけでは効果が不十分な場合は内服薬を使用することもあります。
レーザー治療
レーザーを虹彩に照射し穴を開けたり、線維柱帯に照射したりすることで、房水の流出を促進させます。
手術治療
緑内障手術には、さまざまな方法が存在するため、緑内障を専門に診察している医師であっても、施行する手術にはそれぞれ違いが出てきます。今回は、当院にてよく施行される手術について紹介します。
【トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)】
トラベクレクトミーは、国内も含め世界で最も多く行われている緑内障手術であり、優れた眼圧下降効果が得られ、病型や病期によらず施行できるため、第1選択となることが多い手術療法です(図2)。トラベクレクトミーは代表的な濾過手術であり、強膜弁下から前房内へ房水流出路を作成し前房内から眼外へ房水を排出させることで眼圧下降効果が得られる手術です。
バルベルト緑内障インプラント
バルベルト緑内障インプラントは、シリコン製のチューブとプレートからなるデバイスです。房水を眼内からチューブに通して強膜上のプレートに流出させ、プレート周囲の結合組織に房水を吸収させることで眼圧下降を得る手術です(図3)。本手術は、重症の難治な緑内障に施行することが多い手術であり、当院は国内トップクラスの手術件数を誇っています。
【MIGS(iStent)】
近年、眼圧下降効果は弱めでも低侵襲で合併症の少ない安全性の高い緑内障手術が考案され、それらを総称して極低侵襲緑内障手術(minimally invasive glaucoma surgery : MIGS)と呼ばれています。
その中で、最近国内でも承認されたiStent(アイステント)を、当院でもいち早く導入しました。iStentは、長さ360μmで医療用チタンという材質の緑内障治療用の非常に小さなインプラントです(図4)。線維柱帯にiStentを埋め込むことで、房水の流れを改善し、眼圧を下げる手術です。早期から中期の緑内障の方が白内障を併発した場合に、白内障手術と本手術を同時に施行します。
緑内障から目を守るために
緑内障は、自覚症状に乏しいため、自覚して受診したときには緑内障が進行してしまっているということも多々あります。そのため、最も重要なことは、早期発見・早期治療となります。できるだけ早く治療を開始し、進行を食い止めなければなりません。自分自身で目を守るという自覚を持ち、早期発見の機会となる健康診断などでの定期健診を少なくとも年1回程度は受けることをお勧めします。
更新:2024.10.07