婦人科領域におけるロボット支援手術
札幌医科大学附属病院
婦人科
北海道札幌市中央区

なぜ、ロボット支援手術なのか
これまで行っていた腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)では2次元の画面を見ながら立体的な動きをする必要があり、安全な手術をするためにはたくさんのトレーニングが必要でした。しかし、ロボット支援手術では3次元高解像度カメラを用いるため、自然な奥行きを持った鮮明な3D画像で手術を行うことができ、精度が高まります(写真1)。

また、多関節機能付きインストゥルメント(7つの関節を持ち、繊細で複合的かつ直感的に動かすことが可能な鉗子(かんし))を用いることで、手指を自由に動かすような操作ができます。さらにコンピューター制御下に手ぶれ補正と動作比率調整(動かした手の幅を縮小して伝えるもので、例えば「3 = 1」に設定すると、手を3cm動かしたとき鉗子は1cmのみ動くしくみ)が備えられており、より精度の高い手術の提供が可能になりました。
子宮がんに対するロボット支援手術
子宮がんは大きく分けて子宮頸(しきゅうけい)がんと子宮体がんに分けられます。そのうち子宮体がんに対するロボット支援手術が2018年に保険適用となり、子宮体がんに対する低侵襲(ていしんしゅう)(*)手術(しゅじゅつ)はロボット支援手術あるいは腹腔鏡手術のどちらかを選択することになります。
当科では現在6人の医師が術者としての資格をもっています。また、その中で日本ロボット外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本婦人科腫瘍学会の3つの専門医資格を同時取得している医師が2人おり、個々の患者さんの状況に合わせて最善の手術方法を選択するよう努めています。
2018年からロボット支援手術を開始しましたが、2021年1月に手術件数が100件に到達し、北海道内では最もロボット支援手術件数が多い施設になります。現在では良性疾患も含めると週に2~3件のロボット支援手術を行っています。
また子宮体がんに対する手術は2018年以降、腹腔鏡手術からロボット支援手術にシフトしています(図)。2021年には子宮体がんの手術が90件ありましたが、そのうち44件はロボット支援手術であり、約半数を占めています。がんの患者さんに対する手術は、確実にがんを取り除く技術が必要になってきますが、ロボット支援手術のメリットを最大限に生かすことで、それが可能となります。
*低侵襲:体に負担の少ない

子宮体がんに対するロボット支援手術では、お腹(なか)に5か所の小さな穴をあけます。「写真2」は手術直後の写真ですが、数か月もすれば、どこに創(そう)があるのかわからないくらいに綺麗に治ります。ロボット支援手術ではロボットによる繊細な動きで創に負担がかからないため、腹腔鏡手術に比べると創はより綺麗に治り、術後の痛みも少ないといわれています。女性の患者さんにとっては美容の面からもロボット支援手術はお勧めできる手術になります。

北海道で唯一の見学施設
ロボット支援手術をするためには資格が必要です。資格を取得するためには認定を受けている見学施設での手術見学が必要です。当科は2021年5月に全国で11番目となる見学施設に認定されました(写真3)。認定を受けるためには手術件数が多いだけではなく、資格を取得させるための高い手術技術が求められます。

更新:2024.09.23