食物アレルギーは食べて治せ

平塚市民病院

小児科

神奈川県平塚市南原

食物アレルギーの現状

食物アレルギーとは、食物によって体の免疫が過敏に反応してしまい、不利益な症状が出現する病気です。食物を摂取した後に、皮膚にかゆみ、赤み、蕁麻疹(じんましん)が出現し、時に咳(せき)や嘔吐(おうと)、下痢症状を認めます。重症になると、意識消失や血圧が低下するアナフィラキシーショックとなり、死亡することもある恐ろしい病気です。テレビや雑誌でも度々取り上げられるようになり、社会の関心が高いトピックスであるということを感じます。また、特に子どもをもつ親の心配の種の1つとなっています。

乳児期に発症することが多く、卵、乳、小麦を筆頭に、あらゆる食物がアレルゲン(アレルギーの原因食物)となる可能性があります。時間経過とともに食物アレルギーが良くなることもありますが、一方で離乳食をどのように与えていけばいいか、ほかの種類の食物アレルギーがあるのではないかと日々不安に過ごしている、と患者さんの家族からよくお話を受けます。また、誤食を恐れて家族全員で卵や乳を一切除去しているという話もまれではありません。つまり、本人のみならず家族全員のQOL(生活の質)が悪化する可能性があります。

食物アレルギーは食べて治せ

2000年に米小児学会で卵や乳などアレルギーがでやすいものは摂取開始時期を遅くさせたほうが食物アレルギーにならないのではないかと提案されていましたが根拠に乏しい宣言であり2008年には予防効果がないことが確実にわかりその宣言を撤回しています。

当時の情報がいまだに巷にひろがっており、アレルギーになりやすい食物は避けるようにする方が良いという嘘が、インターネット上に散見されます。しかし、これらは20年近く前の情報であり、現在ではなるべく早期に摂取開始した方が良いのではないかといわれています。特に、卵、ピーナツに関しては、生後4〜6か月頃から摂取した方が良いという臨床試験の結果が発表されています。

2017年6月には、日本小児アレルギー学会がアトピー性皮膚炎のある子どもは医師の管理のもと生後6か月から鶏卵の微量摂取を推奨しており、もはや積極的に摂取させていくべきであるとアナウンスしています。

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当院でのアレルギー診療

平塚市内の児童では、2004年度に237人であった食物アレルギーの患者数が2016年度には843人となり、年々増加の一途をたどっています。

当院では外来で食物アレルギーの状況を詳しく聴取し、血液検査、皮膚検査を通じて一人ひとりにあわせて総合的に評価を行います。その後、必要に応じて日帰り入院で食物経口負荷試験を行い、確定診断および実際どのような量で症状が出現するかを確認していきます。

食物経口負荷試験とは、食物を複数回に分割し時間をあけて食べていく検査です。検査中は医師、看護師がベッドサイドにつきっきりで対応していますので、万が一症状が出現した場合は、すみやかに対応できるようになっています。

こうして得られた結果から、原因食物の「必要最低限の除去」を行います。少量ずつ食物を摂取することによって、食べられるようにすることを目標としていきます。また当院では、アトピー性皮膚炎、気管支喘息(きかんしぜんそく)、アレルギー性鼻炎など、アレルギー全般の対応をしています。

もし急に食物アレルギーを発症したら

食物アレルギーの症状で一番出やすいのは、皮膚の症状で、赤み、かゆみ、蕁麻疹です。これらの症状が出現したら、まずは速やかに近くの小児科クリニックを受診してください。

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また、呼吸が苦しい、ゼイゼイする、繰り返し嘔吐、下痢があるような場合は、アナフィラキシーの可能性があります。当院にご相談ください。

参考文献
1)よくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014(環境再生保全機構)
2)PETITstudy(Lancet,2016)
3)LEAP study(NEJM,2015)
4)平成29年度平塚市小学校給食における食物アレルギーの対応マニュアルより
5)食物アレルギーガイドライン2016

更新:2024.10.29