最新の統合型PET/MRI装置による生体分子イメージング

高エネルギー医学研究センター

~統合型PET/MRI装置とは~

2015年9月にGE社製としては国内第1号機の統合型PET/MRI装置 『SIGNA PET/MR』(写真1)が福井大学高エネルギー医学研究センターに導入されました。PETとは陽電子(ポジトロン)放出核種で標識した各種薬剤を投与し画像化するもので、生体内の代謝・血流・DNA合成・受容体密度・変性タンパク・酸化ストレスなど様々な機能を評価できます。一方、MRIとは強い磁場の中でラジオ波を照射し生体を構成する水の水素原子を画像化するもので、全身の詳細な形態情報のほか近年では血流・代謝物などの情報も評価出来ます。統合型PET/MRI装置では、これらPETとMRIを同時にかつ位置ずれなく得ることができることから今後さまざまな分野での臨床応用が期待されています。

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写真1 SIGNA PET/MR

~福井大学のPET薬剤ライブラリ~

当センターでは25年以上前から各種PET薬剤を用いた臨床PET研究を行ってきました。現在使用しているPET薬剤のリストを「表」に示します。保険適応のある18F-FDGのほか、研究用として様々なPET薬剤が使用可能で、かつ最新の統合型PET/MRI装置でこれ程多彩な薬剤を使用できる施設は世界的にも限られます。

PET薬剤 目的・ターゲット
18F-FDG ブドウ糖代謝(がん、脳機能)
18F-FES エストロゲン受容体(乳がん)
18F-FLT DNA合成(がん、白血病)
18F-NaF 骨代謝(骨転移・腫瘍)
18F-MK6240 脳内タウ(認知症)
11C-PiB 脳内アミロイド(認知症)
11C-K2 AMPA受容体(てんかん)
11C-Acetate 酢酸・酸素代謝(虚血性心疾患)
11C-PK11195 末梢生Bz受容体(神経炎症)
15O-H2O, gas 脳血流、酸素代謝、血液量
13N-NH3 心筋血流(神経炎症)
64Cu-ATSM 酸化ストレス(がん、神経疾患)

表 当センターのPET薬剤ライブラリ

PET/MRI画像の実例

18F-FDG(図2):

18F-FDGはブドウ糖代謝を見るPET薬剤で、がん・認知症・心疾患などに広く用いられています。18F-FDGを用いたPET/MRI検査はすでに保険で認められており、2017年3月現在の保険適応は以下のとおりです。悪性腫瘍の病期診断および転移・再発の診断(脳、頭頸部、縦隔、胸膜、乳腺、直腸、泌尿器(前立腺を含む)、卵巣、子宮、骨軟部組織、造血器、悪性黒色腫)。
当センターでは、各臨床科と共同で保険適応以外の疾患に対しても積極的に18F-FDG PET/MRI検査を行っています。

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図2 18F-FDG PET/MRI

18F-FLT(図3):

18F-FLTはDNA合成能を見るPET薬剤で、がんの増殖や骨髄の造血能を評価します。18F-FLTを用いたPET/MRI検査は、現在、血液内科と共同で骨髄不全症候群や白血病、骨髄移植の評価等に対して行っています。

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図3 18F-FLT PET/MRI

11C-PIBと脳MRI(図4):

11C-PIBは認知症のなかで最多を占めるアルツハイマー病の原因物質である変性アミロイドβを画像化するPET薬剤です。PETでアミロイドβの沈着を評価する一方、18F-MK6240でタウ蛋白の変性も画像化し、アルツハイマー病の確定診断を行うことができます(図4)。また、同時に撮影する脳MRIでは形態・脳血流・神経線維走行などを含む各種の脳画像が得られます。

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図4 11C-PiBアミロイド画像:健常者(左)には大脳皮質への集積はないが、アルツハイマー病(右)では高い集積がある

更新:2024.01.25