患者さんの個性に寄り添った慢性腎臓病の診療
札幌医科大学附属病院
循環器・腎臓・代謝内分泌内科
北海道札幌市中央区

慢性腎臓病とは?
慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧などが原因の腎臓病や、糸球体腎炎など腎臓そのものの病気を原因としたすべての腎臓病を指し、最終的に末期腎不全に至り、腎移植や透析療法が必要になります。
慢性腎臓病とはどんな病気?
腎臓は体内の水分量やミネラルの調整、不要な老廃物の排泄など、非常に重要な役割をもっています。慢性腎臓病(chronic kidneydisease(クドニック キドニーディジーズ)=CKD)は慢性に経過するすべての腎臓病を指し、最終的に末期腎不全に至ります。国内ではCKDの患者さんが20歳以上の成人の8人に1人いると考えられ、新たな国民病といわれています。早期発見には血液検査に加えて尿検査を行うことが重要です。
原因は糖尿病、高血圧、慢性腎炎などさまざまであり、病気にあわせてエビデンス(臨床研究の結果に基づいたこの治療法がよいといえる証拠)に基づいた治療を行います。必要がある場合には腎生検(腎臓に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で確認する)で原因を明らかにし、特殊な治療を行うことで腎疾患の進行を食い止めます。私たちは針の方向を安定させるためのガイドニードルを用いた安全な腎生検に取り組んでいます。また、放射線治療科・泌尿器科とともに、ごくまれに発症する合併症にも対応します。
末期腎不全に至ったらどうするの?
腎不全に至ると、肺に水が溜(た)まって呼吸が苦しくなったり、血液中に老廃物が溜まって、だるさや食欲が減退し、吐き気が強くなります。やがて意識障害をきたして生命の危機にさらされます。そのため、他の方からいただいた腎臓を移植したり、腎臓の機能をサポートする血液透析や腹膜透析(腎移植と透析をあわせて腎代替療法(じんだいたいりょうほう)といいます)が必要となります。
腎代替療法(じんだいたいりょうほう)はどれを選んでもよいの?
それぞれに長所と短所があり、さらに補い合うような関係にあるため、生きていく中ですべての治療を受ける患者さんもいます(図1)。

腎代替療法のうち、生活の質と生命予後(*)の点では、一般に腎移植が透析療法より優れていますが、すべての人が腎移植を受けることができるわけではないため、腎移植の選択ができない状況では、血液透析と腹膜透析が選択肢になります。この2つは生命予後に大きな違いはないと考えられていますが、通院回数など生活スタイルに与える影響は大きく異なります。
*予後:今後の病状についての医学的な見通し
個性に寄り添った腎代替療法の選択とは?
共同意思決定(Shared Decision Making(シェアード ディシジョン メイキング):SDM)とは、医療者と患者さんが協働で患者さんにとって最善の治療選択の決定を下すプロセスです(図2)。

(シェアード・ディシジョン・メイキング:共同意思決定)
(「腎臓病SDM 推進協会」https://www.ckdsdm.jp/patient/patient.html より転載)
その際、エビデンスに基づく医学的情報、医療者の経験とともに、患者さんの生活(家族や職業や地域での仕事を含めます)にどのような影響を与えるか、患者さんが希望する生活を続けるためにはどの治療法がよいかを比較し検討していきます。患者さんの希望にあった腎代替療法を選択した場合には、患者さんのQOL(生活の質)や治療成績が向上することが知られています。私たちはSDMの概念を大切にした腎代替療法の提示・提供を重視しています。
更新:2024.09.23