頭頸部がん治療の最前線 ─ ロボット手術・皮弁再建手術・ひかり免疫療法から最新の抗腫瘍薬まで最先端の治療を提供します ─ 

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

― 「治す」ことと「機能を守る」ことの両立を目指して ―

頭頸部(とうけいぶ)とは、顔面から首までの範囲を指し、耳、鼻、口、のど(咽頭・喉頭)、甲状腺などが含まれます。この領域には、呼吸、食事(咀嚼・嚥下)、発声といった人間が生きる上で不可欠な機能が集中しています。

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図 頭頸部癌学会HPより

頭頸部がんの治療には、手術だけでなく、放射線治療や薬物療法を含めた多角的な視点が不可欠です。
福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、頭頸部がん専門医、腫瘍内科医、放射線治療医、歯科口腔外科医、緩和ケアチーム、リハビリテーション専門スタッフなどが参加する「キャンサーボード(多職種症例検討会議)」を軸として、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を提案しています。
がんの確実な制御を目指すとともに、治療後の生活の質(QOL)を最大限に保つ専門的医療を提供します。

表 2021年から2025年の治療患者数
部位 症例数
口腔がん 179
咽頭がん 148
喉頭がん 37
鼻‧副鼻腔がん 21
甲状腺がん 238
唾液腺がん 21
その他頭頸部がん 18
662

1.低侵襲で機能を守る手術治療

当科では、根治性を確保しながら体への負担を抑え、機能温存と整容性を重視した低侵襲手術を行っています。

鏡視下手術・ロボット支援手術
内視鏡や手術支援ロボットを用いることで正常組織への侵襲を最小限に抑え、出血や疼痛の軽減、早期社会復帰を目指します。
当院では保険診療によるロボット支援下頭頸部手術に対応しています。
甲状腺悪性腫瘍に対する内視鏡手術(VANS)
年間約120例の甲状腺手術を行い、首に目立つ傷を残さない内視鏡補助下甲状腺手術を提供しています。
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2.再建手術による機能回復

進行がんなどで広範囲の切除が必要な場合には、形成外科などと協力し、高度な再建手術を実施します 。

遊離組織移植(マイクロサージャリー)
前腕・大腿・腹直筋・空腸などの組織を移植し血管吻合で再建します。
目的
嚥下・発声機能の回復、顔貌の維持など、生活機能と整容の両立を目指します。
写真写真
図 右中咽頭癌を切除し太ももの皮膚と筋肉を移植して再建した術後写真

3.最新の薬物療法(免疫療法・分子標的治療)

再発・転移頭頸部がんに対する治療は大きく進歩しています。
当科では、

  • 免疫チェックポイント阻害薬
  • 分子標的治療薬
  • ホルモン療薬

など各種最新の薬剤を用いた専門的前進治療を提供しています。
これにより、従来は治療が困難であった症例でも、治療成績の向上が期待されています。

4.ひかり免疫療法(頭頸部アルミノックス治療)

全く新しい治療法である「ひかり免疫療法」を実施しています。

仕組み:
がん細胞に集まる薬剤を投与した後に特定の光を照射し、がん細胞のみを選択的に破壊します 。
特徴:
周囲の正常組織への影響を抑えつつ、体への負担を軽減できる治療法として注目されています 。適応を慎重に判断しながら診療を行っています 。
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図 光を照射するディフューザー
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図 腫瘍に照射しているところ

甲状腺・唾液腺など専門領域への対応

当科では頭頸部がんの治療に加え、甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍(耳下腺・顎下腺)、各種頸部腫瘍に対する専門的診療を行っています。

甲状腺外科

当科には頭頸部がん専門医に加え、内分泌外科専門医も常勤しています。

甲状腺手術では、整容性に配慮した内視鏡補助下甲状腺手術(VANS)から、縦隔進展例や周囲臓器浸潤を伴う進行症例に対する開胸操作を含む高度外科治療まで、病態に応じた幅広い手術に対応しています。

また、外科治療に加えて、分子標的治療(抗がん剤)や放射性ヨード治療の管理を含め内科的治療にも対応しています。当院の甲状腺内科と密に連携し、バセドウ病などホルモン疾患を含めた総合的診療体制を構築しています。

唾液腺腫瘍

唾液腺腫瘍は組織型が多彩で、診断・治療方針の決定には高度な専門性が求められます。
当科は唾液腺腫瘍に関する臨床研究および学術報告を継続して行っており、
その知見に基づいた精度の高い治療を実践しています。

良性腫瘍から高悪性度癌まで、
顔面神経機能の温存と腫瘍制御の両立を重視した治療を行っています。顔面神経切除や側頭骨合併切除を伴う高度進行例に対しては、形成外科と連携し、機能および整容の回復を目的とした再建術を行っています。

チーム医療による総合サポート

頭頸部腫瘍の治療では、手術・放射線治療・薬物療法・リハビリテーションを組み合わせた集学的治療体制が不可欠です。

当院では
放射線治療医/腫瘍内科医/形成外科医/腹部外科医/歯科口腔外科医/緩和医療医/精神科医
に加え、
看護師/薬剤師/言語聴覚士/理学療法士/栄養士
など多職種が密に連携し、治療前から社会復帰までを支えるトータルケアを提供しています。

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受診・ご紹介を検討されている方へ

以下の症状が続く場合は、早めの受診をお勧めします。

  • のどの違和感
  • 声のかすれ
  • 首のしこりや腫れ

早期発見により、切除範囲を小さくし機能障害を最小限に抑えることが可能になります。
紹介状がない場合でも受診できますが、できる限りかかりつけ医の紹介を受けてください。詳細は外来案内をご確認ください。

更新:2026.05.15