難聴に対する手術治療、「人工内耳」とは?
札幌医科大学附属病院
耳鼻咽喉科
北海道札幌市中央区

難聴とは?
難聴には加齢性難聴、突発性難聴など内耳(ないじ)の障害による感音(かんおん)難聴と、急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)、真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎など中耳の障害による伝音難聴があります。感音難聴の治療のためには補聴器を用いることが一般的ですが、補聴器では十分に改善が望めない高度~重度感音難聴においては、人工内耳を用いることで聴覚の改善が期待できます。
感音難聴の原因と人工内耳の適応は?
耳は外耳(がいじ)、中耳、内耳に分けられ、外耳、中耳の障害では伝音難聴となり、内耳の障害では感音難聴となります(図1)。感音難聴の原因となる疾患としては、加齢性難聴、遺伝性難聴、騒音性難聴、突発性難聴など、さまざまなものが挙げられます。65歳以上の3分の1の方が、中等度以上の難聴を抱えており、新生児1000人のうち2~3人が先天性難聴とされ、難聴は身体障害のなかで最も多いものとされています。

聴覚はコミュニーケーションを取るうえで非常に重要であることから、難聴は日常生活に大きな影響を及ぼすとともに、認知症の大きな危険因子の1つとも考えられています。難聴により日常生活に問題が生じた方には、まず補聴器を装用してもらいますが、補聴器では十分に聞こえが改善しない場合には人工内耳の適応を検討します。人工内耳の適応には聴力レベルのほか、内耳の形態異常の有無、中耳の炎症の有無もかかわりますので、適応の相談については専門医を受診してください。
人工内耳手術って、どういうことをするの?
人工内耳は音をマイクで拾って電気信号に変換する体外装置と、耳に埋め込まれ、電気信号を受信し、内耳へと信号を送る体内装置で構成されます。
人工内耳の手術は入院のうえ、体内装置の植込みを全身麻酔で行います。耳の後ろを切開し、骨を削ることで内耳までのルートを確保して、電気信号を受信する装置を耳の後ろの皮下に留置し、電気信号を伝える電極を内耳に挿入します(図2)。手術時間は1~2時間程度で、入院期間は約1週間の方が多いです。

更新:2024.09.23