チームで適切な栄養管理をサポート 低栄養 

大垣市民病院

栄養サポートチーム(NST) 

岐阜県大垣市南頬町

はじめに

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)とは、患者さんに適切な栄養管理を提供するために、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、歯科衛生士などで構成された、医療チームのことです。病気や手術のため十分な食事が摂れない患者さんの早期回復や合併症予防のためには、適切な栄養管理が大変重要な役割を占めます。NSTは、回復期・慢性期病院において広く展開されてきましたが、当院のような高度急性期病院においても、日常生活動作(ADL)の改善、感染症の予防、ひいては入院期間の短縮につながることが期待されています。当院でのNSTの取り組みとその特徴を紹介します。

NSTの活動沿革

当院では2007年にNST活動が開始され、2008年に日本静脈経腸栄養学会NST稼働施設として認定されています。2010年からは、同学会の「栄養サポートチーム専門療法士」認定教育施設として、NST専門療法士認定研修会を開催し、当院のみならず地域の他の医療機関の参加を受け入れてきました。そして、この研修会によって多くの専門療法士を育てられたことが、NST活動の発展に大きく寄与してきました。

2011年4月からは、栄養サポートチーム加算が算定されるようになったのを機に、回診チームを1から5チームに増やし、回診回数も週1回から毎日回診するようにしました。その後回診件数は年々増加しており、2018年度は年間1,781件で、急性期病院における算定件数としては、岐阜県でトップとなっています(図1)。

グラフ
図1 当院のNST回診件数(年度別)

現在のNSTチームは、医師10人、歯科医師1人、薬剤師8人、看護師25人、管理栄養士6人、言語聴覚師1人、歯科衛生士3人、検査技師9人です。多くの職員が関与することにより、通常業務への影響を少なくすることに加え、栄養管理の重要性を共通に認識するという環境を院内に広く醸成することに役立っています。

NSTの実際

当院では、短期入院患者さんを除く、すべての入院患者さんに対し、栄養管理計画書を多職種にて作成し、適切な栄養管理の実施に取り組んでいます。その中で、低栄養の患者さんや低栄養のリスクがある患者さんを、定期的なスクリーニングの実施によって抽出し、各病棟にて栄養アセスメント(食事調査や身体計測などによる栄養状態の評価)を行い、NSTへ依頼となります。

NSTでは、曜日ごとにチームメンバーが集まり、カンファレンス後に、病棟回診を行います。低栄養や低栄養リスクの原因を病態、栄養管理方法、処方薬、検査データ、口腔(こうくう)環境など多面的に検討して、外科系病棟では、侵襲(しんしゅう)に伴う必要栄養量の増加に合わせた栄養量の確保や消化器症状、創部の早期治癒への対応策などを提案し、内科系病棟では、現疾患の治療を踏まえた食事内容の見直しや栄養補助食品の提案を行います。

近年では、がん患者さんへの介入件数が増加しており、治療の段階や悪液質(衰弱状態)の進行段階に合わせた栄養管理目標を掲げ、病棟と連携しながら、早期介入を積極的に行っています。翌週には、提案した栄養管理方法の評価を行い、内容を見直します。

また適切な栄養管理を実施するために、定期的に勉強会や症例検討会を開催し、介入対象者の病態の理解を深め、栄養管理に関する最新のトピックスや提供する食事内容、栄養補助食品の種類などの情報を共有しています。

摂食嚥下チームの活動

入院患者の高齢化や誤嚥(ごえん)性肺炎患者の増加に伴い、嚥下(えんげ)機能に問題を抱える患者さんが増え、その多くが低栄養、または低栄養のリスク対象となっています。そのため、NSTの下部組織として摂食嚥下チームを立ち上げ、週1回のカンファレンスと回診を行っています。

摂食嚥下チームは、頭頸部(とうけいぶ)・耳鼻いんこう科医師、歯科医師、摂食嚥下障害看護認定看護師、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士で構成され、VE(嚥下内視鏡検査)やVF(嚥下造影検査)による嚥下機能評価を行い、機能に合わせた嚥下訓練方法や栄養管理方法の提案をします。また、病棟看護師と協力して行う摂食機能療法も積極的に実施し、栄養状態の改善を促しています。摂食機能療法の件数も増加しており、NST回診件数と同様に、県内でトップの実績です(図2)。

グラフ
図2 当院の摂食機能療法算定件数(月別)

更新:2022.03.08