血管に対する新しい治療ー下肢閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療

心臓血管外科

下肢閉塞性動脈硬化症とは

健康な血管は弾力があり、ゴムのようにしなやかですが、歳をとるとともに肌などのように血管も老化し、硬くもろい状態に変化していきます。さらに加齢以外に、血液中に増加した悪玉コレステロールが関与して動脈硬化に拍車をかけます。この結果、下肢(かし)の動脈の狭窄(きょうさく)(狭くなること)または閉塞(へいそく)(詰まること)が起こることがあります(図1)。このため、下肢に血液の流れが低下することで生じる病気を下肢閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)といいます。

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図1 動脈硬化の推移

最新の治療――末梢血管用ステントグラフト

これまで下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療は、外科手術でのバイパス術(人工血管や自己大伏在静脈(じこだいふくざいじょうみゃく)を使用)、血管内治療(カテーテル治療)などがありました。血管内治療は、患者さんへの体の負担が少ないという利点がありますが、再狭窄や閉塞する場合が多く、長期の動脈開存性は期待できませんでした。

海外で10年以上前から承認されている、ゴア社バイアバーン®ステントグラフトという血管内治療のステントグラフトが、2016年、ようやく国内でも薬事承認を受け、2017年夏より使用できることになりました(図2、3)。

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図2 狭窄した浅大腿動脈内のステント内挿術
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図3 狭窄した浅大腿動脈内断面

このステントグラフトは、国内の前向き多施設IDE(治験用医療機器適用免除)臨床試験で、浅大腿動脈(せんだいたいどうみゃく)(*1)の長く複雑な病変の治療で優れた成績を示し、12か月時点で88%の開存率を達成しました。同デバイスは、ePTFE(*2)製ライナーで構成され、その内側表面に抗血栓性のヘパリンを結合しているので長期間の開存性が期待できます。多様なサイズがあり、柔軟性にも優れ、より複雑な末梢動脈病変に対応できます。

*1 浅大腿動脈:大腿部のつけ根~膝までの大腿動脈
*2 ePTFE:expanded PTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)

更新:2024.10.08