安全性が高い低侵襲なロボット支援下手術
日本医科大学付属病院
消化器外科
東京都文京区千駄木

ロボット支援下手術
最新の体に負担の少ない手術
手術支援ロボット「ダビンチ」または「hinotori™」を使用するロボット支援下手術は、従来の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術をさらに進化させ、患者さんの体の負担(侵襲(しんしゅう))が少なくなるよう開発された、最新の低侵襲手術です。
ロボット支援下手術とは?
ロボット支援下手術(写真1)は、これまでの腹腔鏡手術の弱点を克服し、利点をさらに進化させた手術方法です。腹腔鏡手術と同様に、ビデオカメラで体の中を観察し、鉗子(かんし)と呼ばれる複数の手術器具で手術を行いますが、ロボット支援下手術では、術者が鉗子を直接持つのではなく、患者さんの隣に置かれたコクピット(コンソール)に座って鉗子を操作することで手術を行います(写真2)。術者の手の動きが鉗子の先端に正確に伝わることで、精密な手術が行われます。


ロボット支援下手術とこれまでの腹腔鏡手術の違いとは?
これまでの腹腔鏡手術も、創(きず)は小さく、開腹手術よりも体に負担が少ない状態で手術が行えました。しかしながら、腹腔鏡の鉗子は曲がらず、直線的な動きしかできないため、鉗子が届かない「可動域制限」があることが最大の弱点でした。
手術支援ロボットの鉗子には多数の関節が付き、鉗子の自由度が上がったことにより、体の奥深くにおいても人間の手のような複雑な動きが可能なため、可動域が広がりました。鉗子の先端にはさまざまな種類があり、多様な手術操作を行うことができます。
もう1つの手術支援ロボットの特徴が、「3D視野」(立体視)です。術者が座るコクピット(コンソール)では、右目と左目の両方から視野を得ることが可能であり、3D視野による正確な位置感覚に基づきながら、操作を行うことが可能です。
ロボット支援下手術のメリット
ロボット支援下手術のメリットはたくさんありますが、ここでは3点紹介します。
- ①鮮明な3D画像と拡大視野
- 3Dのフルハイビジョン画像を約10倍に拡大してお腹(なか)の中を見るため、細かな血管や神経がよく見えます。したがって、切除すべきものと、切除すべきではないものの見分けがつきやすくなっています。
- ②可動域の広さ
- 手術支援ロボットの鉗子は、腹腔鏡の鉗子と異なり先端が自由に曲がるため、腹腔鏡手術と比較すると鉗子の可動域が広いです。お腹の中にはさまざまな臓器があるので、切除したい臓器の手前にほかの臓器があると、腹腔鏡では鉗子の操作がしにくいのですが、ロボットの鉗子には関節があるので、容易に手前の臓器を避けて鉗子操作を行うことができます。腹腔鏡の鉗子と比較すると、かなり人間の手に近い動きができます。
- ③手ぶれ防止機能
- これがあるため、たとえ自分の手が震えても鉗子の先には震えが伝わりません。腹腔鏡の鉗子は長いので、どうしても多少の手ぶれが起きるのですが、手術支援ロボットでは手ぶれが生じません。その結果、温存すべき臓器を確実に温存できるため、手術による機能障害が生じる可能性を減らすことができます。また、重要な血管や神経を傷つけないようにしながら、腫瘍から十分な距離(マージン)を確保することができるため、再発率を低下させることができます。
一方、腹腔鏡手術はロボット支援下手術よりも短時間で行うことができるため、長時間の手術に耐えられない患者さんや再発リスク・他臓器損傷リスクが低い患者さんには有用です。当院では腹腔鏡手術とロボット支援下手術のどちらが患者さんにとって有益かをよく検討して、手術方法を選択しています。

当院の特色 消化器外科
当院では、国内で最もよく使われるダビンチと、国内初のロボットであるhinotori™の2機種を使用しています。hinotori™は外国人と比較して体の小さい日本人に合うように、ロボット本体が小さく、ロボットのアームが細いというメリットがあります。
ロボット支援下手術の欠点は、ロボットアームが体外でぶつかり(干渉)、思うように鉗子操作を行えなくなってしまうことですが、hinotori™のロボットアームには8つの関節があり、かつアームが細いので、アーム同士が干渉しにくくなっています。
診療実績
肺、縦隔(胸の中心にある領域)、胃、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、尿管、前立腺、女性器、直腸等の臓器を対象として、主に悪性腫瘍に対してロボット支援下手術を行っています。肺がん・縦隔腫瘍に対するロボット支援下手術では、術後の疼痛(痛み)が軽く、多くの患者さんが高い満足感を得ています。
泌尿器科では、扱うすべての疾患に対してロボット支援下手術が行われています。女性診療科・産科では悪性疾患に加え、子宮筋腫などの良性疾患に対しても、ロボット支援下手術を行っています。直腸がん手術では、術後に一時的な排尿障害がしばしば生じますが、ロボット支援下手術では、排尿障害がほとんど発生しなくなりました。
更新:2025.12.12
