腎代替療法

大阪母子医療センター

腎・代謝科

大阪府和泉市室堂町

当科では腎疾患、糖尿病、骨系統疾患などに対する治療を行っています。ここでは、腎臓の病気、特に腎機能が低下した腎不全という病気について説明します。

腎臓について

腎臓は腰のやや上部に左右1つずつある臓器です。赤ちゃんのときは4㎝程度の大きさですが、中学生ぐらいになると大人と同じ10㎝程度の大きさとなります。

腎臓の働きは、尿を産生し老廃物を体外に捨てることですが、この「いらないものを捨てる」という働きと同時に、「必要なものを捨てない」という働きも腎臓にはあります。つまり、水分をとらないと尿が少なくなるのは必要な水分を体内に留めておく働きがあるからです。「いらないものを捨てる」「必要なものを捨てない」という2つの働きによって、体内の水分や電解質のバランスが保たれています。ほかに腎臓が行っている重要な働きとして、「ビタミンDを活性化し骨を丈夫にする」「赤血球産生を促すホルモンを作り貧血を改善する」「血圧を調節するホルモンを産生する」といったものがあります。

腎不全について

前に述べたような働きが低下している状態を腎機能障害といい、腎機能が急速に低下した状態を急性腎障害(AKI)、慢性的に低下している状態を慢性腎臓病(CKD)といいます。AKIに対しては安静や水分制限、電解質補正、急性期の血液浄化法といった緊急処置を行う場合があります。そのためにはICU(集中治療室)での処置が必要なこともしばしばあります。

CKDの病態は、腎臓に病気はあるが腎臓の働きは正常であるという状態から、腎機能の低下度合に応じて5段階に分かれており、この段階に応じた治療・対応をします。投薬をはじめとする治療をしているにもかかわらず腎臓の働きが徐々に低下し、最も重症の末期腎不全という状態になると、食欲低下や倦怠感などの尿毒症といわれる症状が明らかになってきます。

腎臓のさまざまな働きのうち、内服薬や注射によって治療できるものもありますが、最も大事な働きである「いらないものを捨てる」という働きは薬で治療することができません。そのため、こういった病態に対応するためには、腎代替療法を行う必要があります。

腎代替療法

腎臓の働きを腎臓に代わって行う治療法を、腎代替療法といいます。血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの方法があり、それぞれに利点と欠点があるため、状況に応じた使い分けが必要です。

血液透析(図1)

現在、国内で最も多く行われている腎代替療法です。透析といえばこの方法を思い浮かべる人が多いと思います。手首などの皮下で動脈と静脈をつなぐシャントといわれる手術を行った後、1回数時間、週に3回を目安として、血液透析の器械を用いて老廃物や余分な水分の除去を行います。小児では体内の血液量が少ないこと、血管が細いことなどから、長期にわたる血液透析は困難を伴います。また、通常血液透析は日中に行われるため、学校をはじめとする社会生活が困難になり、小児のCKDの治療としては不利な点が多くあります。

当センターではAKIの治療や腎移植の待機時期に一時的に血液透析を行うことはありますが、CKD治療としての外来での血液透析は行っていません。

イラスト
図1 血液透析

腹膜透析(図2)

腸管などお腹(なか)の臓器を覆っている腹膜を用いて血液を浄化する方法です。通常は水分の入っていない腹腔(ふくくう)というところに透析液を入れ、一定時間後に排出することで老廃物や余分な水分の除去を行います。初めにカテーテルという管(くだ)をお腹に入れる手術を行い、その後の透析はその管を用いて行います。自宅で行うことができ、病院へは原則毎月1回程度の受診です。専用の器械を用いて夜間に行うことにより、社会生活への復帰も容易となります。

一方、自宅で過ごす時間が長いために、腹膜炎などの合併症の予防や早期発見のためには、しっかりとした自宅での管理が必要です。小児には大変適した腎代替療法であり、当科でも多くの方に行っています。1歳未満の乳児においても行うことができます。ただし、長期にわたり行っていると腹膜が徐々に硬くなっていくために長くても8年程度しか続けることができず、血液透析や腎移植に移行する必要があります。

イラスト
図2 腹膜透析

腎移植(図3)

親族の方から腎臓を提供していただく生体腎移植と、亡くなられた方から提供していただく献腎移植があります。当センターでは生体腎移植のみを行っています。献腎移植は事前の移植希望登録が必要ですので、登録を希望される方には、ほかの医療機関を紹介しています。

生体腎移植は血縁者から片方の腎臓をもらい、患者さんのお腹に移植する手術です。当センターでは泌尿器科と腎・代謝科とが協力して行っています。血液透析や腹膜透析が正常の腎臓の2割程度の代替をするのに対して、移植後の腎機能は約6割となります。そのため、小児では移植後に成長や発達の改善が期待できます。腎移植に際してはある程度以上の年齢や体格が必要となりますし、事前の検査を行っていくことが重要です。また、腎臓を提供される方の意思の確認や組織の適合をはじめとした検査も必要となってきます。移植後は免疫抑制剤の内服が必須となりますので、規則的な生活が必要です。免疫抑制剤の進歩により、以前に比べて急性の拒絶反応により移植腎(移植した腎臓)の機能が低下することは少なくなりました。しかし、慢性の拒絶反応によって移植腎の機能は徐々に低下するため、平均して20年後に改めて腎代替療法が必要になる可能性があります。

イラスト
図3 腎移植

腎不全に対する治療方法は日々進歩しています。個々の患者さんに適した腎代替療法の選択をお手伝いし、最新の治療法を提供していきたいと考えています。

更新:2024.10.18