肝細胞がんの内科的治療
日本医科大学付属病院
消化器・肝臓内科
東京都文京区千駄木

肝細胞がんとは?
肝臓(かんぞう)がんは、肝臓にできるがんの総称です。このうち、肝臓の主な細胞である肝細胞ががん化したものを「肝細胞(かんさいぼう)がん」と呼びます。肝臓の中を通る胆管(たんかん)ががん化した「肝内胆管がん」(胆道(たんどう)がん)とは治療法が異なることから、区別されています。
肝細胞がんを発症する患者さんの多くは、肝臓に病気を持っています。ウイルス性肝炎、飲酒による肝障害、糖尿病や肥満が引き起こす脂肪肝など、肝臓に病気を持つ患者さんは肝細胞がんの発症に注意が必要です(図1)。

肝細胞がんの症状・診断
肝臓の病気(ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝など)により肝機能が低下すると、黄疸(おうだん)(皮膚や目が黄色くなる)、むくみ、かゆみなどの症状が出ることがあります。肝細胞がんが進行した場合には、腹部にしこりや痛みが現れることがありますが、肝臓は「沈黙の臓器」といわれており、がんを発症しても症状が出にくいことが知られています。
したがって、特に肝臓に病気がある患者さんは、腹部超音波検査(腹部エコー検査)などで定期的な検査を行うことをお勧めします。肝細胞がんの疑いがある場合は、CT検査やMRI検査でさらなる画像検査を行います。血液検査での腫瘍(しゅよう)マーカーの値も参考にします。
肝細胞がんの内科的治療
治療法は、「肝機能」がどのくらい保たれているか、また、肝臓以外の臓器に転移があるか、脈管(血管、胆管)への広がり、がんの個数、大きさなどの「がんの状態」に基づいて決めます。肝細胞がんに対する主な治療法には、肝切除(手術)、ラジオ波焼灼(はしょうしゃく)療法(針を刺してがんを焼き切る)、肝動脈化学塞栓(そくせん)療法(カテーテル(※1)治療)、化学療法(抗がん剤:注射剤や内服薬)があります。
当科では毎月多くの肝細胞がんの患者さんを診療しています(図2)。肝機能・がんの状態をもとに、患者さんと担当医がよく話し合って治療法を選択しています。

※1 カテーテル:医療用の細い管
更新:2025.12.12
