胆管・胆道・膵臓の主な病気と安心安全な最新治療
消化器内科 消化器外科
大きな総胆管結石に対する内視鏡治療
肝臓でつくられた胆汁が十二指腸まで流れる経路が胆管です。この胆管の中に結石ができると、乳頭という十二指腸の出口で詰まるために、胆汁の流出が悪くなり、痛みや発熱といった症状が出ます。これが総胆管結石による胆管炎です。
一般的な治療は、内視鏡を用いて、乳頭を電気メスで切り開いて結石を取り出します。通常、ほとんどの総胆管結石はこの治療で結石を取り出すことが可能です。一方で2cmを超えるような巨大な結石が胆管内にできることもあり、このような場合は通常の内視鏡治療は難しくなります。当院では巨大な総胆管結石に対しては、胆管の中に細い内視鏡を挿入して治療を行います。内視鏡で直接胆管内の結石を確認し、引き続いて細い金属性のプローブを結石に当てて、電気水圧衝撃波で破砕します(写真1)。大きな結石も小さく砕くことにより、胆管から掻き出すことができ、内視鏡のみでの治療が可能です。
胆管や胆道の手術について
胆石胆嚢炎(たんせきたんのうえん)については、患者さんが痛みに苦しむ時間を短くし、できるだけ早く普段の生活に戻れるよう、積極的に早期腹腔鏡下(ふくくうきょうか)胆嚢摘出術を行っています。
胆管がん・胆嚢がんは、手術で取り切れるかどうかの診断がきわめて重要です。当院では最新のCT機器を使用して病変範囲を確認した上で、内視鏡的に胆管から組織の採取を行い、また胆管内に超音波のプローブを挿入して胆管の断面像を観察して、がんの広がりについて精密な診断を行い、切除可能かどうかを判断しています。切除できる病気については膵頭(すいとう)十二指腸切除や肝葉切除と膵頭十二指腸切除の手術を同時に行うなどの手術を積極的に行っており、全国の主要施設と比較しても良好な治療成績をあげています。また、原則として執刀医が継続して外来診療を担当するので、患者さんから「顔が見える安心感」という評価もいただいており、補助化学療法、再発時の治療が途切ることなく実施できる体制となっています。
膵臓腫瘍の診断
近年、膵がんを含めた膵臓腫瘍(しゅよう)の患者さんが増加しています。膵臓腫瘍では、手術や抗がん剤治療などの治療方針決定のため、正確な診断が必要です。消化器内科では2009年より超音波内視鏡下吸引穿刺法(せんしほう)(EUS-FNA)を導入し、膵疾患の診断と治療を行っています。超音波内視鏡はカメラの先端に超音波端子がついており、胃や十二指腸から膵臓をエコー画像で確認できます(写真2、左)。EUS-FNAとは、この超音波内視鏡を使って、エコー画像を見ながら膵臓の腫瘍を細い針で穿刺して組織を採取する検査です(写真2、右)。検査は静脈麻酔で眠った状態で行い、30分程度で終了し、2泊3日の入院となります。当院では膵臓以外にも胃粘膜下腫瘍、腹部腫瘤(しゅりゅう)やリンパ節など、さまざまな部位や病変も含め、EUS-FNAの経験が多数あり、その診断率は95%を超えています。
膵がんの外科治療について
現在でも、膵がんは治療が難しい疾患の1つです。理由として、症状が出にくく早期発見が難しいため、診断時にはすでに他臓器へ転移(遠隔転移)していることがあげられます。また、遠隔転移がなくても膵臓には主要な血管や神経に接しているという解剖学的特徴があり、がんが背中側に広がりやすいこともあげられます。膵臓腫瘍(主にがん)の最も有効な治療は完全な切除です。膵がんにも最近は有効な抗がん剤が開発されており、治療の幅が広がってきています。
消化器外科では、それぞれの利点を最大限に引き出すために、これまで行われてきた切除後の化学療法だけではなく、症例に応じて術前にも化学療法(+放射線療法)を追加し、より確実に膵がんを切除し、予後の向上が得られています。例えば、局所の進行症例では手術前に長期間の化学療法を行い、腫瘍を十分小さくしてから切除を行うようにしています。この方法により、以前なら切除困難であった症例において、血管や神経を温存しつつ、膵がんを確実に切除できることも可能となってきました。「写真3」は、切除不能膵がんに対して化学療法を行った症例です。CT検査での変化を示しています。今後さらに化学療法を継続し、PET検査やMRI検査で再評価し切除可能か判断します。
膵臓の手術では、腫瘍を確実に切除するだけでなく、術後の合併症をいかに少なくするかも大切になります。術後の経過が良くないと、入院期間が長くなるだけでなく、術後化学療法の開始も遅れ、がんの治療成績全体にも悪影響を与えます。安全で確実な膵臓の手術を受けていただくために、消化器外科専門医だけではなく、血管外科、放射線科、消化器内科、腫瘍内科、看護師、薬剤師などが常に協力し合い、万が一のときにも迅速で適切に対応できるよう、万全の体制で臨んでいます。
遠隔転移をきたしている膵がんの治療について
膵がんの7割程度の患者さんは、診断時すでにがんが遠隔転移し、切除できない状態となっています。このような場合、治療の中心は化学療法となります。経口剤から複数の注射剤を組み合わせた治療まで、個々の患者さんの体力や病状に合わせて治療を行います。当院では、化学療法の治療効果を最大限に引き出すために、黄疸(おうだん)や消化管の通過障害がある患者さんに対して、内視鏡的ステント留置術またはバイパス手術を行っています。それと同時に、緩和治療や栄養管理の専門チームが常にサポートしており、安心して化学療法を受けることができます。膵がんは、ほかのがんと比べ、まだまだ治療成績は不十分ですが、さまざまな治療法を組み合わせることで、安心・安全に治療が受けられるよう日々努力しています。
更新:2024.10.08