女性の悩みには「子宮内膜症」が隠れているかも!?

札幌医科大学附属病院

婦人科

北海道札幌市中央区

子宮内膜症とは?

子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき場所(子宮の内面)以外で発生・発育する病気です。女性ホルモンの作用で月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が腟から排出されずに溜(た)まったり、周囲の組織と癒着を起こしてさまざまな痛みをもたらしたりします。また、不妊症の原因にもなったり、長い年月を経るとがんになることがあります。

内膜症はどんなところにできやすいですか?

子宮内膜症ができやすい場所として、卵巣、卵管やダグラス窩(か)(子宮と直腸の間のスペース)、仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい)(子宮を後ろから支える靭帯)などがあげられます。卵巣にできた場合は、その色調から「チョコレートのう胞」といいます(図1)。チョコレートのう胞は、まれにがん化することがあるため、定期的に検査を受けましょう。

図1
図1 子宮内膜症が起こりやすい場所

どんな症状がありますか?

代表的な症状として、「痛み」と「不妊」があります。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約90%にみられます。しかも月経の回数を重ねるごとに痛みが強くなっていくのが特徴で、月経のたびに寝込んでしまう人も少なくありません。

そのほか、腰痛や下腹痛、性交痛がみられます。また、妊娠を希望する年代の女性では「不妊」が問題となります。子宮内膜症の30~50%が不妊を合併しているといわれています(図2)。

図2
図2 子宮内膜症による症状

どんな検査をするのですか?

問診を行い、現在の症状や妊娠・出産回数を確認します。その後、内診や腟(ちつ)からの超音波検査を行い、必要に応じてMRI検査を実施します。また、血液検査で「腫瘍マーカー」を測定し子宮内膜症の診断を行います。

治療法を教えてください!

大きく分けて薬による治療と手術による治療があります。症状や年齢、妊娠の希望など総合的に判断して最適な治療法を選択していきます。

痛みに対しては、鎮痛薬を使用して痛みを抑えます。また、必要に応じホルモン量の少ないピルを用いますが、年齢によっては黄体(おうたい)ホルモン剤を使用します。

サイズの大きい卵巣チョコレートのう胞が見つかった場合は、手術を考慮します。現在はお腹(なか)を大きく切る開腹手術ではなく、お腹に小さな穴をあけて行う腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)が主流です。妊娠を望んでいる場合は、のう胞だけを摘出して子宮や卵巣の正常部分を残す手術を選択します。妊娠を望まない場合には、のう胞の摘出に加えて子宮や卵巣・卵管などを摘出することもあります。これらを組み合わせて、ホルモン剤を使用して病変を小さくしてから手術を実施するなど、総合的に治療を行います。

子宮内膜症は、将来的に再発する頻度(ひんど)が高く、まれではあるものの、がん化することもあるため、長期にわたる経過観察が必要です(図3)。

図3
図3 治療への取り組み

更新:2024.09.23