まんせいじんふぜん

慢性腎不全

概要

慢性腎不全は、腎臓の機能が低下する状態が数ヵ月以上続き、腎臓のろ過能力が正常時の30%以下となった状態のことをいいます。日本の慢性腎不全の患者さんは、高齢化や糖尿病の増加により年々増加傾向にあり、2019年12月末時点で、透析療法を受けている人は34万人を超えています。

治療

慢性腎不全の治療法には、①透析療法(血液透析、腹膜透析)と②腎移植(献腎移植、生体腎移植)の2つがあります。

日本の慢性腎不全の治療では、圧倒的に血液透析が多く、腎移植は、2019年にようやく年間2000例を超えました。日本では脳死下・心停止下での献腎提供数が欧米に比べて少ないことが、腎移植が増えない原因のひとつとしてあげられます。

①透析療法

透析療法とは、機能低下した腎臓に代わり、人工的に体内に蓄積される尿毒素や水分を除去する方法で、血液透析と腹膜透析の2種類があります。透析療法で体内に蓄積される尿毒素や水分の除去は可能ですが、長期間の透析により、透析アミロイドーシス、腎性骨異栄養症、副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)、動脈硬化といった不可逆的な合併症は避けられません。

②腎移植

腎移植は、腎臓を移植することで腎臓機能を回復させる根治療法です。移植後も少量の免疫抑制剤の継続的な服用は必要ですが、健常者と同様の生活を送ることが可能です。移植した腎臓の働きで、造血・骨代謝に関連した内分泌作用も改善します。

  • 生体腎移植の場合、ドナーと患者の血液型が異なっていても、移植前に血液型に関係する抗体を除去または産生(さんせい)を抑制(よくせい)することで、腎移植が可能になります。
  • 生体腎ドナーは、6親等内の血族、配偶者および3親等内となっています。親子間での生体腎移植以外に、夫婦間での腎移植も増えています。
  • ドナーの健康被害が出ないために、事前の検査を慎重に行い適応を判断します。また、ドナーの手術はできるだけ体に負担がないように開腹手術でなく、小さな穴を数か所開けて行う体腔鏡下手術(たいくうきょうかしゅじゅつ)で行います。
  • 腎移植を行う時期に決まりはありませんが、透析療法開始から早期に移植を行う方が、長期透析合併症を回避することができます。慢性腎不全末期になってしまった時点で、透析療法を経ずに行う腎移植(プリエンプティブ腎移植)も徐々に増えています。
  • 腎臓を移植する患者さんは、移植治療に特有の拒絶反応や術後感染症の注意が必要ですが、現在は免疫抑制剤の進歩によって、治療成績は非常に良くなっています。

更新:2022.08.22