呼吸器外科領域における低侵襲手術

日本医科大学付属病院

呼吸器外科

東京都文京区千駄木

ロボット支援下手術に適応する疾患

肺がんには、肺から発生する原発性肺がんと、多臓器のがん(例えば、大腸がんや乳がんなど)から肺に転移する転移性肺がんがあります。縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)(※1)には、悪性縦隔腫瘍(浸潤性胸腺腫(しんじゅんせいきょうせんしゅ)、胸腺がん、悪性奇形腫(きけいしゅ)、悪性リンパ腫など)と、良性縦隔腫瘍(嚢胞性(のうほうせい)腫瘍、神経原性腫瘍など)があります。また、胸腺腫には、難病指定されている重症筋無力症を合併している場合もあります。これらの疾患が、ロボット支援下手術の適応として保険適用されています。

※1 縦隔腫瘍:胸の中央にある肺と骨に囲まれた領域(縦隔)にできる腫瘍

呼吸器分野のロボット支援下手術

呼吸器分野におけるロボット支援下手術(写真1)は、「創(きず)の小ささ・疼痛(とうつう)(痛み)の軽減・入院期間の短縮・早期の社会復帰」といった低侵襲(ていしんしゅう)(※2)手術です。

※2 低侵襲:体に負担の少ない

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写真1 肺がんのロボット支援下手術

患者さんにとっての大きなメリットは、術後疼痛が軽いことが挙げられます。通常の胸腔鏡(きょうくうきょう)手術では、創は小さくても術後の肋間(ろっかん)神経痛に悩まされることが多々あります。しかし、ロボット支援下手術では、肋間に負荷がかかりにくいため、術後肋間神経痛を訴える患者さんは極めて少ないです。そのため、術後も大変良好な社会生活を送れることが期待できます。

術者のメリットとしては、3次元・拡大視野で手術操作を行うことができます(写真2)。また、手ぶれなどなく大変細かい剥離(はくり)操作を丁寧に精度良く行うことができます。肺切除術では、特に肺動脈、肺静脈といった極めて難しい血管剥離操作を高い安全性のもとで行うことが可能です。特に悪性腫瘍に対する肺切除やリンパ節郭清(※3)の精度について、従来の開胸術に劣ることはありません。

※3 リンパ節郭清:手術の際に、がんを取り除くだけでなく、がんの周辺 にあるリンパ節を切除すること

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写真2 ロボットアームを操作する様子

当科は、積極的に手術支援ロボット・ダビンチによる手術を行っており、非常に術後経過も良好です。2018年より導入し、2023年7月までに160件以上の肺葉切除術・縦隔腫瘍摘出術を実施し、手術の安全性と根治(※4)性に留意した取り組みを行っています。

※4 根治:完全に治すこと。治癒

更新:2025.12.12