先天性代謝異常症の診断の拠点施設
小児科
先天代謝異常症とは
体の中では、食べ物から得た栄養素を輸送体によって細胞内に取り込み、酵素によって体のエネルギーなどとして利用したり、不要となったものを分解したりする代謝が行われています。この代謝の働きが生まれつき不十分である病気が「先天性代謝異常症」です。
原因となる酵素や輸送体の種類により症状はさまざまですが、発達の遅れなど重い神経障害を生じたり、突然死の原因になったりします。治療が難しい病気が多い一方、早く診断して治療を開始すれば症状の出現や進行を防げる病気もあるので、症状が出現、増悪する前にいかに迅速かつ正確な診断を行うかがカギとなります。
新生児マススクリーニングによる早期診断
先天性代謝異常症や一部の内分泌の病気については、早期診断につながるよう、ほぼすべての赤ちゃんが新生児マススクリーニングを受けています。生まれて数日後の赤ちゃんの足の裏から採血し、血液をろ紙にしみ込ませて検査施設に郵送し、検査を行っています(図)。異常が見つかれば、さらに再検査や精密検査によって診断していきます。国内では1977年に新生児マススクリーニングが開始されました。当初は3つの病気しか検査ができませんでしたが、2014年からは、タンデムマス法という方法を用いることで、蛋白質や脂肪の代謝異常症が新しく検査できるようになっています。
精密検査の拠点施設
当科は、このタンデムマス法を用いた新生児マススクリーニングを、研究として全国に先駆けて開始しました。異常が発見された赤ちゃんは、必要な薬や食事療法などを続けることによって、元気に成長しています。全国でタンデムマス法が実施されるようになった現在、当科では、全国各地のマススクリーニングで異常と判定された患者さんの診断を確定するための精密検査を行っています。また、新生児マススクリーニングで検査できない先天代謝異常症についても、症状などから疑われた患者さんの検査を行っており、これまでに多数の診断実績があります。
更新:2024.01.26